シンギュラリティは怖くない! 「超AI時代の生存戦略」から見えたこと

みなさまこんにちは。コアネット教育総合研究所の清水葉子です。 

昨年9月末より当ブログを始めまして、約9か月、記事数が先日50を超えました!もともと、アートがもっと教育に必要だ、という直感的な思いからスタートしたものですが、9か月たって・・・まださまよっています(^_^:)(というか、どんどん新しい世界が広がって、面白がっている段階なので、まとめたくないんです)でも、アートというひとつの問いを立てたことで、このブログをきっかけにたくさんの方とお話しさせていただいたり、さまざまな情報を得られました。掲載許可をいただいた方々、情報をくださったみなさま、そしてつたないブログを読んでくださった方々、本当にありがとうございました。まだまだアートについての旅は続けていきますし、教育にアートを追加していけるよう、情報発信とは別の形でも一歩踏み出せたらと思っています。

 

さて。本日は、これからの世の中にはアートがどのように必要になってくるのか?という視点で、メディアアーティストの落合陽一さんの書籍「超AI時代の生存戦略ー2040年代 シンギュラリティに備える34のリスト」をご紹介します。

 

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落合陽一さんは、「現代の魔術師」とも呼ばれる、工学系の研究者です。ものを非接触で動かしたり、空中に立体映像をつくりだしたりという、魔法のような研究とともに、これからのAI時代はどのような世界になるのか、などの発信も積極的にされています。テレビや、様々なメディアにも登場されているので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。

 

私も少し前から色々なシーンで拝見していて、未来について、とてもポジティブなとらえ方をしている方だな、と感じていました。特に、コンピュータ対人ではなくて、お互いできないことを補い合って、どうやって共存していくかを考えたほうが、楽しくないだろうか、という論調が好きでした。

 

本書でも、やはりそのことに触れらています。落合さんが恐れているのは、

テクノフォビア(テクノロジー恐怖症)とそれをあおるメディアだそうです。

 

テクノフォビアとは、これまでは技術革新、ネットワークを喜んできた人たちが、AIの登場に「次は自分の番なのではないか」つまり、自分達の仕事が奪われるのではないか、と恐れている状態で、テクノロジーを恐れるあまり、思考停止に陥ることが危険な結果を招くということです。そうではなく、機械やコンピュータの得意なこと、人間の得意なことを見極めながら共存していくことが大切だと落合さんは指摘します。

 

ではどうすれば良いのか、というところからが面白く感じたのですが、機械やコンピュータと人はどう違うのかと考えることは、つまり人間とは何なのかをもう一度捉えなおすということのようです。

 

例えば人間だけの特性としては、モチベーションや非合理性に基づいた趣味性、何かを信じること、暇つぶし、睡眠すること、抽象化して特徴量の差をとらえる能力などがあるそうです。コンピュータには限りなく透明になろうとする圧力があるそうで、非合理な部分や一見無駄と思われることは、苦手なのでしょう。それは複雑というのとは少し違って、飛躍とか想定外の組み合わせ、なのでしょうね。

 

そして今の時代が連続していくのであれば、結局サービスを受けるのは人なので、そういう非合理なことを受け入れたり、共感できるのは同じ人間、ということになりそうです。その上で、人だから人の側に立つとか、どちらが優位だ、というのではなく、「人間相手に発注するときは、モチベーションと結果と抽象化がすごく重要だけど、機械に発注するときは、具体的な指示が大事になる」「人間を動かす(プログラミングする)ための言語というのは人間のほうがうまく話せる」という落合さんのフラットな見方が面白いなあと思いました。

 

これからは、趣味=自分がこれが好き!という気持ち、どこから湧いてくるかわからないけれどもとにかく沸き起こってくるモチベーションを、それぞれが大切にしていくことが必要なのではないでしょうか。中高生くらいまでの子どもって、何かに熱狂したり、うかされることってありますよね。大人はそれに「落ち着きなさい」「まず勉強しなさい」と言ってしまいがちですが、実はそれを(それも)追求するところに、これからの生き方のヒントがあるかもしれませんね。それにはアートが重要な役割を果たすかも?というのは私の主観ですが、そんなことを考えながら読みました。

 

現実から目を背けるのではなく、現実をしっかりと見据えて、変化を楽しみながら時代に適応できるようになれば、きっと明るい未来がやってきますね。そう思える本でした。 

 

AI時代だけでなく、これからの世の中を生き抜くハックスも多く紹介されているので、中高生にもお勧めの本です。

 

www.amazon.co.jp

 

