探究の探究3.親が手をかけすぎないほうがイノベーターは育つ?

探究について考えるための本のご紹介です。

 

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未来のイノベーターはどう育つのか(原題:CREATING INNOVATORS The Making of Young People Who Will Change The World) トニー・ワグナー著 藤原朝子訳 2014年

 

先日ご紹介した「未来の学校」の続編のような位置づけの本です。

生き残る(クリエイティブで、信頼しあえる社会を築く)ための7つのスキル(7 Survival Skills=批判的思考と問題解決能力、ネットワーク全体におけるコラボレーションと影響力によるリーダーシップ、敏捷性と適応力、イニシアチブと起業家精神、情報へのアクセス力と分析力、口頭と書面でのきちんとしたコミュニケーション力、好奇心と想像力)を前提とし、よりイノベーティブであるために必要な力について、イノベーティブな大人へのインタビューや、イノベーティブな若者(著者の世代とはモチベーションの源泉が違うという意味での世代定義)が育った環境の調査を通して、「若者がイノベーターや起業家になるのを助ける」子育て環境について探る、といった内容になっています。

 

・・・という紹介をすると、何やら堅苦しく、エリートを育てるかのように見えるかもしれませんが、読んでいただければ、決して経済的に恵まれた環境の子どもにだけあてはまる内容ではないことがお分かりいただけると思います。

 

調査の結果導き出された結論。イノベーターを育てるためには、子どもの好きなことや好奇心を大切にし、そのためについやす時間を与え、失敗するかもしれないと思ったとしても、子どもの選択に口を出しすぎない。本書内にはもっと具体的なシーンが描かれていて、親目線で読むと、そのバランス、簡単なようで難しい!とも感じましたが、親が子どもの先回りをして色々決めたり、手をかけすぎないことがポイントのようです。

モチベーションを子供の頃につぶされ続けていると、大人になってから、なかなか情熱を傾けられることに出会えなくなるのかもしれず、逆に、色々試して好きなことを見つけて、とことん探究する機会を持てると、それがうまくいってもいかなくても、自分の中に何か熱のようなものが残るのではないでしょうか。

 

先日のPBLの話とも重なりますが、自分が取り組むプロジェクトを自分ごととして、自分の真ん中にもってこれるかどうか、そしてそれを成し遂げるために時間を使い、集中し、試行錯誤するほどの情熱を傾けられるか(傾けてもよいと思えるプロジェクトであれば)、これが、イノベーティブであるために、スキルが高いか、知識を持っているかよりも重要なことではないかと感じました。スキルや知識が足りなかったら、外の力を借りれば良いという考え(借りたいと思うこと)、も大切だと感じました。

 

清水葉子