探究の探究2 High Tech High のプロジェクト型学習とは
アメリカ、サンディエゴにある学校 High Tech Highでの教育を紹介した映画「Most Likely to Succeed」を観ました。
映画のディレクターが、探究の探究1でもご紹介したトニー・ワグナー氏、カーン・アカデミーの創立者、サルマン・カーン氏、教育思想家のケン・ロビンソン氏などにインタビューを行い(彼らは映像内にも登場)、今、そしてこれから社会で求められる人材、つまり、イノベーティブで、創造性を備え、興味を持って学び続け、失敗しても再度チャレンジし、成し遂げられる人を育てるための教育が必要だという一つの結論に達し、一番その理想に近い教育現場としてHigh Tech Highでの教育が紹介されています。
映画では、いくつかのプロジェクト学習型の授業と、それを実施する先生(必ず2名で担当)、また、それに取り組む生徒の様子を、授業のスタートから、保護者を中心とした地域の人たちへの発表までを描いています。
面白いと感じたのは、どの授業も、学んだことを演劇や模型などの作品として発表すること(まとめレポートではなく、新たに創造したもの)、数名のグループで取り組むため、チームでどう動くか(リーダーとしての動き方、それぞれの得意分野の生かし方、締め切りに向けてどううまくコミュニケーションをとって動くかなど)、先生方の生徒一人ひとりへのかかわり方です。
先生方は、この方法が生徒の将来のためになると信じているものの、保護者からは不安の声も出てきていて、先生にそれをぶつけるシーンなども描かれています。子どもにとっての幸せは、良い大学に行かせることだけではないとわかっているけれども、子どもの選択肢を狭めたくない、というある保護者の声には、うんうん、とうなずいてしまいました。
映画では、テストと知識習得と、PBL(プロジェクト型学習)が二律背反のように描かれている部分もありますが、このHigh Tech Highでの教育について、取材をもとに、また、教育の歴史にも照らし、丁寧に解説されている本「社会とつながるプロジェクト学習『探究』する学びをつくる(著:藤原さと氏)」を読むと、そうではないことがわかります。
授業のほとんどがPBL型のHigh Tech Highでは、PBLの中で必要な知識が習得できるよう、先生方がプログラムの課題設定をものすごく綿密に行っていて、大学受験のサポートも行っているため、他の高校と比べても高い大学進学率、また、高い大学卒業率となっています。
映画と本、両方から感じたことは、よいPBLは、知識はもちろん、プロジェクトをチームで進める力、学びのスキル、学び続ける姿勢、何かを形にする力などが得られるということです。自分の(自分達の)プロジェクトのために身に着けた知識は、忘れにくいし、何かを達成するために必要な知識を学ぶ、というスタイルは大人になっても役立ち、そしてなにより、必要なことは自分で学べばよい、という自己認識ができることはとても大切だと感じました。(大学に入り、学びがもっと専門的になってくれば、自分の得意分野や好奇心も影響し、すべてそのようにはいかない時が来るのだとは思いますが、学びの入り口として、自分はできる、学びたいという気持ちはとても大切と感じます)
映画”Most Likely to Scceed”はウェブ上でレンタル、視聴できますので、興味のある方はぜひご覧ください。
また、藤原さとさんが書かれたこちら、ぜひ併せてお読みください。
最後に・・・
来年度より高校に導入される科目「探究」は、High Tech HighのPBLの位置づけとは異なります。社会、理科などは教科の時間として別にあった上での探究の時間ですから。つまり、ここで教科横断型の授業を先生方が詳細に検討しなくても、いいのではないでしょうか。。。