コアネットの夏のイベントCorenet New Education Fes2017(通称コアフェス)でも、落合さんにご登壇いただくことになりました。直接話を聞いてみたい方は、ぜひご参加ください。

Corenet New Education Fes 2017

子どもの主体性を伸ばす空間とは―学校建築計画セミナーより

みなさまこんにちは。

コアネット教育総合研究所の清水葉子です。

先日、大阪で開催されたNew Education Expo2017に参加させていただきました。興味深い内容が多かったのですが、その中から学校建築計画のセミナーについて、紹介させていただきます。

 

「アクティブ・ラーニングに向けての学校計画
~日本とフィンランドにみるクラスルーム・オープンスペース・メディアスペースのつくり方と使われ方~」というタイトルで、
大阪市立大学大学院 教授 横山俊祐先生
千葉工業大学 創造工学部 デザイン科学科 准教授 倉斗綾子先生
東京理科大学 理工学部 建築学科 准教授 垣野義典先生

の3名が登壇されました。主催者様のルールで写真は掲載できませんが、文章でご紹介しますね。

 

まず倉斗先生のレクチャーです。

日本の小学校では、1980年代からオープンスクールと呼ばれる、廊下側に壁がなく、教室と廊下の境界をあいまいにし自由に使えるスタイルが増えていたのだが、2000年頃までに一度衰退、でも今は学習スタイルの変化で広いスペースを使いたいという先生が増えてきたそうです。

 

一方で、使い方がわからない、他のクラスに迷惑をかけたくないなどの理由でオープンスペースをうまく活用できていない事例も多いのだとか。

 

そこで千葉のある学校で、学年全体で授業を展開する取り組みを行ったそうです。児童達は学年の教室、オープンスペースのあるエリア全体を使い、随所に配置された解説コーナー、答合わせコーナーなどを使いながら、自分のペースで学習を進めて行くというものでした。低学年では算数で、高学年では国語、算数の2教科20時間分を、自分で時間配分も考えながら取り組むという大規模なものでしたが、それぞれ取り組みは成功し、児童たちは各々のペースや空間の使い方で学習を進めることができました。現場の先生方も実際にやってみたことで、これからの活用の可能性が見えてきたそうです。

 

また別の小学校では、校舎内に、オープンスペースだけでなく、大、中、小といった大きさの違う空間を準備しておくことで、先生たちも使いやすく、児童たちも自分の場を見つけやすくなる工夫がされていました。

 

倉斗先生は、これからの学びのための空間として、

 

・児童生徒が学びを楽しむ

・興味関心を高める

・自分の学び方を見つけられる機会をつくってあげる

 

の3つのポイントを挙げられていました。

 

どれも重要なことですが、特に3つ目のポイントが個人的には特に印象に残りました。先生が生徒の様子を観察し、環境を設定することももちろん大切なのですが、生徒、児童一人ひとりが主体的に学びを進めて行くためには、それぞれが自分にとって最適な環境、学び方を見つけていくのが一番良いですよね。

そのような「学び方を選べる」を空間でつくりこむことで、小学生のうちに学校で試行錯誤ができる、というのは、とても重要なことと感じます。

 

続いて垣野先生のレクチャーでした。

北欧を中心に、学校建築の調査をされている垣野先生。フィンランドの小学校の授業から、日本の授業のあり方を問い直してくださいました。

 

フィンランドでは2010年より「Finnish School on the move」というスローガンがあるそうです。座りっぱなしの授業ではなく、動きのある授業を目指し、教室ではスマートボード(電子黒板)と実写機(書画カメラのようなもの)が大活躍。生徒も1人1台タブレットを持っています。

 

また、フィンランドでは教室内に、勉強をする雰囲気が満ちていて、そこには先生が寄与するところが大きいようです。例えばスマートボードの登場で板書が必要なくなった先生達は、ほとんどの時間、体の正面を生徒のほうに向けていること、タブレットの活用で、先生が見ているものと生徒達が見ているものの目線を合わせること、日本のようにどの教室でも同じ掲示(ルールと生徒作品など)ではなく、学習に必要なものを掲示したり、家のような雰囲気をつくったりしていることなどです。さきほど書いた勉強をする雰囲気は決して固いものではなく、その中で生徒達が空間や学び方を自由に試行錯誤できるようになっているようでした。

 

また、フィンランドでは45分の授業時間内にペアワーク、グループワーク、レクチャーなど、たくさんのアクティビティが組み込まれているのも特徴だそうです。これをすることで、生徒の集中力が途切れないかつ、色々な学び方を体験し、自分にあったやり方を選択するきっかけになっているそうです。

