探究の探究1.誰もがクリエイティブで信頼しあえる社会を築くための7つのスキル
探究について考えるための本のご紹介です。
未来の学校(原題:The Global Achievement Gap) トニー・ワグナー著 陳玉玲訳
2017年(原書は2008年)
「学校は何を学ぶ場所か。卒業して何を目指すのか。」
自分自身について、自分の子供について、誰もが考えることではないでしょうか。
本書の著者、トニー・ワグナー氏は、教員、校長、研究者など様々な立場から教育の目標とその意味について試行錯誤、研究を重ね、その中で、学校の教育内容と、社会が求めるスキルのズレに気づき、その理由と解決策が事例とともに紹介されているのが本書です。
2002年に「落ちこぼれ防止法」が施行され、そのためのテストが重要視される、また、高校においては、大学進学のため準備にも時間が費やされるという状況、一方で、それらをクリアしたとしても、高校までの教育で、大学または社会に出るための準備が十分とは言えない、という状況に氏は気が付きます。
その状況を打破する方法として
論理的思考力と問題解決能力、口頭および文書による効果的なコミュニケーション能力、好奇心と想像力など、生き残るための7つのスキル(7 Survival Skills)を提示します。
詳細は書籍を読んでいただきたいのですが、興味深いのは、これらのスキルが一部の人たちのものでなく、すべての人に必要だと、氏が述べていることと、知識を否定するものではなく、むしろ知識習得をゴールとすべきではない、というところです。
「21世紀にあって最も重要と思われる厳しさとは、労働、市民生活、生涯学習に必要な核となる能力を身につけていることである。学問を学ぶことは、能力を向上させる手段であって、それ自体が目標ではない。今日の世界では、もはやどのくらい知っているかではなく、知っていることで何ができるかが重要である。」本書p129より
社会的なステイタスなど関係なく、大学に進学しなくても、どんな生き方や仕事を選んでも、生活や人生の色々なシーンで7つのスキルを発揮し、クリエイティブで、信頼しあえる社会を築いていけることがとても大切だと、本書からあらためて感じました。
そして、この7つのスキルを身に着けるためにワグナー氏が提唱するのが、チームで課題解決に取り組むProject Based Learningという学びの方法です。知識をインプットしてアウトプットするだけでなく、知識を活用することで、より使える知識になるということです。
ワグナー氏のTEDでのレクチャーはこちら
https://www.youtube.com/watch?v=hvDjh4l-VHo&t=331s
この本を読んだ後、なぜPBLを取り入れると知識も身につくのか、考えました。これは私個人の考えですが、生徒たちは、PBL型のほうがより扱っている内容やテーマが自分ごとになり、結果的に授業時間以外のところでも考えるようになるのではないでしょうか。(これについてはまた後日考えてみたいと思います。)
清水葉子