「ティンカリング」が学びを発明するー「作ることで学ぶ―Makerを育てる新しい教育のメソッド」を読んで

みなさまこんにちは!清水葉子です。前回の投稿から2週間あいてしまいましたが、今年度も、教育とアートについて発信をしていきます。よろしくお願いいたします。

 

さて本日は、こちらの書籍をご紹介します。

「作ることで学ぶ―Makerを育てる新しい教育のメソッド」

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https://amzn.to/2qd3ao5

 

この本は、プログラミング、ロボット教育など、新しい技術を用いて教育を改善する活動をされている、シルビア・リボウ・マルティネス氏、ゲイリー・ステージャー氏により2013年に書かれた「Invent to Learn」が、2015年に日本語に翻訳、加筆されたものです。

 

プログラミングやメイキングを具体的手法として挙げながらも、それをゴールとするのではなく、それらを思考力を伸ばし、学びを促進するための手段として用いる、という方針が、全編にわたり貫かれています。

 

原書のタイトルにもなっている「Invent to Learn(学ぶために発明する)」は、スイスの心理学者、認識論者のジャン・ピアジェの著書「To Understand is to Invent:The Future of Education(理解することは発明すること:教育の未来)」にも関連しています。この理論は「構成主義」というのですが、人が何かを学ぶ時、そのまま知識を受け取るのではなく、自分の中でもう一度知識を組み立てなおして理解する、という考え方です。その組み立て方は人によって異なるため、それぞれが学びの構造を「発明する」必要があるということになります。

 

ではどうすればそれぞれが学びの構造を発明できるようになるか、その鍵を握るのが「ティンカリング」であると、本書では位置付けられています。ティンカリングとは、あれこれ思いつくままに知恵を絞り工夫する、いじくりまわすという行為を表す言葉です。この方法を提唱したのが、メイカー・ムーブメントをけん引したシーモア・パパート氏で、構成主義の考えかたに基づき、思考を頭の外に出して見えるようにし、手を使って試行錯誤することで、学びの構造を発明しやすくする、という理論「構築主義」として確立されました。

 

以前にこちらのブログにも書きましたが、パーソナルファブリケーションが可能となり、個人がコンピュータやそれに関連した道具を使って、安価に試行錯誤ができるようになった今、教育現場にティンカリングを取り入れることがとても容易になっています。パパート氏は教育のためのプログラミング言語や教育プログラムを開発することで、学びの環境設定に尽力しました。本書でも、環境の整え方、教師の関わり方、プログラムの案、道具のそろえ方など、実践に向けてのたくさんの手法が紹介されています。

 

「学び方はそれぞれが見つけるもの」というスタンスはまさに学習者中心の考え方といえるでしょう。手法は様々あると思いますが、例えば校内のあちこちにティンカリングができる場がある、という環境は、とても素敵ですね。そんな環境を実現するためのヒントがちりばめられている本書、お勧めいたします。

 

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建築家ラルフ・アースキンと教育空間

みなさま、こんにちは!清水葉子です。

今日は、スウェーデンの建築家、ラルフ・アースキン(Ralph Erskine)と、彼の携わった教育空間についてご紹介したいと思います。

 

Ralph Erskine (architect) - Wikipedia

 

アースキンは日本ではあまり知られていませんが、イギリスで生まれ育ち、20代でスウェーデンに移住した後、生涯、スウェーデンを中心に多くの住宅、集合住宅、時には街区全体の設計に関わった建築家です。今ではスウェーデンは豊かな住空間、デザインを取り上げられることが多い国ですが、アースキンが移住した1940年代は、都市部への人口集中と質のあまり高くない住宅供給で、いわゆる富裕層ではない一般の人達の住環境は、貧しいものだったそうです。低予算でも色々な工夫をし、人々が自由に、楽しく過ごせるような空間づくりをしたのがアースキンでした。ご自身も、冬はスキーを楽しみ、夏は事務所ごと船で島に移動し、バカンスを楽しむなど、生活を楽しむ方でした。

 