 

最後に、垣野先生から日本でも再検討すべき3つのキーワード

 

・板書の意味

・教室の壁の役割

45分の使い方(授業のテンポ)

 

を挙げていただきました。

この中では特に、壁(掲示)についてはっとさせられました。どの学校でも、そして自分が小学生の時からほとんど変わらない、そして先生が決めたものを掲示する壁。これを生徒が選択できるようにすることは、自分達の場づくりの練習になるのではないでしょうか。

 

最後に、横山先生のコーディネートでディスカッションが行われました。

 

今回このお話をうかがい、これまで私が(勝手に)いだいていた、建築計画の認識が変わりました。活動に適した空間の大きさの定義や、集団のアクティビティから傾向を探るのが建築計画だと思っていました。

 

もちろんそのような側面もあるのでしょうが、集団や傾向だけでなく、生徒、児童一人ひとりの個性にフォーカスし、一人ひとり違うということを前提に、観察、分析を行われているところや、先生ではなく生徒、児童の手に空間をゆだねることを理想とし、それをすることは本当に生徒を主体的、アクティブにすることだ、と定義されていること。どちらも研究者の立ち位置は、子どもが学校の主役で、空間と現場の先生方が子ども達の成長をどう助けるか、というところになっていて、これは本当に大切なことだな、と思いました。また、学びはもちろん、生活の場としての空間についても、自分がしっくりくる空間を試行錯誤できたら、その後の人生にとても役立ちそうです。

 

ネット環境の充実で、どこでも学べるようになった今、学校という学び舎は必要?という議論もありますが、やはりリアルに集まる場を体験し、そこから学ぶことは多いなあ、とあらためて感じました。

 

先生方、貴重なお話をありがとうございました。

描くとわかることがある!―ラクガキコーチ、タムラカイさんのワークショップ

みなさまこんにちは。コアネット教育総合研究所の清水です。

突然ですが、みなさんはラクガキが好きですか?ラクガキとまで行かなくても、何か相手に伝えたい時にそれを絵にしてみたりすること、ありますか?

個人的には大人はラクガキをする人と、しない人の大きく2つに分かれるなあ、と思います。あ、あたりまえ?でも、子どもはほぼみんな、ラクガキするような気がしますね?

 

さて先日、「ラクガキコーチ」タムラカイさんのワークショップに参加してきました。タムラさんは、デザイナーで、イラストも描かれています。さらに、話し合いの内容を同時進行でものすごいスピードで絵にしていく、グラフィッカーでもあります。ご自身で描かれるだけでなく、より多くの人に絵を描いてほしい、という思いで、ラクガキのコーチをされています。

 

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タムラさんもやはり、大人になると絵を描かなくなる人が多くなる、と考えられています。「絵ごころが無いから」と言う人が多いけど、絵ごころとは、絵を理解したり絵を描きたい!という気持ちのことなので、絵心の無い人はいない!と断言。とはいえ、しばらく絵を描いていない人のために、表情を描くためのフォーマットを紹介してくださいました。

 

それが、こちらです。(清水が再現しているので、クオリティはご容赦ください(笑))

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丸い顔の輪郭に、5種類の口、5種類の目、4種類の眉毛を組み合わせることで、なんと100通りの表情が描ける!

 

しばらくみんなで、組み合わせをつくって名付けてみました。

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たしかに、単純なパーツの組み合わせで、色々な表情が生まれますね。これを、感情を表すグラフィックという意味で「エモグラフィ」というそうです。説明資料にエモグラフィを使うことで、内容が伝わりやすくなるのは、やはりエモグラフィ―によって情報量が増えるからなのでしょうね。

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エモグラフィ―は、説明、プレゼンだけでなく、アイディアを出す時にも使えるそうです。例えば保険についてのブレストをする時、文字だけだとちょっと固くなってしまいますね。これは、言葉で考えると言葉に出来ている範囲でしか発想できないからだといいます。

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それをさきほどのエモグラフィーを使ってやってみると?

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感情が出やすくなるんですね!

