「自ら学ぶ力」と「探究心」を育むラーンネット・グローバルスクール。その環境とカリキュラムとは? その2

みなさまこんにちは!清水葉子です。先日、探究のヒントを求めて、開校以来「探究」をその教育の中心に置かれている、ラーンネット・グローバルスクールを取材させていただきました。前回の記事では、建物とカリキュラムについて紹介しました。後半の今回は、子ども達、ナビゲータのみなさんの動き、関わり方をご紹介するとともに、自主性と探究心を育てるために必要な環境について考えたことを書きたいと思います。

●パンフレットより、高学年の時間割例

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前回もご紹介しましたカリキュラムです。2時間続きで、個人またはグループで考えて進める授業がとても多いという印象を受けました。

LGSに6年間通うと、その後どこに行っても自分で考えて動けるようになる」と、炭谷さんも奥村さんも断言されています(中学は、編入の生徒さんが引き続き通えるように準備されています)。そして、LGSから他の中学校などに進学した生徒さんからは「自分で動かなくていいから楽だ」という声も聞こえてくるとか。高学年の時間割を見ると、1コマ40分でとことん=2.5コマ、プロジェクト=2.5コマ、テーマ学習=4コマなので、これに行事やマイ・スタディー(毎日1コマ)もあわせると、自分で決めて進める機会が本当に多いことがわかります。この機会の積み重ねが、自分で動けるようになる人をつくっていくのでしょう。

 

LGSでは修学旅行も自分達で計画します。小学生も、中学生も、修学旅行の行き先、過ごし方(そもそも行くかどうかも含めて)を自分達で話し合って決めます。予算を決めて保護者の方達のOKをもらった後、切符や宿泊先の手配も行います。

 

スクール全体のキャンプも、高学年と中学生のリーダー達が中心となり、行き先も含めて詳細を決めていくそうです。見学の日は中学生が修学旅行の見学先について話していました。なかなかの盛り上がりでしたが、お互いが相手の意見を整理しながら自分の意見も言うという、良い意見交換をしていると感じましたし、ナビゲータはその様子を観察していて、時折「その言い方で相手に伝わってるかな」とコミュニケーションのサポートをされていたのが印象的でした。生徒同士の話し合いは時間がかかることもあるそうですが、大人はすぐに介入せず、待つ、というのが、LGSの方針だそうです。

 

 

高学年のテーマ学習では「食べ物と体」のテーマの中で、ちょうど調理実習の時間でした。ここでも共通のレシピではなく、自分達で栄養価の残る調理の仕方を考えて、調理をしていました。学習後半では、それぞれが自分の興味のあることについてまとめるそうです。

 

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掃除の時間には、低学年の生徒に自分達で考えて動けるような問いかけを、ナビゲータがされていました。

 

ナビゲータの採用基準は「何かを深く探究した経験がある人」

ここまでの紹介の中で、授業に入られている大人のことを「ナビゲータ」と表現してきました。LGSでは、関わる大人全員、先生ではなくナビゲータという呼称で統一されています。もちろん授業でクラス全体に向けてお話しされることもありますが、生徒さん一人ひとりの様子を観察し、必要な時に声をかけたりといった、個別の関わりのほうが多く見られました。ナビゲータの方々の中には、教員免許をお持ちの方もいらっしゃいますが、採用において、教員免許は必須条件ではなく、むしろ、「何か1つのことを深く探究した経験があること」のほうが重視されるそうです。これは私の見解ですが、おそらく、探究の経験がある人は、正解を見つけることが探究のすべてではなく、そのプロセス自体から多くのことを学べるため、生徒さん達に正解を急かさず、見守ることができるからなのではないかな、と感じました。正解が1つではない場合も、多くありますし。

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家庭の延長のような、リラックスできる環境

自分で考えて動くシーンが多いLGSですが、大人から何かを強制されるようなシーンや、緊張感のある場面はいっさいなく、生徒さん達は、自由に発言をしながら過ごしているように見えました。奥村さんによると、注意されるシーンももちろんあるそうなのですが、今回は見ることができませんでした。また、各部屋には必ず、少人数で過ごせそうな場所が準備されていて、その時々の気持ちや状況に合わせて場所を選べるようにされているのかな、と感じました。LGSにはチャイムがありません。生徒達は自分達で時計を見て、場所を移動したり、作業の切り替えをするのですが、せかせかした雰囲気があまりないのは、2時間続きの授業が多いからなのかもしれません。全体として、家庭の延長のような、誰もがリラックスして、全員に居場所がある、といった印象を持ちました。

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「自ら学ぶ力」と「探究心」は、実践の積み重ねで育つ

見学させていただいて感じたのは、LGSが目標として掲げている2つの力「自ら学ぶ力」と「探究心」を育てるための環境が、LGSには十分に整っている、ということです。カリキュラムの半分以上に自分で考えて決める機会があり、個人またはグループで進行中のプロジェクトに、生徒1人ひとりがいくつも関わっていて、本当に興味のあることを探究し、発表する機会もある。「自ら学ぶ力と探究心を育てるのであれば、それが実践できる場を多く用意すれば、生徒達は色々なことを経験しながら成長していく」これが、LGSのとてもシンプルで、でも強い、学びの環境なんだと思います。

 

もうひとつ、炭谷さん、奥村さんのお話しから強く感じたのは、生徒全員が、自ら学び、探究できるようになることを、ナビゲータのみなさんが信じている、ということです。自立的な学習、探究姿勢は、特別なものではなく、それぞれが目指し、できるようになることなんだと、実際の様子を見せていただいて感じました。

 

これも私見ですが、時に大人が成果物やプロセスの質をジャッジしすぎることで、安心して自己表現できなくなってしまうことって、教育の現場で起こったりすると感じます。

LGSでは、ナビゲータの方達の、生徒一人ひとりへの愛ある見守りが、それぞれが安心して自己表現することを促し、結果的に自立を促すのではないか、と感じました。

 

LGSに6年間通うと、その後どこに行っても自分で考えて動けるようになる」というのはおそらく、「自ら探究できる力を身に着けると、どんな環境でも生きていけるようになる」と言い換えることができ、中学、高校のみでなく、その先の人生でも通用する力なんだと思います。

 

見学する前には、認可外のスクールだからできることにばかり目が行ってしまっていましたが、実際に見せていただくとそうではなく、シンプルで強い目標と実践のための徹底した環境設定が、ラーンネット・グローバルスクールの良さなのだと感じることができました。

炭谷さん、奥村さん、リアルな場を見せていただいたナビゲータのみなさま、生徒さん達、ありがとうございました!

 

↓ラーンネット・グローバルスクールのページはこちら

www.l-net.com

 

↓前回の記事はこちら

arts.hatenablog.jp