□ヨテボリの客船ターミナル内部カフェ

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□フレスカシ大学図書館

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これらは比較的後期の建築ですが、大きな空間内に色々な要素が入っていて、色々な場がつくられています。

 

□アースキン自邸

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ご自宅もそうですね。奥のソファに座られているのが、アースキンです。2000年にインタビューをさせていただいた時の写真です。

 

なぜそのような空間をつくるのかという問に対して、「建築をデザインする時、visionalismを大切にしているからです。人々が建物の内部をどのように歩き回るか、何を感じ、どんな経験をするのか。親密な場がどうつながれるのか。空間の中で、様々な経験ができることが大切だからです」と答えてくださいました。

 

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上の2枚は、フレスカシ大学図書館の、設計段階のスケッチです。ほとんどの建築家は、設計段階のパース、スケッチを描く際、建物がメインで、人は空間の大きさを把握するためにシルエットを入れるだけです。人を手前に持ってきて、表情豊かに描きわける、というのはとても珍しくて、アースキンの設計姿勢が表れているなあ、と思わされます。

さてそんなアースキンが小学校を設計すると、どのようになるのでしょうか。

□ユットルプの小学校

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※写真は「Ralph Erskine, Architect」より転載

 

こちらは、比較的小規模な地区、ある工場に勤務する人たちのためにつくられたエリアに併設された小学校です(私は残念ながら見ることができなかったのですが、子ども達がすごくいきいきと過ごしている写真を、見せていただくことができました)。

 

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学年ごとにゾーンが分けられ、1年生は住宅のような雰囲気、高学年になると教室がだんだん学校の中心部に近くなってきています。

 

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子ども達の動きを描いたスケッチからも、4、5、6年生が教室を飛び出している様子がわかりますね。

この設計にともない、アースキンは

「what a school wants to be」というメモを残しています。それぞれの場所や子ども達の成長について書かれているのですが、特に最後の部分をご紹介します。

 

「学校は、人生においてはじめて体験するコミュニティーであり、それを恐れる感情を伴う最初の道である。そして、学校という道を通り過ぎた後に、自我が確立される。(中略)自我は学校の一部でもあり、学校は自我のためにある。それは社会や自然の一部というだけではなく、子ども達のコミュニティであり、彼らの親や大人たちのものではない」

 

ちょっと唐突で駆け足なご紹介ではありましたが、アースキンのデザイン姿勢や考え方、今学校現場でテーマとなっていることに、近い部分が多いと思い、ご紹介をさせていただきました。

 

 

世界の事例に見るスタートアップコミュニティとそれをとりまく環境のあり方- Hack Osaka 2018レポート

みなさんこんにちは!清水葉子です。

2018227日、大阪で行われた、Hack Osaka というイベントを見学させていただきました。

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Hack Osakaとは、大阪イノベーションハブ(Osaka Innovation Hub)さん主催の、大阪でのイノベーション創出を支援するためのイベントです。講演の登壇者も、後半のピッチコンテスト出場者も、参加者も、大阪の方だけでなく、日本はもちろん、色々な国から参加されている国際的なイベントです。昨年デザインというテーマに惹かれて参加させていただき、とても面白かったので、今年もうかがいました。

 

今年のテーマは「つながる力・つなげる力でセレンディピティを生み出す-Give Before You Get-」でした。メインアリーナで行われたパネルセッションがとても面白かったので、紹介させていただきます。

 

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左から、モデレータでシリアルアントレプレナーMr. Tim Romero大阪市 経済戦略局理事の吉川 正晃氏、LeaguerX創設パートナー兼最高執行責任者Mr. Shan Lu(深圳)、テルアビブヤッファ メディア担当部長のMr. Gidi Schmerling(テルアビブ)、ロックスタート創設者Mr. Oscar Kneppersアムステルダム)、テックスターズアジア地域ディレクターMr. Oko Davaasuren(モンゴル他)です。登壇者のみなさんが関わられている地域はどこも、魅力的なスタートアップコミュニティができあがっています。

 