顔アイコンを入れることで、ユーザーのことを無意識に考えられるようになり、そこから思わぬ課題を発見できるようになるそうです。この時のセリフは、安い映画みたいなセリフを書く(思っていることは全部口に出す感じ)のがポイントだそうです。

 

ワークショップの最後に、神戸で開催されたイベントだったので、みんなで「エモーション神戸」をやりました。

 

清水が描いた「エモーション神戸」はこんな感じです。

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他の参加者の方も「神戸は美人が多いなー」とか、文字だけでは絶対に出てこないような言葉が出てきていて、面白いなあ、と思いました。

 

ラクガキのしかたをいつのまにか忘れてしまった人は、ここからラクガキを再開してみるのが、良いのではないでしょうか!言葉では言いづらいことをエモグラフィにこめるのも、いいですね。

タムラカイさんは書籍も出されていますので、参考になさってください。

 

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タムラカイさん、楽しいワークショップを、ありがとうございました。

 

↓タムラカイさんのラクガキライフホームページはこちらです。

happyrakugaki.com

巨大オブジェ?スポーツクライミングの3つの壁を持つ、常翔啓光クライミングウォール

みなさまこんにちは!コアネット教育総合研究所の清水葉子です。先日、大阪府枚方市にある、常翔啓光学園中学校・高等学校にうかがいました。

全くの別件でおうかがいしたのですが、入り口にこのような案内があり、一体これは?と用件そっちのけで教頭先生を質問ぜめにしてしまいました(すみません。。。)

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そして、5月19日に行われた、オープニング式典を取材させていただくことができました!

 

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まず、安全祈願祭がとり行われ、安全が祈願されました。右手に見えるのが「リード壁」左手が「スピード壁」。ともに世界大会の基準を満たしているそうです。リード壁の裏側に「ボルダリング壁」があります。クライミングウォールにはこの3種類があり、このように3種類が一体となった設備は、なんと全国初だそうです!

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遠景です。ウォールの高さは15mを超えていて、グラウンドに巨大なオブジェができたようです。

 

続いてオープニングセレモニー。理事長先生、校長先生、来賓祝辞の後、

ワンダーフォーゲル部の生徒さん、卒業生、顧問の先生による、ウォール試登が行われました。まずはリード壁。ボルダリングの4倍以上の高さの壁を、体につけたロープを壁に固定しながら登ります。下ではビレイヤーと呼ばれる役割の方が命綱となるロープを持ちます。

 

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この高さ!と傾斜!見ていてはらはらしましたが、生徒さん達はしっかりとした足取りで登っていました。

常翔啓光学園ワンダーフォーゲル部では、20年前からスポーツクライミングを行われていて、多くの優秀な成績を収められているそうです。

 

続いてスピード壁。こちらはまっすぐ登るものです。10数秒でするするっと登っていく姿にびっくりしました!

 

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吹奏楽部の生徒さん達も、音楽でクライミングを盛り上げます。クライミングは、何か音楽をかけながら行うのが、一般的だそうです。

 

試登はここまででしたが、セレモニー終了後、枚方市長、そして校長先生が、ボルダリング壁を登られていました!マットはあるとはいえ、すごいチャレンジです!でも、この壁は登ってみたくなる魅力がありますよね!

こちらのウォール、ワンダーフォーゲル部の生徒さん達はもちろん、体育の授業でも使われるそうです。

<左が市長、右が校長先生です>

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ボルダリングのウォールは以前から校内にはあったものの、広さも十分でなかったそうです。この壁が完成するまでには、予算の問題、法令の問題など、色々な「壁」があったそうですが、生徒達になんとか良い練習環境を用意したいという、顧問、部長の先生方の熱い想い、周囲の先生方の協力でその壁を乗り越えることができ、ついに完成しました。

そしてこの建設が決まったあと、スポーツクライミングがオリンピックの種目に採択されたそうです。これからますますクライミング人口が増えることが予測されますね。常翔啓光学園では、スポーツクライミングの発展のため、校外の方も大会や強化合宿ができるようにされるそうです。

また、文化祭等で、初心者向けのクライミング体験ができるそうです。

体力、筋力はもちろん、登りきるという精神力、先を読む力、知識、相手を信頼する力など、様々な部分が鍛えられるクライミング。一度トライしてみては、いかがでしょうか!

