北欧の図書館から、これからの学びの場を考える

みなさまこんにちは。清水葉子です。突然ですが、みなさんは公共図書館をどのくらい利用されますか?そして、その利用目的は何ですか?

私は、公共図書館の徒歩圏に住んでいることもあり、年間5回か6回、つまり2か月に1回くらいは利用しています。その目的は9割がた、インターネットで本を予約して、その予約本を受け取りに行くというものです。(横浜市の図書館は、そこになければ市内の他の図書館から取り寄せてくれます)。小学生の娘と年に1回くらい行きますが、彼女は学校図書館で満足しているので、あまり利用していません。1回の滞在時間は手続きだけなので、5分くらいでしょうか。

 

前置きが長くなりましたが、最近「フィンランド公共図書館 躍進の秘密」という本を読みました。私が知っている図書館の活用方法と色々異なる点があり、面白かったので、紹介させていただきます。

f:id:yShimizu:20191230131641j:plain

 http://www.shinhyoron.co.jp/978-4-7948-1139-4.html

 

 

まず、驚いたのは、図書館の利用率です。フィンランドの人口は、約551万人(外務省より2018年12月末時点)なのですが、図書館の利用率はのべ5000万人!!!(本書より、2018年のデータ)国民1人あたり年間10回の利用です。また、貸出数は8500万点で、1人当たり年間15冊超え(本書より、2018年のデータ)とのことでした。ちなみに、調べてみたのですが、横浜市の人口は、約375万人(自治体HPより2019年のデータ)なので、ざっくりフィンランド全体の7割。横浜市の2018年度ののべ入館者数は、約743万人で、1人あたり2回の利用、貸出数は約893万冊で、一人あたり、2冊強でした(図書のデータは、「横浜市の図書館 2019」より2018年度のもの)。

 

私は、横浜市民としては図書館を利用しているほうで、フィンランドの人と比較すると、利用していないようですね。

 

この理由として、いくつか日本と違う状況があったので、本書より、箇条書きで引用させていただきます。

 

学校図書館を、公共図書館で代替している場合もある

・図書館が、生涯学習の機会提供の場として機能している

スマートフォン、PC等の利用サポートがある

・移民のためのサポートがある

・一部の図書館には、メイカースペースや、音楽スタジオもある

・コンピュータゲームができる図書館も多い

・工具など、家庭で使用頻度が低いものは、図書館で借りれば良いという考え方がある

・貸出手続きなどはセルフで、司書は利用者の相談対応に時間をかける

 

これを機会に、同じく著者の吉田右子さんが書かれている

「読書を支えるスウェーデン公共図書館

http://www.shinhyoron.co.jp/978-4-7948-0912-4.html

デンマークのにぎやかな公共図書館

http://www.shinhyoron.co.jp/978-4-7948-0849-3.html

「文化を育むノルウェーの図書館」

http://www.shinhyoron.co.jp/978-4-7948-0941-4.html

 

を読んでみたのですが、違う部分もありながらも、生涯学習の拠点であること、図書という枠にとどまらず、文化、情報全般のサポートをしていること、結果として移民、子ども、お年寄りも含む、全ての人たちが、とりあえず図書館に行って相談してみよう、という流れができていること、図書館自体が、文化的な拠点となるため、利用率の向上を目指していることがよくわかりました。

 

これらの国は、フィンランドノルウェーデンマークの人口が500万人台(ざっくり、横浜市川崎市の合計人口くらい)、スウェーデンの人口が1,000万人ちょっと(東京都の人口よりちょっと少ないくらい)なので、経済規模が違い、メディアやスタジオレンタルなど、ビジネスとして成立しにくいところを行政でカバーしているのかもしれませんし、行政サービスを分けずに、図書館に集約するという流れがあるのかもしれません。でも、細分化しすぎず、図書館が文化というフィルターで包括することで、とりあえず相談できる場所となり、大人になっても学び、仕事の拠点となることが、できるのかもしれないと感じました。紙の書籍から電子書籍に移行し、図書館の利用方法も変わっていきそうですが、図書館が無くなるのではなく、司書の方達のあり方や、場の作られ方が変わりながら、図書館が必要な場として残る可能性も大いにあるんだなあと感じましたし、そういう機能として求められる図書館であれば、私は運営に関わってみたいと思いました。

 

生涯学習も含めた、これからの学びの場について考えたい方には、ご一読をお勧めします。「フィンランド公共図書館」には、昨年開館したオーディ図書館についても詳しく紹介されていますよ。

 

北欧の図書館についてとてもわかりやすくまとめて紹介してくださった、著者の吉田右子さんに感謝いたします。

 

#学びの場 #フィンランド公共図書館  #オーディ図書館