没入学習が、イノベーションを起こせるジェネラリストを育てる 1→10drive 梅田 亮さん、森岡 東洋志さんインタビュー その1

 こんにちは。清水葉子です。先日、「イノベーションのためのアート・デザイン教育とその可能性―STEMからSTEAMへ」というタイトルで、私学マネジメント協会が発行している雑誌に記事を書きました。 その過程でどうしても、1→10drive(株式会社 ワン・トゥー・テンドライブ)さんにお話しをお聞きしたい!と思いまして、お忙しい中お時間をいただきました。色々な企業がある中で、1→10driveさんは、技術とデザインの関係性がとてもフラットで、かつ、その両面が優れたコンテンツを生み出されている、と感じているからです。

代表取締役CEOの梅田 亮さん(写真左)、同社執行役員CTOの森岡東洋志さん(写真右)にお話をうかがいました。

f:id:yShimizu:20171029233738j:plain

 

1→10driveは、映像、プロダクトなど、幅広い手法で人の気持ちを動かしたり、感動を与える仕組みをつくる会社です。キーとなるのは個人の「体験」。例えばかっこいい映像に驚いたり、触って反応があったり、これまで見たことが無い製品だったり。そういう心が動く瞬間を作りながら、ユーザーを増やしていく。1→10driveが手掛けるほとんどのプロジェクトがそのような「体験」をつくることを目的としています。そして、提供する体験はプロジェクトによってさまざまです。

 

人の気持ちが動くきっかけとして、ほんの10年前まではマスメディアが圧倒的に強かったのに、個人の発信力が高まった今、その地図は大きく変わっているといいます。

そこでキーになってくるのは個人の「体験」。例えばかっこいい映像に驚いたり、触って反応があったり、これまで見たことが無い製品だったり。そういう心が動く瞬間を作りながら、ユーザーを増やしていく。1→10driveが手掛けるほとんどのプロジェクトがそのような「体験」をつくることを目的としています。そして、提供する体験はプロジェクトによってさまざまです。

 

「業務を限定しないために、色々な分野のプロフェッショナルが集まっているのが、弊社の特徴です。CGのプロフェッショナルが数人、デザイナーが数人、プログラマーが数人、といったようなメンバー構成とすることで、柔軟なアウトプットが可能になるからです(森岡さん)」クライアントからの相談は、「何度も訪れてもらえるような展示を」のような、目的先行型のものもあるそうです。「そこから社内で相談し、目的を達成するために映像で説明したほうがよければ映像のチームをつくりますし、アプリケーションをつくったほうがよければ、エンジニアを使ってプログラムを書いてアプリケーションを作るし、Webサイトを作ったほうがよければWebサイトをつくります(森岡さん)」

 

たとえば2015年の冬季に京都水族館で行われた「雪とくらげ」というインスタレーションでは、「お客さんを呼ぶシーズン限定のコンテンツをつくりたい」「地元以外の人も来て欲しい」「飼育員も納得感があるものを」という相談を受けて、どういうコンテンツをつくれば解決できるのかを、社内の方達を中心に、チームをつくって検討していったそうです。「まず、映像的なビジュアルとしては、あまり水族館になじまない映像をつくってしまうと、生き物を見に水族館に来るお客さんと、プロジェクションマッピングを見に来るお客さんが乖離してしまう。そうすると、飼育員さんたちが、「これって別に水族館でやらなくてもいいよね」という感想を持ってしまいます。なので僕らは、水族館じゃないといけないプロジェクションマッピングにしたいと思い、くらげを中心とした映像を決めていきました。また、インタラクションをつけたのは、映像のプロジェクションマッピングだと、お客さんのリピート率が高くなく、長期間実施していると客足がにぶってしまいます。インタラクションをつけると、リピート性があがるし、子どもというターゲットも取り込めるというねらいもありました(森岡さん)」さらに、映像の表現詳細や、リピートをねらった映像の変更、京都らしさなども加えていったそうです。

www.youtube.com

 

このように最初の段階から、デザイナー、エンジニアが会議に入り、話し合いを進めていくことが1→10driveさんの基本方針のようですが、専門性の違うメンバーがコンセプトから話し合いを進める難しさはないのでしょうか。

「たしかに、デザイナーはグラフィック、モーションデザイナーはアニメーション、プログラマーはプログラムというように、自身の解決方法を持っていますが、全員の中心にあるのは(ユーザー側の)「体験」です。例えば触れると波紋が広がる映像があったとして、波紋が出るのが、5秒遅延していたら気持ち悪いよね、という体験の課題を、プログラマーだったら処理を早くすることで解決できるし、デザイナーだったら波紋の出方にためをつけてあげれば一続きのアニメーションに見えるかもしれないからグラフィックで調整できるかもしれない、というように自分達の得意分野の中で、ユーザーの体験をどう良くできるかを提案していきます。このように「体験」が中心にあるので話題がかみあわないということはあまりないですね。逆に言うと、エンジニア目線でどうこうという話はその場ではしなくて、それはすごく手前の段階ですませておくようにします。自分の制作者としての立場をいったん脇に置き、どうすれば全体が良くなるかを考える。そういう力を持った人が協業しやすいですね(森岡さん)」 

 

梅田さん、森岡さんによると、それぞれの専門性を持ちつつも、他の領域にもリーチして考えられるジェネラリストが、新しいものを生み出す環境では、重要な役割を果たすそうです。特に1→10driveでは、「体験」をデザインできることが重要で、デザイナーはもちろん、エンジニアにもその能力が求められることになります。

「これだけ情報があふれる世の中ですから、1つのことのプロフェッショナルは、すごく人口が限られるようになっていくんじゃないかと思います。第一人者がいればよく、1.5流のことが1つできる人は、たぶんジェネラリストも1.5流くらいにはなれるので、そういう人たちに1種類の1.5流の人は勝てないかもしれません。1.5×複数がないと、これから生きていくのは大変なのではないかなと(梅田さん)」とはいえ、1→10のみなさんは常に技術をみがいていらっしゃるのが、すごいところです。

 

「特に技術の分野は新しいものがどんどん出てくるので、日々新しいインプットが必要です。新しいプログラムやソフトは触ってみないとわからないし、前までできなかったけどできるようになったことを見つけようとしています(森岡さん)」

 

1→10のみなさんのような、イノベーティブかつ専門性を持ったジェネラリストはどう育つのか、というと、その鍵は「没入」と「モチベーション」にあるようです。

「中学生くらいの年齢の子に言うとしたら、何かひとつ、なんでもいいのでモチベ―ディブにやってみな、ということですね。部活動でも何でもよいので、やってみるのが良いと思います。漫画でもお絵かきでも、マンホールの蓋を写真に撮るでも、追及するのはなんでも良いと思います。親や周りからくだらないとか、そういうのはやめなさいと言われても、そういうことにとらわれないで、好きだという気持ちに素直になって、続けることが大事だと思います(梅田さん)」

 

好きなことを見つけ、没頭する中で知識や技術を身に付けて行く。そしてまた次の好きなことを見つけることで、その人の強みが増えていくそうです。

(続きます)

 

↓1-10driveさんのホームページはこちらです。

www.1-10.com

 

↓その2はこちらです。

arts.hatenablog.jp