「振り返ってみると、私たちはこの状況をポジティブに捉えることができたのではないかと思います」休校期間に見えてきた、生徒達の発表の場 サレジオ学院中学校・高等学校インタビュー 前編

 2020年は新型肺炎COVID-19蔓延に世界中が大きな影響を受けました。教育現場にも色々な影響がありましたが、中でも2月27日に政府より発表された全国小中高校臨時休校宣言により、多くの学校が、5月もしくは6月まで休校となりました。

 サレジオ学院中学校・高等学校横浜市都筑区:以下、サレジオ学院)でも、3月~5月の3か月間が休校となり、先生方も原則自宅待機となりました。3月上旬に予定されていた期末試験の問題用紙は課題として生徒の自宅に郵送され、春休みに予定されていた春期講習も、各教科の先生より課題が発信される形となりました。同校は以前より校内のICT化を進めていて、まだ配布が終了していない学年もありましたが、2020年3月中に生徒全員のGoogleアカウントが配布され、4月より、生徒全員がオンラインで学習ができる体制が整えられました。

「振り返ってみると、私たちはこの状況をポジティブに捉えることができたのではないか」という先生の言葉通り、新しい形での授業継続に加え、生徒さんたちの発表の場もさまざまな形で準備をされた先生方。具体的な取り組みについてお話をうかがいました(取材:2020年7月)

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休校期間中のオンライン学習の状況を教えていただけますか

森田先生:オンライン学習を開始したのは、4月からです。3月中は、どのように新年度の授業を進めるか、教員が学年ごとに話し合いました。端末の配布が終わっていない学年ではリアルタイムのオンライン授業をするのは難しいという結論になり、基本的には


・各授業担当の教員が作成、配信した授業動画を視聴
・教員が出した課題をGoogle formを使って解答
・問題集など、紙の課題に取り組み、その写真を撮って提出
・教員からデータで配布された課題を、各自プリントアウトして解いて、その写真を提出


の4つのパターンで進めました。教材、動画配信は、Google Classroom(オンラインで、クラス単位で生徒や学習内容を運営・管理するためにGoogleが提供しているツール)を使って行いました。

 

高木先生:休校期間中は教員も在宅勤務だったので、授業の準備は学年単位のコンパクトな形で話し合い、進めました。それぞれの学年の生徒の様子は、その学年の教員がよくわかっていますから。オンラインでの授業やGoogle Classroomを使うことに慣れていない教員もいたので、Google Classroomの基本的な使い方と、それを使った授業の実践例の動画を作り、YouTubeで配信し、先生方に自宅で見てもらえるようにしました。教員全員が集まれない状況下で、この動画を視聴してもらうことが、教員研修の代わりになったと思います。この動画を一般公開したところ、チャンネル登録者数は約2700人となりました(2020年7月末現在)。他の自治体の教育委員会から研修で使わせてほしいと連絡をいただいたりもしています。

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高木先生のYoutubeチャンネル

オンライン上で授業や学習を進める上で、工夫されたことはありますか

森田先生:休校前も毎日、1日の学習時間や生活の様子を記録する「生活記録」を紙で行っていたのですが、休校期間中はオンラインで行い(担任から生徒達に質問を発信、生徒がそれに返信。全学年で実施)、特に学習時間等を詳しく聞くようにしていました。ただ、毎日同じことを聞いていると生徒達も飽きるので、担任からオリジナルの質問を投げかけて、反応を見ていました。例えば「コロナで自宅学習になったから、できるようになったこと」「自宅学習になって、あらためて感じた学校の良さ、学校でしかできないことは」などを聞いたところ、自宅学習で良かったととして「動画配信は、一度視聴してわからない部分は繰り返し見られるので基礎力がついた」という回答や「自分で学習を進めなければならないので、自主的に学習する力がついた」という回答がありました。逆に学校に行けないとつらく感じる部分として「みんなで運動や部活ができない」という回答や「先生の授業中の雑談、余談が無駄な話に見えるようで実は学習にも大切だったと気が付いた」という回答がありました。、動画配信だと通常の授業よりも時間を短くし、教員も必要なことを手短に話す傾向にあるのですが、雑談が無いことで、集中力を持続させるのが難しかった生徒もいたようです。また「クラスのみんなの意見が知りたい」という意見もありました。

 

「クラスのみんなの意見が知りたいという」生徒さんの要望には、どのように対応されましたか

森田先生:学校での環境になるべく近づけるように、生徒が提出した課題を、生徒どうしができるだけ見られるようにしていました。生徒が提出したスライドは、ウェブ上のフォルダでオープンにし、コメントをつけることもできます。コメントをつけることを課題としたこともありました。

 

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Google Classroom上で生徒どうしがコメントをつけている様子

染谷先生:高校2年生でも動画と課題を配信し、生徒の提出物を見て生徒たちの理解度を把握するという形で進めていましたが、確認のためのテストをしてみると、生徒同士対話したほうが理解が深まるのではないかと感じる部分が出てきました。高校2年生は全員が端末を持っていたので、ライブの授業を4回行い、問題演習を会話、チャット機能を使って解く、ということを試しました。クラス全員で対話をする形で進めたので、理解が早い生徒が話しすぎる、ということもありましたが、逆にそれが刺激になったという生徒もいました。

 

高木先生:高校2年生は、教員不在でもGoogle Meetを生徒が自由に使って良い形にしていたので、集合時間を決めて集まり、お互いに質問しながら勉強をするなど、オンライン自習室として活用する生徒もいました。また、高校3年生は、毎回の動画配信の後に質問のフォームを設けて記入できるようにしていました。私の方でその質問を集めてQ&Aをつくり、全ての生徒にシェアすることで、生徒が他の生徒の状況を知ることができる、という仕組みです。倫理の授業で通常はディスカッションをする場面では、Google スライドを使って、1つのファイルを共有し、意見を書き込んで議論する方法で進めました。

 

下田先生:中学3年生はオンラインの朝礼を行い、自宅でも生活リズムを崩さずに過ごせる工夫をしていました。

 

森田先生:中学2年生は昼休みの時間に、クラスごとのオンラインスペースにアクセスしてもらい、担任も入った状態で、生徒がお互いに話せる場をつくりました。ただ、新年度で新しいクラスで、接点も少ないので、会話はなかなか弾まなかったですね。また、秋の文化祭に向けて、クラス企画の準備を進めなければならなかったのですが、学校で学級会が開けないため、まずはオンラインで企画の希望をとり、意見が集まってきたところで、生徒どうし、Googleスライドを使って、みんなのアイディアについて追加でアイディアを出してもらい、企画を進めていきました。

 

<後編はこちら>

arts.hatenablog.jp

サレジオ学院中学校・高等学校のウェブサイトはこちら>

www.salesio-gakuin.ed.jp

こちらの記事は、2020年10月に発行された ”私学の「これから」を創造する学校マネジメント情報誌:FORWARD”に清水が書いた内容の転載となります。