ジョン・マエダ氏が問い続けるシンプリイティ‐「シンプリシティの法則」
前回のブログでは、STEAM教育を提唱するジョン・マエダ氏をご紹介しました。
本日は、彼がMITで教鞭をとられていた頃に執筆された書籍をご紹介します。
◇シンプリシティの法則
ジョン・マエダ氏 著 鬼澤 忍氏 訳(東洋経済新報社)
シンプリシティというのは、単純、シンプルといった意味です。
この本ではモノを中心として、それをシンプルに表現するためにはどのようなことが必要かについて、10の法則と、3つの鍵について、紹介されています。
執筆の時点で数年間、シンプリシティについて考え続けてきた氏が提言する10の法則は、デザインのルールを提示するというよりは、削減、時間といった10の切り口からシンプリシティとは何かを問いかけ、読者がそれについてともに考えられるような内容となっています。
詳細については本書を読んでいただきたいのですが、私が一番面白いと思ったのは「学習」の部分です。シンプルな道具を可能にしているのは、使う人の知識なのではないか、という問いかけがありました(あの身近なシンプルな部品を見ただけで、なぜ右に回せば良いとわかるのか?それはその前に学習しているから!)。ほんと、まさにそうですね。シンプルなデザインは、「人間だけにとって」シンプルなデザインであり、そこには、ターゲットとなるユーザーが何を知っているのかとか、どう反応するのかが、織り込まれているんだなあと。
そこから展開される学習のステップ
―学生の理性のニーズを満たすために、(やけをおこさないことによって)安心し、(基礎をマスターすることによって)自信を持ち、(反復を通じて成熟することによって)直感を磨く
も、RISDの教育につながっているんだなあ、とても興味深かったです。
別の章では、心理的なアプローチもあり、こちらも面白かったです。
マエダ氏のスピーチで、「デザイナーやアーティストは人間についてよく知っている」という表現が出てくるのですが、それはニーズやコミュニケーションだけでなく、もっと本質的な人の部分にも触れているのかもしれないなあと思いました。
また問いが問いを生むようにシンプリシティについて問い続け、それを分かりやすく分類してくれるジョン・マエダ氏のデザイン力を、あらためて見せていただいたように思います。