「ブルーマン」がSTEAM教育を実践! クリエイティブシンキングを育てる、blue school

こんにちは!清水葉子です。

STEAM教育の実践校でよく話題に上る学校に、ニューヨークのブルースクールがあります。2-4歳、K-5(小学生)、K-8(中学生)が在籍し、その目標は「世界をより良く変えるイノベーターを育てる」ことにおいています。

 

www.blueschool.org

 

そしてこの学校の創立者はなんと、パフォーマーのブルーマンなんです!

https://www.blueman.com/

 

黒い衣装で、顔や手を真っ青に塗って、演奏やパフォーマンスを行うブルーマンは、マンハッタンの路上パフォーマンスからスタートしたグループです。これからの世の中に求められるクリエイティブシンキングを育て、未来のイノベーターを育てたいと考えた彼らは、多くの先進的な学校、教育を参考にしながら地元ニューヨークで、理想の学校を作り上げます。

 

クリエイティブな力、思考を伸ばすためには、世界の変化をキャッチし、自身で失敗しながらも試行錯誤し、それを相手に伝え、返答をキャッチして一緒に考えていくというプロセスが大事だといいます。そのために小学校、中学校ではプロジェクト型の学習と、探究型の学習がメインとなっていて、それは、「人は質問と経験をすることで、世界について学んでいく」という考えに基づいているそうで、先生は教える人ではなく、生徒とともに探究をする人として関わります。

 

中学になると、数学、統合研究、小説とノンフィクション、などとともに、「プロダクションワークショップ」という授業を受けます。この授業は STEAM(科学、技術、工学、芸術、数学)分野に焦点を当てていて、大きなアイデアを具体的なプロジェクトに変えるためのスキル、デザイン、ハイテクツールの使用法を学ぶそうです。

 

↓学びの全体像の図は、こちらで見ることができますよ。

www.blueschool.org

 

2012年のインタビューを以下にご紹介します。

イノベーションは育てることができる」「世界で起こっている新しい事柄を知り、それを相手に伝えることで、それが形を変えて戻ってくる。そういった、教育界の外ともつながるオープンダイアログを大切にしている。」「blue schoolは先生も学ぶ場 先生は探究者であるべき」といった言葉、とっても良いなと感じました。

 

www.youtube.com

 

全ての年齢を通し、生徒達が試行錯誤、失敗しながらも自分で学びたいことをまなび進めていくというプロセスが大切にされています。ブルーマンのみなさんとなら、ずっと楽しい、わくわくできる教育プロセスが展開できるだろうなあ。中学は、2015年にできたばかり。次は高校?この後の展開も、楽しみです。

秋の夜長は読書で価値観をゆさぶってみませんか―「建築家なしの建築」「集落の教え100」のご紹介

こんにちは。清水です。

 

今、アート、デザイン教育についての原稿をまとめているのですが、

人間の価値観を変えたり、ゆさぶったりするのに、アートやデザインが果たす役割は大きいなとあらためて感じています。

 

そんな中、学生時代に読んだ本を思い出したので、2冊、紹介します。

 

1冊目

「建築家なしの建築」

バーナード・ルドフスキー著、渡辺武信訳 鹿島出版会

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ルドフスキー氏はアメリカの建築家なのですが、たぶん建築よりもエッセイのほうが有名で、本書を始め、建築について、ファッションについて、文化について、独自の視点で切り込み、読者に示してくれます。西洋文化が正しく正統だ、と考えられがちだった時代に、そんなのはナンセンス、異文化や注目されないカテゴリーにもこれほど魅力的なものがあるんだよ、と教えてくれるものです。

「建築家なしの建築」では、住まいの紹介が多いのですが、地面や岩を掘りこむ、水の上に浮かぶなど、その環境、文化ならではの独特の形をした建造物が、写真とともに紹介されています。それぞれの場所で最適解としてデザインされた答えが、外部の人達にはユニークな形だと一種アートのように鑑賞される、という関係性が、あらためて面白いなあと感じます。

 

2冊目

「集落の教え100」

原 広司著、彰国社

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原氏は京都駅を始め、大きな公共建築を数多く手掛けられている日本の建築家です。

京都駅もそうですが、原氏が手掛ける建物は大空間でありながら、一人ひとりが心地よく感じられるように、小さな場所や装飾が設けられています。「集落の教え100」は、そのデザインのヒントが数々の集落に隠れていることを教えてくれます。それぞれの事例には原氏の言葉が添えられていて、時に問いかけのようなその表現に、写真に加え、もうひとつの視点をもらうことができます。 

 

 

 

