探究の探究4.子どもに必要で、でも今足りていないのは、余白かもしれない

2020年から小学校、中学校、高等学校で導入されはじめた、新学習指導要領(中学は2021年、高校は2022年に全面実施)に示されていることもあり、今広く注目を集めている「探究」。この言葉自体は急に昨年から出てきたものではなく、国内でもこれまでに多くの実践があり、こちらのブログでもご紹介してきたように、海外でも同じ動きがあります。

とはいえ、現在の保護者世代が過ごした子ども時代にはあまりなじみの無かった言葉だけに、とまどう方も多いのではないでしょうか。子どもの探究力を伸ばすために何をさせたらいいのかわからず、探究専門の塾や教室に通ったほうが良いのではないか、など、不安が募る方もいらっしゃるかもしれません。ご自身のキャリアに照らし、探究の大切さを理解されている方も、では子どもには具体的にどうする、という部分で考え込んでしまうこともあるのではないでしょうか。

 

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教育ジャーナリストとして、多くの教育現場を取材され、発信をされてきた中曽根陽子さんが書かれた「成功する子はやりたいことを見つけている―子どもの「探究力」の育て方」は、そんな風に、これからの時代に求められる力を育てるために、保護者がどう関われば良いかについて、とてもわかりやすく書かれた本です。

 

まず、冒頭の「これからは、教育熱心な家庭の子どもほど伸び悩む。」という一文に、ドキっとさせられます。保護者が子どもの成長についての考え方を、根本的に変えることが大切、という、この本の全編にわたるメッセージを、端的に表現している言葉だと、読み終わってあらためて感じます。

 

詳しくは本書をお読みいただきたいのですが、時間やかかわりにおいて、子どもの成長に必要なこととして共通しているなと感じたのが「余白」です。

子どもに何かしてあげなくては、子どもに学ばせなくては、と思い、気が付いたら隙間なく色々と詰め込んでしまっていることって、ありますよね。そうではなく、ちゃんと余白を残してあげることって、あらためて考えると、本当に大事です。

 

ちょっと話はそれますが、デザインにおいても余白の残しかたが全体の印象に大きく影響を与えます。コミュニケーションにおいても、相手の話をきちんと聞くために、沈黙を怖がって埋めようとしないことが大事です。子どもが育つ環境においても余白が大事なのに、不安になった大人がそれを埋めてしまうのは、うん、絶対に良くないですね。

 

 本書は「探究力」という言葉に初めて触れる方にも、探究について、今の教育について、わかりやすく解説されています。そして、「探究力」を軸に習い事のこと、生活習慣のこと、コミュニケ―ションのことなど、今を生きる保護者なら必ず1度は考え、悩むことについて、根拠や実例を示しながら書かれています。今の教育について知りたい方、まさに今子育て中の方にお勧めの本です。

 

清水葉子