 

完成までの動画は、こちらから見ることができます。

www.youtube.com

 

常翔啓光学園さんのページはこちらです。

常翔啓光学園中学校・高等学校

第3の居場所としてのアート:アートセラピーと「自由創作アトリエ はらっぱ」

みなさまこんにちは。コアネット教育総合研究所の清水葉子です。先日、大阪府茨木市にある「自由創作アトリエ はらっぱ」にうかがいました。こちらを主催されている桑原則子さんは、子ども達の指導に加え、大人向けの絵手紙教室の開催や、アートセラピーの実施もされています。今回は、「アトリエはらっぱ」の見学とともに、アートセラピーについて、桑原さんがアートから受けた影響ついて、お話をおうかがいしました。

 

「自由創作アトリエ はらっぱ(以下アトリエはらっぱ)」は、3歳~中学生までが通っている絵画、造形教室です。教室は月2回で、かく日、つくる日が1回ずつ。それぞれに、テーマがある日と、自由制作の日があります。

 

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見学させていただいたのは、テーマ制作の日。母の日が近かったので、お母さんのプレゼントにもできる、UVレジンを使ったアクセサリーづくりをしていました。

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テーブルの上にはビーズやシールなど、たくさんの材料が。それを台座の上に、自由に組み合わせていきます。

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もくもくと取り組む子、「ここどうしよ」「先生こういうのない?」などと話しながら取り組む子と様々ですが、桑原さんは特にこうしなさいとは言わず、子ども達を見守ります。

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出来上がった作品にはUVレジンを流し込み、UVをあてる機械に入れて少し待つと完成です。

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お母さん、喜んでくれそうですね!

 

 

制作が終わると、自由な時間。絵を描いたり、制作をしたり。内容も、描く場所も、フリースタイル。子ども達はそれぞれ好きなスタイルで、楽しんでいました。

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アトリエには色々な画材が。本もたくさんあります。

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自由制作の日は、色々な画材や材料を使い、自由に表現できるそうです。

<自由制作の様子>

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桑原さんの子ども達への声かけは、とてもフラット。作品や制作についてのアドバイスを桑原さんからすることはほとんど無く、質問があったら答える、というスタンスです。逆に「ゴールデンウィークどこにいったん?」「あの映画見た?」といった日常に関する問いかけが多く、話したい子は色々なことをおしゃべりしながら作業を進めています。

 

見学にうかがう前、先生に技術を教えてもらうというスタイルをイメージしていた私は、不思議な印象を持ちました。でも、子ども達はとてもリラックスした様子で、自分達でどんどん手を動かしていきます。なぜか?その秘密は、「アトリエはらっぱ」のコンセプトにありました。

 

 

「アトリエはらっぱ」には、アートセラピーの要素が多く取り入れられています。まず、アトリエでは、自分が思うペースで、好きなことをする時間を持つことができます。黙々と取り組んでもよいし、おしゃべりしても良い。という場は、ありそうでないのではないでしょうか。そして、そのような場で、生徒達は次第に自分の思うように動けるようになっていくそうです。また、上手な作品をつくることが目的ではなく、ありのままを表現することが、こちらでは大切にされています。だから桑原さんは「ここをこうしたら?」とは言わず「ここはどうするの?」と聞くそうです。

 

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それは、「はらっぱのおやくそく」にも表れています。邪魔されない、評価されない場で、最初は何をすればよいかわからない子どもも、だんだん自分の表現ができるようになるそうです。「アトリエはらっぱ」に通っている子ども達は、もちろん最初は絵が好き、工作が好き、というきっかけなのでしょうが、学校でも家でもない、第3の居場所として、この場所を必要としているのではないかな、と感じました。

 

「絵を描く人は長生きする人が多い」が桑原さんの持論です。なぜなら絵を描く人は、自分の内面をぶつける先があるから。絵は上手い下手は関係なく、描くことで発散できるものだそうです。実はこれを使ったのがアートセラピー(絵画療法、色彩心理)と呼ばれるもので、言葉にできない気持ちを、絵を描くことで表現し、それによって自分の気持ちを整理したり、その絵を介して相手との対話を可能にするそうです。桑原さんはアートセラピストとしても活動されていて、今年は、子育てに悩んでいる方の訪問アートセラピー事業も始められるそうです。

 

何かについて悩んでいる人は「絵を描いている場合じゃない」と考えてしまいがちですが、そのような時こそ、絵を描くことで気持ちの整理ができたり、リラックスできることもあるとか。

 

確かに、大人になると、下手だと思われるのが嫌という気持ちが出たり、苦手意識が出てしまい、だんだん描かなくなってしまいます。でも、絵のうまい下手は関係なく、描くことで発散できるものだとしたら。そしてそれが長生きにつながるものだとしたら!描かない手は無いのではないでしょうか。アートが人に与える影響の大きさについて、あらためて考えさせられました。

 

そして、桑原さんご自身の人生にも、アートは大きな影響を与えています。

くわしくは、桑原さんのブログをご覧いただきたいのですが(最後にリンクを貼っています)、子育てをしながらもアートを生活の一部としてお持ちだった桑原さんが、あるきっかけで絵画療法という言葉に出会い、これだ!と思い、2年をかけて学び、ご自身のライフワークにされた、というお話からは、アートによって自由になったり、生きる目的を見つけられるということを、桑原さんご自身が体現されているんだなあ、と感じることができました。

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桑原さん、お忙しい中アトリエを見学させていただき、また、インタビューをさせていただき、本当にありがとうございました。アートがある人生は、やっぱり良い!