生意気で一直線な建築学科の学生だった私は、「形には根拠が必要なんだ!」とかつぶやきつつ、これらの本を夢中で読みました。赤ボールペンで線が引いてある部分を見ると「え?そこに注目したの?」と笑えます。それで、先生にラルフ・アースキンという建築家を紹介していただき、別の世界を発見するのですが、またそれば別の機会に書ければと思います。

 

何か思考が固まっちゃったなあという時、よかったら読んでみてください。

イノベーションのためのアート・デザイン教育とは(書籍「RISDに学ぶクリティカル・メイキングの授業」から考える)

みなさまこんにちは。清水です。

 

先日、STEAM教育を提言するJohn Maeda氏と、RISD(Rhode Island School of Design)について当ブログで紹介しました。

 

本日はRISDの教育内容についての書籍紹介をしたいと思います。

RISDには、他の多くの美術・デザイン系の大学にあるような、絵画、グラフィックデザイン、彫刻、服飾、建築などの専攻があるのですが、なぜイノベーションが教育の中心にあるのかな、と本書を読む前には不思議に思っていました。

 

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本書はRISDの現学長 ロザンヌ・サマーソン氏、RISD統合化計画の統括責任者マーラ・L・ヘルマーノ氏の統括のもと、いくつかの学科の教員が、RISDの教育について、基礎教育、探究思考、ドローイング、実物教育などのテーマで、単独または討論の形式で紹介しているものです。

大学が目指すところは、イノベーションを起こせるアーティストやデザイナーを育成すること、と、とても明確です。

その手法は学科や教員によって少しずつ異なりますが、共通のテーマとして感じたのは、自身の内側だけに目を向けがちな学生達に対し、社会全体に広く目を向け、様々な視点を持つこと。現象や思いを言語化、ストーリー化できること。自分の軸を持ちながら時間をかけて探究を続けること。そして新しい形としてそれを表現し、それを説明することです。本書ではそれをクリティカル・メイキングという言葉で表現していますが、個人的には「アウトプットまで時間をかけてじっくりやる探究」という風に感じました。

 

自宅などプライベートな場を、期間を決めて貸し借りできるサービス、Airbnbの3名の共同創業者のうち、2名はRISDの卒業生です。彼らはこの事業で何をデザインしたのか?を、創業者の一人、ジョー・ゲビア氏のTEDでのプレゼンテーションでご確認いただけると思います。

 

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お時間の無い方のためにちょっと書いてしまうと、彼らがデザインしたのは「信頼」です。見知らぬ人に部屋を貸す、という不安を解消するために、ユーザーの情報が(好印象とともに)伝わりやすいよう、サ―ビスがデザインされ、新しい形の信頼を世界中に作り上げることに成功しています。

 

また、ゲビア氏のプレゼンを聞いていると、様々な状況を言語化する力に驚かされます。もともとの能力ももちろんあるとは思いますが、RISDで培われた部分も大きいのではないかと、本書を読むと考えさせられます。言語化することで物事を再定義し、これまでになかった新しいものをデザインしていく。これぞRISD力なのではないかなあと思うのです。

 

アートやデザインって、色々な切り口があると思います。RISDは「イノベーションのためのアート・デザイン教育」と、教育の目的が明確なんだなと、あらためて感じました。

 

ではSTEAM教育が全てRISDで行われているのか?というと、近年学生はプログラミングも学習しているそうなので、近い部分もあるかとは思いますし、共通する方法はあるということなのですが、またちょっと別の話なのかと感じました。そこは私のテーマとして、継続して探究していきたいと思います。

 

↓関連記事


arts.hatenablog.jp

 

 


ジョン・マエダ氏が問い続けるシンプリイティ‐「シンプリシティの法則」

前回のブログでは、STEAM教育を提唱するジョン・マエダ氏をご紹介しました。

arts.hatenablog.jp

 

本日は、彼がMITで教鞭をとられていた頃に執筆された書籍をご紹介します。

 

◇シンプリシティの法則

 ジョン・マエダ氏 著 鬼澤 忍氏 訳(東洋経済新報社

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シンプリシティというのは、単純、シンプルといった意味です。

この本ではモノを中心として、それをシンプルに表現するためにはどのようなことが必要かについて、10の法則と、3つの鍵について、紹介されています。

 

執筆の時点で数年間、シンプリシティについて考え続けてきた氏が提言する10の法則は、デザインのルールを提示するというよりは、削減、時間といった10の切り口からシンプリシティとは何かを問いかけ、読者がそれについてともに考えられるような内容となっています。

 