このセッションでのスタートアップコミュニティとエコシステムの定義は特になかったのですが、スタートアップコミュニティの中には、組織だけでなく、起業家個人も入っているようでした。ここでのエコシステムとは、ビジネスにおけるエコシステム=生態系という意味で使われていて、新しい分野で企業、投資家、個人がつくる新しい経済、流通の仕組みを指します。

 

日本に限らず以前は企業の規模によって、大企業→下請け企業という流れがあり、規模の大きい会社から小さい会社または個人に発注、指示、といった関係性が一般的だったのが、ビジネス全体の変化が早くなったこと、新しいアイディアが必要とされていることから、新しい産業でのスタートアップが注目され、政府や大きな企業も、その活躍と成長を期待、応援する状況になってきている様子が、お話を伺ってよくわかりました。セッションの中で、面白いと感じたポイントをいくつかお知らせします。

 

1.政府、行政の支援

セッションで事例に出されたスタートアップコミュニティのほとんどが、政府、行政の支援を受けていますが、行政、政府の関わり方は、場所により少しずつ異なるようでした。共通しているのは、ハッカソンやカンファレンス、ピッチコンテストなど、スタートアップ、個人が挑戦したり、仲間や投資家に出会える場を準備しているところです。加えてテルアビブでは、スタートアップの税金の減額をしたり、市内のWIFI環境の整備をし、屋外でも仕事ができるようにしたり、行政の持っているデータをオープンにして誰もが使えるようにしたりといった支援が行われています。また、アムステルダムでは、王子がスタートアップを支援する役割を担い、広く意見を聞いたり、それぞれのシーンで必要な人に引き合わせてくださるそうです。大阪市は、スタートアップだけでなく、大企業に所属する個人もコミュニティへの参加を促し、全体でのエコシステム構築を目指す一方、行政はコミュニティのけん引役でなく、民間をサポートする形を取られるそうです。

 

2.コミュニティの中の個人の意識

支援される側としてのスタートアップや個人起業家のスタンスも変わってきているようです。例えば東京のコミュニティでは、10年ほど前まではお互いにライバルという意識を持っている人が多かったのが、現在は起業家どうしでディスカッションし、お互いの経験を学ぶことを大切にする人が増えているそうです。このような環境が、結果的にみんなのゲームをレベルアップしている、というRomero氏の解説が、面白いなと思いました。アムステルダムKneppers氏も「スタートアップコミュニティにおける一番強いつながりは、人々が互いに助けることができ、また、助けたいと望む、『ピアto ピアコーチング』だと思う」とおっしゃっていて、コミュニティという環境によりかかるのではなく、コミュニティの中の個人どうしの情報共有や助け合いが大切だし、むしろ主体的にコミュニティをつくっていくことが大切なんだな、と感じました。

 

3.地域による差はさほどない?

これには登壇者の中でも意見が分かれそうでしたが、世界中でスタートアップコミュニティの立ち上げに関わられているDavaasuren氏は、立ち上げ前、その地域の人たちに「あなたはここの文化をわかっていない。ここではコミュニティを立ち上げることはできない」といったことを言われるそうです。でも結果、そこに関わるリーダー、投資家が同じビジョンを描き、実現させたいという強い思いがあれば、言語や文化は問題でなく、コミュニティは立ち上がる、ということでした。規模はともあれ、うちの文化や組織は特殊だから、と言いたい方達は、世界中にいらっしゃるのかもしれないなあ、と思いました。

 

4.街の中心部にいるという価値

これはテルアビブとアムステルダムの例として話されていましたが、コミュニティの場を準備する際、都市の中心部に人は集まりたがる、ということでした。広い場所を求めてオフィスを少しだけ郊外に移動しただけで、人の集まりは悪くなるそうです。文化の中心にいるという事に加え、様々なバックグラウンドを持った人と出会える、ということが、街の中心部にいるメリットのようです。テルアビブは、様々な業界を同じ場所に一同に集めようとしています。人々がまじりあった場所のほうが活気があり、病院関係者などスタートアップに所属する人達が、普段コンタクトを取ったことのない人たちとコミュニケーションをとることで、解決すべき問題を見つけやすくなるということです。インターネットがこれだけ普及した現在でも、人が直接出会うことの意味はあるんだなあと、あらためて感じました。

