モチベーションの世代差の面白さ―「モチベーション革命―稼ぐために働きたくない世代の解体新書」を読んで

みなさまこんにちは。清水葉子です。先のブログで紹介した110driveさんのインタビューで、これからはモチベーションがキーになるというお話、何か一つのことに没頭することが、イノベーティブな力を伸ばす、というお話がありました。これは以前にご紹介しましたRISDの教育でも、一つのテーマとなっていました。

 

では、一つのことに没頭する時のモチベーションの源泉は何なのか?と考えているときに、こちらの本に出会いました。

「モチベーション革命―稼ぐために働きたくない世代の解体新書」

尾原和啓著 Amazon CAPTCHA

 

著者の尾原和啓さんは、現在40代。20代、30代前半の日本の若い人たちを、反応がにぶく、未来に渇望していないと思い、失望していたそうですが、ある時、40代、50代の人たちとはモチベーションのもとが違うということに気が付いたそうです。

尾原さんはそれを大きく「乾いた世代(40代以上)」「乾けない世代(30代以下)」に分け、解説しています。詳しくは本書を読んでいただきたいのですが、ざっくりと解説すると、乾いた世代は何かを達成し、その結果モノや行為としての快楽を得ることを目標に頑張れるのに対し、乾けない世代は、今自分がやっていること自体に幸せを感じられるかどうかが、そのポイントになるというのです。本書では「意味合い」「良好な人間関係」「没頭」というキーワードでそれが表現されています。

 

私も40代なので、乾いた世代なのかもしれませんが、このように言語化していただくと、何か実感としてその両方が見えてくる気がしました。

 

これは私の解釈ですが、乾けない世代が乾いた世代よりも物質的に多くを持っているかというと、そうでもない気がします。経済成長が右肩上がりではない今の日本で、頑張れば何か良いことがある、という頑張り方は、だんだん難しくなってきています。成功体験がある乾いた世代は、まだそれでも頑張れるのかもしれませんが、乾けない世代は、そこを目的とはしづらいのだろうと思います。その代り、今にフォーカスをして、周りの仲間と、何かに没頭することを大切にするのかもしれませんね。

 

尾原さんは、この乾けない世代のあり方が、これからやってくるAI時代に求められるとも指摘します。それぞれが理由なく好き、偏愛するものに没頭し、追及することで、それぞれの得意分野を持った集団ができ、彼らがコラボレーションすることで、クリエイティブな、強い組織ができ、理由なきこだわりが、AIにはない価値を出せるきっかけになるというのです。

 

私は「没頭」というと、個人的な作業を連想してしまいますが、たぶんこれからは、「仲間と没頭」できる人が力を発揮するのだと思います。特に若くてかつクリエイティブな人たちは、こだわりがあるのに、人とうまく協力できるところがすごいなあ、といつも思います。乾いた世代の人は、人とうまく棲み分けるのが苦手で、つい一つの物差しで優劣をつけてしまう人が多いのではないでしょうか。立場や役割の違いを上下関係と認識するのも、乾いた世代の特徴と言えると思います。このあたりは、個人的にも、本当に若い世代に学ぶことが多いと感じますし、もっと知りたいなあと思うところです。そしてそこをきちんと理解することが、教育現場で没入学習ができる環境をつくるための鍵なのではないか、と、あらためて考えることができました。