 

ameblo.jp

IoTスタートアップの面白さと可能性ー小笠原治さんの講演より

みなさまこんにちは。コアネット教育総合研究所の清水葉子です。

先日、ITis KANSAIさんの46回目の講演会に参加させていただきました。

ITis KANSAIさんは、関西のIT業界を盛り上げるためにつくられた組織で、来月で5周年を迎えます。今回の講師は、小笠原 治さん。さくらインターネット株式会社の共同創業者で、DMM.makeABBALabなど、様々な形でスタートアップ支援をされている方です。

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福岡市の創業特区指定、スタートアップの支援にも関わり、現在も、福岡、東京のスタートアップ複数社に投資をされています。

小笠原さんが投資をされる先は、PC、インターネットの中だけで完結するもの、アプリやゲームの開発オンリーではなく、IoTのスタートアップが多いそうです。そしてその中でも広義のIoT、モノとコトをつなぐことで、生活が変わっていくものに、投資をされるそうです。

 

IoTとは、PCスマートフォン以外のモノをネットワークにつなぎ、データの取得や命令をして、これまでに無かった動き、サービスを生み出すことです。その流れにはなんらかの物体が介在することになります。

 

DMM.makeにはモノづくりの環境が整っているため、まさにIoTのスタートアップに適している、と言えるでしょう。年間8000人が利用し、VRや犬の心拍数で犬の健康状態を知るサービス、物理的鍵を無くすスマートキーなど、2年半で70社のスタートアップが生まれたそうです。DMM.makeの目的はスタートアップを立ち上げる際に障壁となる「お金」「仲間」「設備」を提供し、支援するとともに、出来ない言い訳を取り払い、背中を押す役割も果たされているそうです。

 

akiba.dmm-make.com

 

何か製品やサービスを生み出し、量産体制に入る時、資金調達をするスタートアップが多いのですが、5億円以上の資金調達ができるのは、女性が多いそうです。小笠原さんは、目的型といってやりたいことがはっきりしているタイプの人が多いからではないか、と分析されていました。

 

また、イノベーションを起こす際には、ノリや空気感も重要だそうです。つまり調子に乗って世界を目指すとか、言っちゃったほうが良いそうです。東京と地方を比較すると、その空気感に違いがあり、東京はうかれているので、例えば世界を目指すと言いやすい雰囲気があるそうです。福岡市にもその雰囲気はあるそうです。もちろんシリコンバレーにも。私もイノベーションIoT関連のセミナーに参加させていただくと、そういう場は実際に起業された方々、また、起業をしよう、という方々のチャレンジングな雰囲気が満ちていて、根拠も具体策もなくても、「何かにチャレンジしてみたい」「やってみれば何かできるんじゃないか」という気持ちに自然となってしまうことがあります。こういう空気は積極的に読みにいったほうがいいのかもしれませんね。

ただ一方、東京やシリコンバレーにはロールモデルがありすぎるそうです。本当に新しいことを始めるには、ロールモデルがいないほうがやりやすいこともあるそうで。そのバランスは、なかなか難しいですね。

 

生活を変えていくIoTとはどのようなものなのか。ある運輸会社の例を教えていただきました。

 

ある運輸会社から、事故が起きてからの検知ではなく、事故を起こしやすい状況の検知をして、ドライバーの安全性を高めたいという依頼があったそうです。そこで考えられたのは、センサーを使った心拍数の感知とその分析。眠気や興奮は、心拍数の測定である程度読み取れるそうです。センサーをトラックに取り付け、ドライバーの心拍数を測定。そのデータを収集し、傾向を分析することで、それぞれのドライバーが眠くなりやすい状況を把握し、休憩などを計画できるそうです。デバイスによる情報収集が、仕事環境の改善につなげられているんですね。

 

ABBALabの定義するIoTについても教えていただきました。

 

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Internet(インターネット)、Device(装置、機器)、Things(モノ、事)に分け、

