没入学習が、イノベーションを起こせるジェネラリストを育てる 1→10drive 梅田 亮さん、森岡 東洋志さんインタビュー その2

こんにちは。清水葉子です。先日、「イノベーションのためのアート・デザイン教育とその可能性―STEMからSTEAMへ」というタイトルで、私学マネジメント協会が発行している雑誌に記事を書きました。 その過程でどうしても、1→10drive(株式会社 ワン・トゥー・テンドライブ)さんにお話しをお聞きしたい!と思いまして、代表取締役CEOの梅田 亮さん、同社執行役員CTOの森岡東洋志さんにお話をうかがいました。

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イノベーティブかつ専門性を持ったジェネラリストを育てるキーワードは「没入」と「モチベーション」だと、前回のブログに書きましたが、具体的にどのようなことなのかを、続けてうかがいました。

 

「モチベーション=やる気」が差につながる時代が来ている

この10年間で、個人の発信力やコンピュータやテクノロジーを取り囲む環境が、大きく変わり、個人がどんどん力を発揮できるようになっているようです。「昔は影響力を持つものがテレビ、新聞のようなマスメディアしかなかったのが、今はSNSに自分の体験を書けば、100万人、1000万人の人が見てくれる可能性がある。これがあらゆることに影響を及ぼしていますね(梅田さん)」

 

「10年間の変化は色々ありますが、一番大きいのはPCのスペックが飛躍的に上がったことでしょうか。例えば1秒間に100回しか計算できなかったことが、1回で100万回計算できるようになると、できることの範囲が確実に増えていきます。もうひとつはインターネットですね。色そのスペックが上がったコンピュータが世界中で広がっているので、出来ることが単純に増えます(森岡さん)」

 

「物とか機材の値段が下がり、購入ルートが変わったというのも大きいです。昔は例えばちょっとしたモーターを買いたいとなった時に、工場に行くと、3000個のロットからしか販売できないと言われ、それじゃあ買えないから秋葉原の小さい店に行って探すか、など、小さいモータ―を買うのもすごく大変だったし、モーター1個の値段も高かったのですが、今でしたらネットで探せば値段も安くて1個から変える、という状況になっています。海外の製品も同様です。昔だったら超ノウハウとコネクションの世界で、大企業しか手に入れられなかったのが、中学生でも手に入れられる時代になってきたということです。個人でも興味さえあれば色々なことができる時代です。(梅田さん)」

 

だからこそ、個人が動くきっかけとなる興味、モチベーション、やる気がますます大事になるといいます。

「やる気があってちょっとにぎれば、以前に比べて個人のできることが増えているので、10倍20倍の知識が手に入ったり、10倍20倍のことができる分、やる気がない人との差はどんどん開く。これからはよりそれが顕著になるでしょうね(森岡さん)」

 

ちょっと怖い気もしますが、好きなことをやり続けるとそれがいつか自分の人生を切り開くようになるというのは、幸せなことでもあるのではないでしょうか。

 

プログラミングについてはどうでしょうか。「コンピュータというツールは、絵筆とか、他のグラフィックでできることは明らかに違います。コンピュータでできることを知ると、デザインのその考え方自体が変わってくるので、やはりコンピュータは使えたほうが良いと思います。ただ、プログラミングを学ぶというと、職業訓練みたいな感じがするので、プログラミングを使って自分のやりたい何かにアプローチするほうが良いのではないでしょうか。極端な話、やりたいことが実現できていれば、プログラミングの書き方は最初はぐちゃぐちゃで良いと思います。例えばグラフィックが好きなのであれば、グラフィックがプログラミングで簡単につくれる環境というのはたくさんあるので、そういうのをためしてみると、自分の好きなものの領域でプログラミングがどう寄与するのかを感じられると思うんですね。音楽だってゲームだってグラフィックだって、パソコンを使えばできることが増えるのは間違いないので、むしろやりたい分野でパソコンを使ってみる、ということが大切なのではないでしょうか(森岡さん)」

 

「プログラミングが嫌いになってしまうくらいなら、小中学生からプログラミングを学ばないほうが良いと思います。1→10では、社会人になってからプログラミングを勉強している人が多いですが、勉強のスタートは自分の感動から入っている人が多いです。例えばクラブに行ってVJがめっちゃかっこよかった。それがどんなふうにつくられているかを調べたら、プログラミングでやっていたことがわかったので、勉強してみようとか。メディア芸術祭に行って、そこでの展示がすごくかっこよかったからあれを真似してみようとか(森岡さん)」

 

「現状で満足できなくなったり、これをもっとこうすればよいのに、と思うことも、プログラミングをやってみようと思うきっかけになると思います。例えばインスタグラムを使っていて、その使い勝手っていまいちだよねと思うとか、こういう情報を調べたいのにインスタグラムの機能だとできないのをどうやったら解決できるかって考えるとか(森岡さん)」

 

お2人のお話からは、新しいものを生み出す際はどんな専門であってもデザインする力が必要とされること、現在、そしてこれからの時代は、発信も含め、個人ができることが増えてきたということ、その推進力となるモチベーションや興味が、全てのプロセスに関わってくるし、自分の好きに没頭することが、未来を切り開くのだなあ、と感じました。

 

梅田さん、森岡さん、お忙しいところインタビューにお答えいただき、ありがとうございました!

 

↓1-10driveさんのホームページはこちらです。

www.1-10.com

 

↓前回の記事はこちら

arts.hatenablog.jp