詳細については本書を読んでいただきたいのですが、私が一番面白いと思ったのは「学習」の部分です。シンプルな道具を可能にしているのは、使う人の知識なのではないか、という問いかけがありました(あの身近なシンプルな部品を見ただけで、なぜ右に回せば良いとわかるのか?それはその前に学習しているから!)。ほんと、まさにそうですね。シンプルなデザインは、「人間だけにとって」シンプルなデザインであり、そこには、ターゲットとなるユーザーが何を知っているのかとか、どう反応するのかが、織り込まれているんだなあと。

 

そこから展開される学習のステップ

―学生の理性のニーズを満たすために、(やけをおこさないことによって)安心し、(基礎をマスターすることによって)自信を持ち、(反復を通じて成熟することによって)直感を磨く

も、RISDの教育につながっているんだなあ、とても興味深かったです。

別の章では、心理的なアプローチもあり、こちらも面白かったです。

 

マエダ氏のスピーチで、「デザイナーやアーティストは人間についてよく知っている」という表現が出てくるのですが、それはニーズやコミュニケーションだけでなく、もっと本質的な人の部分にも触れているのかもしれないなあと思いました。

 

また問いが問いを生むようにシンプリシティについて問い続け、それを分かりやすく分類してくれるジョン・マエダ氏のデザイン力を、あらためて見せていただいたように思います。

「STEM to STEAM」をけん引する John Maeda 氏とRISDについて

こんにちは。清水葉子です。

いよいよ夏休みも終盤ですが、みなさまはどのような夏を過ごされましたか?

私は先述しましたように暑さにまけていたのですが、それ以外で言いますと、アートに関する資料を読みあさっておりました。しかし英語の文章を読むのはなかなかスムーズに行かず、体力とともに英語力のアップを誓った夏でした。

 

さて、その中で、知れば知るほど魅力的な人物と組織について書きたいと思います。ジョン・マエダ氏と、RISD(ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン)についてです。

 

“Art and design are poised to transform world economies in the 21st century just as science and technology did in the 20th century. (サイエンスとテクノロジーが20世紀の世界経済を変えたように、アートとデザインは、21世紀の世界経済を変える)”

 

グラフィックデザイナーであり、ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン(Rhode Island School of Design=RISD:アメリカ合衆国の私立美術大学)の前学長を務め、STEM教育に芸術のAを加えたSTEAM教育の提唱者である、ジョン・マエダ氏の言葉です。

 

日系アメリカ人としてアメリカ合衆国で育ったマエダ氏は、マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology=MIT)工学部でコンピュータを学び、その後、筑波大学大学院で芸術を学びます。アメリカに戻りMITメディアラボの教授となり、その後RISDの学長に就任、2008年~2013年まで学長を務めた後、シリコンバレーベンチャーキャピタリストとして、スタートアップを支援し、現在は、WordPress.comの親会社Automattic(オートマティック)に所属という経歴をお持ちです。

 

サイエンス・テクノロジーとアート・デザインの両方の世界を経験された彼が発する「アートとデザインは、21世紀の世界経済を変える」という言葉には、とても説得力があると感じます。

 

STEMとは、アメリカ国立科学財団(National Science Foundation=NSF)がこれからの社会で身に着けておくべき力として、1990年代に発表したもので、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)

の頭文字を取ったものです。2013年には国家戦略となり、K-12(幼稚園から高校までの12年間)のカリキュラムもそれにそったものになっているようですね。

 

一方STEAMは、STEMに芸術(Art)を加えたもので、ジョン・マエダ氏がRISD学長に就任した2008年に発表され、前述のNSFなども巻き込んでK-12プランがつくられたり、政府に提言がなされていますが、未だ国家戦略とはなっておらず、STEAMに賛同した学校や企業、個人が様々な形で実践をしているという状況です。

 

中でもマエダ氏が強く主張をしているのは、アートやデザインは見た目を美しくするだけではなく、もっと経済やビジネスの中心にあり、なくてはならないものだということです。実際に、RISDからはAirbnbの創設者など多くの起業家が育っています。こちらのジョン・マエダ氏のプレゼンテーションにおいて、後半にリーダーシップとは何かを解説する部分があるのですが、このように全体の構造をとらえなおし、独自のフレームをつくりだすのにも、アートやデザインの力が使われているのだと感じます。

 

www.ted.com

 

先日翻訳本が出されたばかりの

ロードアイランド・スクール・オブ・デザインに学ぶ クリティカル・メイキングの授業―アート思考+デザイン思考が導く、批判的ものづくり」では、RISDの教育方法について詳細に紹介がされています。

 

www.amazon.co.jp

 