それをInputLogicOutputという視点で解説をしていただきました。

特にThingsの部分で、どんなデータを取り(Input)、どんなフィードバックをするのか(Output)という行為の間には、それをすることによる価値や対価が(Logic)があり、その部分をきちんと考えるのがIoTをやっていくうえで大切なことだそうです。

先の宅配ドライバーの件で言えば、「ドライバーの心拍数を分析することで、事故が未然防げる」の部分がLogicになりますね。

 

小笠原さんのご著書「メイカーズ進化論」でもおっしゃっているように、IoTはモノのインターネット化だけではなく、「モノとコトのインターネット」で、まさに「モノ」が「モノゴト化していく、サービス化していく」のだなあ。と実感しました。

 

また、さくらインターネットで昨年より提供されている、sakura.io

通信モジュールをデバイス(もの)に組み込むことにより、デバイスを比較的簡単にネットワークにつなぐことができ、その目的であるデータ取得などがしやすくなります。

 

sakura.io

 

IoTの開発者が、デバイスをインターネットにつなぐ技術に労力を取られず、Logic、価値や対価の部分に時間を使えるように、ということですが、これはDMM.makeのセッティングと同じく、スタートアップの背中を押すものになっていますね。

 

小笠原さんは、「誰かが思いつきそうなところにリンゴを落とすのが僕の仕事」とおっしゃっていましたが、小笠原さんこそ、イノベーションが起こる場という、大きな環境を発明されているんだと思います。

 

講演後、中高生へのメッセージとして「起業して失敗することにリスクはありますか」と質問させていただきました。「企業で言われた通りに動くほうがリスクがあると私は感じます。それに失敗ってそんなにこわいものではないと思いますよ。高校生にもスタートアップのチャレンジはできるし、学校の中でたくさんの失敗が積めると良いですね」というお話しをいただき、なるほどなあ、と思いました。

 

IoTの開発に関していえば、今はまだやりつくされていない状況で、新しいサービスが生まれる可能性があるとても面白い時代なのだと思います。

中高生のうちから調子に乗ってやってみるというのは、最終的にどんな進路を選ぶにしろ、楽しいチャレンジではないでしょうか!

 

自身と向き合う美術の授業―関西大倉中学校・高等学校 その4 渋谷信之先生インタビュー

みなさまこんにちは。コアネット教育総合研究所の清水葉子です。

先日、関西大倉中学校・高等学校の美術室の環境、授業についてお伝えしてまいりました。最後に、美術のカリキュラム統括もされている、渋谷信之先生にお話をうかがいました。

 

「自分には美術は関係ない、どうせ下手だから」という生徒の思い込みを壊し、誰もが美術を楽しめるように。

 

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中高の美術の授業の流れについて教えてください。

中学は3年間、週1時間の授業があります。全員が授業を受けます。

高校では美術は芸術選択の1つになり、約3分の1の生徒が授業を受けます。

高校1年生は週2時間、高校2年生は週1時間です。(1時間は55分)

 

中学ではどのような授業を行われていますか。

中学では木工芸から始めます。道具の使い方をレクチャーした後、10時間をかけて吊り鏡、脚付き鏡、鍋敷きなど、家に持って帰れるものをつくります。刃物の扱いに慣れていない生徒もいます。集中しないと怪我をするので、厳しく指導します。その他道具の使い方や授業への参加の仕方を含め、中学は、基礎をしっかり学び、美術への姿勢を身に着ける時間です。

その他、スケッチ、水彩画、粘土、陶芸などを行います。この思春期の多感な時期にこそ、美術を通して経験できることがあると感じています。

 

高校ではどのような授業を行われていますか。

高校では、美術は選択授業になり、約3分の1の生徒が専攻します。中学生より年齢も上がりますし、授業では少し高いレベルを求めます。大きく言うと、中学では手順を丁寧に教え、高校では少し突き放す感じです。高校2年生の秋に行う「選択制最終制作」は、絵画、立体、デザイン、陶芸の中から1つを選択し、15時間をかけて自分を表現します。高2の修了時までに、自分自身を伸びやかに表現できるようになる、というのが、本校の美術のゴールです。

 

もちろん最初からそのようにはいかないので、1年生は線の引き方から指導します。

生徒たちの中には、自分に自信を持てない者もいます。高校受験を経験し、失敗することが怖くなったり、先生に求められていることを読み取り、それに応えようとする様子が見えることもあります。自信が持てないと、自分の立ち位置が見えづらく、萎縮した状態になってしまいます。美術の授業を通して、自分を前向きに表現し、内発的意欲を高めてほしいと思っています。自分が今やっていることを楽しく感じられると、生徒はいきいきとしてきます。生徒によってそのきっかけは違うため、試行錯誤をしながら生徒とかかわっています。