 

5.スピードと、そのための仕組みが大切

投資家や行政がスタートアップを支援する目的の一つは、スタートアップがどんどん成長し、経済効果をもたらすことです。深圳のLu氏によると、2000のスタートアッププロジェクトの中で、200を選び出して支援したところ、うまく行った会社は20社ほど、その中で大きく成長するのは1社といったことがあったそうです。確率論的に言うと、とにかく早く事業を立上げ、どんどん試していくことが必要になります。深圳では、会社設立にあたり、以前はいくつもの役所を回る必要があったのを、現在では1か所にオンライン申請をするだけで1週間以内に認可が得られるという仕組みに変え、スピードアップを図っているそうです。日本のビジネスはとても緻密だが、もっとスピードアップしたほうが良いし、もっと海外に出て、自分達のアイディアを広い世界でブラッシュアップしたほうが良い(自分達のアイディアがオリジナルだと思っていても、外に出ると同じようなアイディアは必ずある)、というLu氏のお話からは、エネルギーを感じました。

 

 

セッションを拝見し、世界のスタートアップコミュニティ、エコシステムの様子を垣間見ることができたとともに、これは特定の業界だけでなく、経済全体で起こっていることでもあるんだな、と感じました。少し前までは、企業の規模によって、できる仕事の範囲が決まっていたように思いますし、ビジネスパーソンビジネススクールに通い、基礎的なスタンスを身に着けて仕事を進める、という流れが一般的だったように思いますが、変化の速い今は、出来るだけ早く動き、お互いが情報を共有して学び合い、必要な情報や学びは都度取り入れ、都度必要な人や組織と組んでいくといった、組織も学びも必要に応じて形を変えるような状況に変化をしているのではないでしょうか。

子ども達の表現力を伸ばす!ピカソプロジェクト-アートの特別授業 at 波除学園

みなさまこんにちは!清水葉子です。

先日、大阪市港区にある波除学園さんで、子ども達を対象に行われたアートの特別授業を見学させていただきました。授業運営をされたのは、合同会社エデュセンスさん。ピカソプロジェクトという、アートを通して子ども達の表現力を育てる活動をされています。

 

代表の奥村みずほさんです。

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授業は、年長クラスの、元気いっぱいの35名の子ども達を対象に行われました。

「今日はみんなにお絵かきをしてもらいます。おててはお膝じゃなくても、背中シャキーンじゃなくてもいいよ。好きなポーズをしてお話聞いていいよ。寝そべってみてもいいんだよ」というみずほ先生の投げかけに、歓喜の声を上げた子ども達。半分以上の子が寝そべり始めました!これは紙が配られた後の写真ですが、なんだかとてもリラックスした風景ですね!(この後、絵具を持ってくる段階になって、スペース的に厳しくなり、ほとんどの子は座って描いていました)

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そしてみずほ先生より3つのお約束

・わいわいしながら作業を進めてもいいけど、先生がお話しする時はさっと話をやめて耳を傾ける

・好きなポーズしても大丈夫だけど、お絵かきができるポーズですること

・他のお友達のじゃまにならないようにする

があり、その後、紙と絵具を自分で取に行き、好きな場所に移動しました。絵具は、白、赤、青、黄の4色です。

 

まず、色の実験をします。用紙の実験コーナーの枠に、赤と青を紙に乗せて、指で混ぜ合わせます。

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「みんな赤と青を混ぜたら紫になるって教えてくれたけど、自分のと周りの人のを見比べてみて!いろんな色ができてるね。え?それむらさき?っていう色もあったね。」と、みずほ先生

続いて、黄と青、黄と赤をまぜていきます。最初はこわごわ一色ずつまぜていた子ども達もコツをつかんできて、2本の指に一度につけて、いきなり混ぜ始める子もいました!