その中で私が感じたのは、RISDでは創造的問題解決の力をつけることを大切にしていて、そこにはわかりやすいプロセスがあるというよりは、多くの機会(失敗を含む)があるということです。大量のインプットをしながら、この方向性で良いのか、このコンセプトで良いのか、この手法で良いのか、この素材で良いのか、自分に問い続け、プロトタイプを繰り返す孤独なプロセスを得て、何かを生み出し、あらたな問いと向き合う。そうすることで、イノベーティブな力は育っていくのだと感じます。

 

先の書籍の中でファンデーション・スタディーズの准教授レスリー・ハースト氏が「私が何を望んでいるのかがわからない、と学生たちはよく言うが、彼らの解決策が私の要求に基づいていなければならないとでも思っているのだろうか(中略)自分で考えれば、この時点で答えより問いのほうが多くなり、私には思いもよらない場所に、彼ら自身がたどり着くだろう」と述べているのですが、こういう、自身と向き合う孤独な(本当は見守られている)時間は贅沢で、大切だなと、自身の経験を振り返っても、思います。こういう贅沢な時間、中高で取れないかなあ。。。

 

現在ジョン・マエダ氏は、1年に1度、「Design In Tech Report」を発表されていて、デザイン会社がTech系の企業やコンサルティング会社に買収されている(つまり必要とされている)ことを紹介したり、デザイナーが社会でどのように活躍しているか、どのような力が必要かなどを紹介しています。教育の世界から、卒業生達の仕事をつくりだす場所に、その立ち位置を変えられているようにも見受けられます。

 

www.slideshare.net

 

STEAM教育の広がり、アーティスト、デザイナーの立ち位置の変化、どちらの動きもとても興味深いので、引き続きウォッチして、あらためてご紹介していきますね。

サイエンスとアートの教育者が、STEAM教育についてともに考える場が、日本にもできるといいですね!

 

↓RISDホームページ

www.risd.edu

 

↓STEM to STEAMのページ

STEM to STEAM

データを視覚化する効果―地域経済分析システム「RESAS(リーサス)」について

突然ですが、みなさんは、データ、好きですか?

私は、大好きです。広報や入試関連の講座で登壇するときに、データ好きです!というと、ちょっと引かれてしまうことがあるのですが、ていねいに、十分な量が取られ、ぶれない、わかりやすい切り口で分析されたデータは、とても美しいです。

ただ、より多くの方にそのデータを理解していただくためには、それを視覚的にわかりやすく示す必要があります。数値も言語も最低限でぱっとわかる、それは、インフォグラフィックスとも言われますね。そこまではいかなくとも、きれいに整理されたグラフは、多くの人の理解を促します。

 

本日ご紹介するのは、見たいデータをわかりやすくグラフ化してくれる、

「地域経済分析システム RESAS」というサービスです。

 

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こちらは、経済産業省内閣官房が連携し、自治体による地方創生の取組を情報面から支援するために立ち上げられたシステムです。「地域経済分析システム(RESAS:リーサス)」 を提供しています。これまでe-Statや国立人口問題研究所、厚生労働省などがそれぞれ公表していたデータを集め、人口、産業、まちづくりなど、テーマごとに検索しやすくするとともに、そのデータの一部を、その場でグラフやマップにしてくれるというサービスです。オープンなホームページなので、誰でも見ることができます。

 

↓操作画面はこれです。該当データをまずマッピングしてくれて、その上でグラフとしても見ることができます。

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↓例えば、大阪府の人口増減率(2040年までの推計含む)はこのようなグラフであらわされます。

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↓こちらは、東京都の人口ピラミッド比較。左右の年代を個別に指定することができます(例えば左が1985年、右が2000年とすることも可能です)。

 

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↓こちらは、東京都の企業の業種別分類です。

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データによっては市区別に見られたり、他の自治体と組み合わせての表示が可能です。

 

地域創生のためにつくられたサービスなので、どうしてもその関連データが多いのですが、学校基本調査からの引用も一部あります。

 

↓こちらは、地元の大学への進学率をマッピングしたものです。

北海道、東京、愛知、福岡が地元進学率が高いのですね!

