「ものづくりの壁」を超えると見えてくるもの―道用大介先生インタビューその2

みなさまこんにちは。清水葉子です。今回は、神奈川大学の道用大介先生に伺ったお話の続編をご紹介します。

その1はこちらをご覧ください。

http://arts.hatenablog.jp/entry/2019/11/30/223536

 

さて、前回も学生さん達の作品を紹介しましたが、加えていくつか紹介させていただきます。これらは、2019年8月30日~9月4日、江の島にある Gallery-Tで行われたFAB作品の展示会「デジタルファブリケーションが切り拓く、新しいモノ作りのカタチ」で見せていただいたものです。

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会場の様子

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楽器のマス・カスタマイゼーションを目指してミリングマシンで木を直接切り出して作った楽器(ベース)

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「魚」の文字がつながった状態で3Dプリントされた「の れん」のパーツ

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「魚」の文字がつながった状態で3Dプリントされた「の れん」

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レーザーカッターで切ったパーツを組み合わせることでつくられた服

私は、FABの機器でつくれるのは試作、という認識が強かったのですが、そのまま実際に使えるものができるんですね!今回展示会を見せていただき、その発想力と完成度の高さには本当に驚かされました。

 

「理系の、とくにものづくりに普段から関わっている学生にとっては、FABは一つの道具というか、まあそうなるよね、というような感じで、そんなに驚きや感動はないんです。でも、文系の学生達は違いますね。FABを使うと、時代の最先端のものづくりに関われる、という認識もあるのでしょう。明らかにモチベーションが上がります。今の文系の学生達は、なんでもコンピューターの中で調べ、つくり、完結してしまう傾向にあります。インターネットで情報を集め、プランをつくり提案、それで考えた気になってしまうのですが、実用化できないアイディアも多いです。FABの機材を使って実作してみてはじめて、彼らは手を動かしながら考えるということができるようになります。なんでもWebで済ますのではなく、リアルなものづくりにつなげることで、日常生活や他の分野での思考の際にも、物事を疑ったり、根本から考えたりすることができるようになります。アイディアの発想ももちろん大切ですが、それを実際のプロセスに落とし、仕上げていくことも大切で、そこに手を動かしたことがある、考えてものづくりをしたことがあるという経験は、この先の様々なシーンで生きてくると思います(道用先生)」。

 

手を動かしながら考える、作りながら考える、というのは、それをやったことが無い人にとってみると、技術的にも、心理的にもハードルが高いものです。でも、ここを乗り越えて作りながら考えられるようになると、どのような分野でもその力を発揮することができるのです。

 

道用先生によると、アイディアを形にするメリットは、もう一つあるそうです。

「課題に取り組むプロセスの中で、問題発見の段階で出てくるアイディアは、他の人とそれほど違いがなく、同じようなアイディアなんですね。でもそれをアウトプットとして形にしていくと、どんどん違いが出てくる。個人のアイディアの輪郭があきらかになってくる。アイディアで終わるとみんな同じなのに、形にすると違いが出てくるところが、ものづくりの面白いところです(道用先生)」

 

道用先生の商品企画にFABを取り入れる授業は、2014年から行われていて、今年でもう6年目になるそうです。当初は3Dプリンタやレーザーカッターで何かをプリントするだけだったのが、機構や複雑な仕組みをつくるようになるなど、年々学生達のものづくりのレベルが上がってきているそうです。ファブラボを起点とし、学生さんたちにものづくりの文化が浸透してきているのということですね!

 

いかがでしたか?学生さん達が使われているファブラボ平塚は、一般の方の利用も可能なので、お近くの方、訪問されてみてはいかがでしょうか。

 

道用先生、お忙しいところお話を聞かせていただき、ありがとうございました!