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「ちょっと見てみて!この色めっちゃきれい」「エメラルドグリーンみたい」という先生のコメントに、これも見て!見て!という子ども達。黄+赤では「柿みたい!」「僕のは太陽になった!」など口々に言い始めました。

 

最後は好きな色と白を混ぜ合わせます。水色ができた!ピンクになった!パフェみたいになった!とうれしそうな子ども達。

 

実験が終わったら、「おててスタンプ」をします。「赤と青だったら黄色と緑は黄緑とか、黄色と赤はオレンジとか教えてくれたけど、やってみたらいろんな色があることがわかったよね。だから、混ぜ方で色っていくつでもできます。白は薄くなる色。濃くなったなと思ったら、白をまぜてください。自分だけの素敵な色をつくって、おててスタンプしてみてください(みずほ先生)」

 

すごくうれしそうに、手に絵具をぬりはじめる子ども達。一色に染める子もいれば、グラデーションをつける子もいます。絵具のつけかたが薄くてイメージ通りの形ができない子は、なんでやろ?と考えてもう一度トライ!押したところにもう一度重ねる子、別のところに押してみる子と、リトライの仕方は様々です。

 

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手がいろんな色になるのがとにかく楽しくて、手の甲まできれいに染めている子もいました。トレイで混ぜ合わせる子、手の上で混ぜ合わせる子など、混ぜ方もさまざま。

ここでもみんなできあがると見て見て!血みたいになった!こんなきれいな色になった!などうれしそうに見せてくれました。

 

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授業の最初に「お絵かき嫌いな子いる?」というみずほ先生からの問いかけに、4分の1くらいの子が手を挙げていたのですが、描いている様子を見ると、みんな夢中で、嫌そうな子は特に見当たらないなあ、という感じでした。

 

「おててスタンプできたらどんどん遊んで描きたしていっていいよ」という先生の問いかけに、色々と手を加えていく子ども達。

アタマと足をたして、ダチョウ!という子もいました。全体を水玉模様にした子も。

もっと遊ぼう!というみずほ先生の声かけに、色や紙をおかわりしながら、どんどん展開していきました。子供たちのパワーやアイディアはすごいですね!

 

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絵の具の片付けが終わったあと、「ゴッホの絵本―うずまき ぐるぐる」という本の紹介がありました。

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ゴッホの絵には何が描いてあるか?どんなふうに描かれているか?という問いかけに答えながら、ゴッホの絵は全部短い線で描かれているんだということに気が付いた子ども達は「めっちゃ時間かかるやん!」とびっくりしていました。この後の授業で、ゴッホみたいに描いてみる機会があるそうです。

 

さいごにみずほ先生から「これからみんな小学生になって、自分のしたい事をするの、とってもむずかしくなんねん。でも、自分がこう描きたいって思うのをできるだけたくさん描いてほしいと思います。今日もみんなとっても上手にできたけど、もっともっと遊んでいいんだよ。もっとみんないろんなことができる。保育園にいる間にたくさん描いて、楽しい作品をたくさん残していってくださいね」というお話がありました。

 

エデュセンスさんの授業は、子ども達の成長段階に応じて働きかけ、子ども達それぞれの表現力を伸ばしていくことが特徴です。年長にあたる5歳、6歳の子どもたちは、「図式期」という、知的写実性に富み、見えたことよりも、自分の知っていることを心のままに描く時期にあるそうです。しだいに、パターン化された木や家を描いたり、得た知識をもとに概念化した絵をかけるようになってきますが、その過程で、今回のような体験を通して、固定観念をぐらぐらさせたり、もっともっと自由にかける体験をすることが、表現力を伸ばすことにつながるそうです。

 

固定概念をゆさぶってもっと自由に、という観点は、授業において、描くこと以外にも見られました。「はーい!」と元気よく返事をしている子ども達に「本当にわかってはーい!って言った人!」と再度問いかけをされたり、冒頭の、自分の好きな姿勢で話を聞いていいよ、という説明などにも、同じ意図を感じました。