 
高校1年生の1学期に行われている、フィンガーペインティングとは、どのような授業ですか。

まず、6-7名のグループをつくり、赤・青・黄・緑・ピンク・白・黒から各自一色、担当の色を決めます。まず、指に自分の色をつけて、それぞれの紙に自分を表現していきます。言葉を持たない原始人という設定で、記号や形は一切使いません。

3分経ったらドラを鳴らし、隣の人の紙を貰って二人の会話をしてください、と言います。隣の人が描いた絵に、自分の色を重ねていくのです。これを6人分続けていきます。自分の作品が手元に戻ってきて、そこに自分で仕上げをしてタイトルをつけて終了となります。完成したものは1枚1枚全然違いますし、この作業が進むにつれ、生徒の表情がやわらいでいきます。自分の残したことが、相手に受け取ってもらえて、影響を与えていることを、気づき始めるんだと思います。一度自分の学んできたことを壊すこと、仲間に自分を表現することを学べる場になっているのではと思っています。まだ友達の少ない新入生の、この時期にこそ効果的な授業と言えるでしょう。

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現在のカリキュラムになったのは、いつからですか。

7-8年前からです。それまでは高1、高2ともに週2時間授業で、比較的ゆったりと進めていたのですが、高校2年生が1時間となり、それを機に、内容を精査して、カリキュラムを組みなおしました。優雅に家に飾るための絵を描くというよりは、自分と向き合い、自分を表現できるようになることを重視しています。

 

美術室の環境について工夫されている点を教えてください。

こちらの芸術棟は、昭和47年に建てられました。最新の設備が整っているわけではありませんが、年数を重ねて来たからこそ、出せる味わいもあると思います。例えば、芸術棟は緑に囲まれていて、生徒たちは他の教室からアクセスする際、いったん自分をリセットし、切り替えて授業に臨むことができます。また、美術室には道具、本、卒業生の作品など、色々なものが置かれています。生徒たちがその雑多な要素、材料を見て、色々なものを取り込める自由度があったほうが良いと考えています。

 

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先生にとって美術教育とは何ですか?

美術の教員になった頃、私の指導目的は、美術大学に進学するエリートを育てることだったように思います。ですから、技術力、表現力の高い生徒の能力をさらに引き出すことに、指導の比重を置いていました。一方で、うまく形にできない生徒たちのことも気になっていました。そちらにも目を向けてみると、「描きたいけど、どうすれば良いのかわからない。」という気持ちは、技術力の高さに関係なく、根本は同じなのではないかと感じました。時代の変化もあります。情報があふれ、インプットが過多になりがちな時代に、自己をのびやかに表現できることは、自身の立ち位置をしっかりとつくることに役立つのではないかと感じるようになりました。ですから、「全ての生徒にとって生きるために必要なもの」として、美術の授業を再定義し、美術大学に進学するエリートを育てるだけではなく、誰もが美術を楽しめるようにしました。自分には美術は関係ない、どうせ下手だから、という生徒の思い込みを壊すことを目標としています。

 

指導方針の転換で、生徒さん達に変化はありましたか?

エリートだけでなく、誰もが楽しめる美術としたことにより、美術部への入部が増えたのには驚きました。また、他の教科で先生に色々言われてしまう生徒も、美術の授業では、のびやかに表現をする、という光景も見かけるようになりました。どの授業でも、生徒たちには価値観を揺らすような問いかけをすることを心がけています。正解を求める習慣がついてしまっている生徒に、私は正解を持っていないということをちらつかせるといいますか。美術は自分との闘いで、禅問答のような部分もあります。自分で何を描くべきかを決めるために、自分と向き合っていかなければなりませんから。

 

高校の美術の授業では、1対1で生徒と対話する時間も大切にしています。技術指導に偏りすぎず、考え方について質問したり、良いところをほめたり、言葉の引き出しを増やすことを心がけています。そのようなことを続けながら、生徒の思いや悩みをどのように引き出すかを常に考えています。

 

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各クラスの出席簿の表紙には、生徒さん達が年度のはじめに自分のカラーとして選んだ色が貼られていました。生徒一人ひとりへの思いが、ここからも伝わってきます。

 

関西大倉中学校・高等学校の記事は以上となります。素敵な作品や授業を見せてくださった渋谷先生、授業をご紹介、取材にご協力いただきました関西大倉の先生方、生徒さん達、本当にありがとうございました。

 

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