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↓またこちらは、大阪府流入進学者(大阪の大学に進学した人の出身地)、流出進学者(大阪からどの大学に進学したか)の県別内訳です。

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私は仕事柄、色々なデータ元からの数値を編集し、グラフ化するということは数多くやってきましたが、このように、色々な参照元からデータを集め、見やすいグラフにしてくれるサービスがあることで、より多くの人がデータを利用しやすくなると感じました。

そして、データを視覚化する効果というのはやはり絶大だと感じました。

 

学校、教育関係のデータがもっと増えることを個人的には願いますが、

現在のデータからも色々と参考になりますので、ぜひ一度ご覧になってみてください。

使い方を動画や小テストで学べるという親切な機能もついています。

 

resas.go.jp

 

ぜひご参照くださいね。

キャリア支援の再デザインで、働き方の未来を変えていく! ―関西大学+TSUTAYAによるスタートアップカフェ大阪の挑戦。―その2

前回のブログでは、関西大学さんの梅田キャンパスでの取り組みについてご紹介しました。今回はその環境づくりにフォーカスをしていきます。

 

↓前回の内容はこちらです。

arts.hatenablog.jp

 

「計画された偶発性(Planned Happenstance)」が起こりやすい環境とは

梅田キャンパスで開催されるイベントには、多くの起業家が登壇されるという話を、前回ご紹介しました。起業家を身近に感じてもらうことで、自分ももしかしたらできるかもしれない、やってみたい、という想いを学生たちが持てるようになることを大切にされています。

 

また、こちらで開催されたハッカソンに何度か参加して、プロジェクトをチームで進める楽しさを発見した学生もいます。彼女はもともとそれほど積極的ではないほうだったそうですが、大学でハッカソンのことを知り、プランナーとして参加してみて、大人も参加するチームで、色々な議論をどう進めるかを学び、その結果優秀賞を取ることができました。そう行った経験を通して自己成長を感じることができ、次の段階として、ハッカソンを主催しようと、企画中なんだそうです。

 

彼女が経験したような、自分が予想もしなかった想定外の出会いがあり、その結果自分の得意なことや、やってみたいことを発見したり選択することを「計画された偶発性(Planned Happenstance)」と言うそうです。スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が提案したキャリア論に関する考え方で、おそれず偶発性を求めて動くことがキャリア発見のコツだそうで、さきほどの学生さんの動きはまさにこれだと言えますね。

 

偶発性が起こりやすい環境をつくるため、スタートアップカフェで意識されているのは、

色々な立場の人たちが混じった状態をつくること。つまり「産学連携2.0」の状況だそうです。これまでの大学には先生(学)と学生がいて、教える、教えられるの関係性が明確でした。企業と大学の連携があったとしても、研究室単位の限定的なものでした。これからは、産=企業、官=行政、学=大学、金=金融、言=メディアが連携して、できるだけオープンにかつ多層的に連携することで、教える→教えられるの1方向ではなく、双方向で、ともに何かをつくっていけるようになる、というのが、産学連携2.0のねらいです。

 

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外部の人が入ってくる環境でこそ、新しい知見や予期せぬ出会いも得ることができる。起業の支援を受けに来る方も、別の側面では与える側になったりもする。そして梅田という、様々な人たちが集まる場所だからこそ、この環境をつくることができるそうです。

 

先日は梅田キャンパスのある北区をテーマに、北区の未来についてのフューチャーセッションが行われました。今後はますます多様な背景を持った方達がこの循環に参加されるようになるでしょう。

 

それもあり、他の起業支援機関と比べて、スタートアップカフェは相談のハードルを低くされているそうです。起業プランが明確でなくても、起業すると決めていなくても、なんとなく起業に興味がある、という段階からの相談もウェルカム!ということです(財前さんのファッションにはその雰囲気が表現されているそうです!)。スターバックスに来て、またはTSUTAYAに来て、スタートアップカフェを見つけ、立ち寄られる方もいらっしゃるそうで。コーディネーターのみなさんが優しく相談に乗ってくださるので、興味をお持ちの方はぜひ、行ってみてください。

 

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今回取材をさせていただいて感じたのは、スタートアップカフェの目的の明確さと、それを実現するための方法の柔軟さが同居している面白さです。

 

自己のキャリアを考えるにあたり、起業という選択肢を加えること、産学連携2.0を形成することで、キャリアの偶発性を起きやすくすること、が、スタートアップカフェ大阪の目的です。それを実現するにあたり、最初から方針を決めすぎていると、広がりが生まれないと財前さんはおっしゃいます。財前さんの人脈もとても広いのですが、その範疇でのセッティングだけでなく、さらにその外側の弱いつながりをたどっていくことで、新しいネットワーク、新しい機会が生まれ、好循環をもたらすそうです。

 

この、グリップしておく部分と手放す部分のバランスが、スタートアップカフェ大阪を成功に導いていくのでしょう。今までなんとなく面白そう、良いな、と感じていたこの場所の、何が良いのかが理解でき、さらに良いなあと感じることができました。

 

学生の将来を真剣に考えられる大学って、本当に素晴らしいと思います。

財前英司さん、お忙しいところご対応をいただき、ありがとうございました!

 

startupcafe-ku.osaka