 

たしかに年長になると、多くの子どもたちは、指示通りに行動できるようになります。そして、教えられた通り、あいさつなどの同じ動作を繰り返しているうちに、条件反射に近い形で、つまりマインドレスに、色々なことをこなすようになることもあります。そういった礼儀、生活習慣といったものは、悪いことばかりではないのですが、時々、なぜこれをやっているのか?もっと違うことはできないかな、と、考えてみることは大事だと思いました。いつもの教室での非日常体験で、子ども達もいつもとちょっと違うことを考えられたのではないかな、と感じました。楽しそうに描き、わたしの作品を見て!見て!と言ってきてくれる子ども達の楽しそうな様子が、とても印象に残っています。

 

見学させていただいた波除学園のみなさま、エデュセンスのみなさま、ありがとうございました!

 

ピカソプロジェクトのホームページは、こちらです。

ピカソプロジェクト | こどもの表現力を育てるアート教育の実践と研究

「自ら学ぶ力」と「探究心」を育むラーンネット・グローバルスクール。その環境とカリキュラムとは? その2

みなさまこんにちは!清水葉子です。先日、探究のヒントを求めて、開校以来「探究」をその教育の中心に置かれている、ラーンネット・グローバルスクールを取材させていただきました。前回の記事では、建物とカリキュラムについて紹介しました。後半の今回は、子ども達、ナビゲータのみなさんの動き、関わり方をご紹介するとともに、自主性と探究心を育てるために必要な環境について考えたことを書きたいと思います。

●パンフレットより、高学年の時間割例

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前回もご紹介しましたカリキュラムです。2時間続きで、個人またはグループで考えて進める授業がとても多いという印象を受けました。

LGSに6年間通うと、その後どこに行っても自分で考えて動けるようになる」と、炭谷さんも奥村さんも断言されています(中学は、編入の生徒さんが引き続き通えるように準備されています)。そして、LGSから他の中学校などに進学した生徒さんからは「自分で動かなくていいから楽だ」という声も聞こえてくるとか。高学年の時間割を見ると、1コマ40分でとことん=2.5コマ、プロジェクト=2.5コマ、テーマ学習=4コマなので、これに行事やマイ・スタディー(毎日1コマ)もあわせると、自分で決めて進める機会が本当に多いことがわかります。この機会の積み重ねが、自分で動けるようになる人をつくっていくのでしょう。

 

LGSでは修学旅行も自分達で計画します。小学生も、中学生も、修学旅行の行き先、過ごし方(そもそも行くかどうかも含めて)を自分達で話し合って決めます。予算を決めて保護者の方達のOKをもらった後、切符や宿泊先の手配も行います。

 

スクール全体のキャンプも、高学年と中学生のリーダー達が中心となり、行き先も含めて詳細を決めていくそうです。見学の日は中学生が修学旅行の見学先について話していました。なかなかの盛り上がりでしたが、お互いが相手の意見を整理しながら自分の意見も言うという、良い意見交換をしていると感じましたし、ナビゲータはその様子を観察していて、時折「その言い方で相手に伝わってるかな」とコミュニケーションのサポートをされていたのが印象的でした。生徒同士の話し合いは時間がかかることもあるそうですが、大人はすぐに介入せず、待つ、というのが、LGSの方針だそうです。

 

 

高学年のテーマ学習では「食べ物と体」のテーマの中で、ちょうど調理実習の時間でした。ここでも共通のレシピではなく、自分達で栄養価の残る調理の仕方を考えて、調理をしていました。学習後半では、それぞれが自分の興味のあることについてまとめるそうです。

 

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掃除の時間には、低学年の生徒に自分達で考えて動けるような問いかけを、ナビゲータがされていました。

 

ナビゲータの採用基準は「何かを深く探究した経験がある人」

ここまでの紹介の中で、授業に入られている大人のことを「ナビゲータ」と表現してきました。LGSでは、関わる大人全員、先生ではなくナビゲータという呼称で統一されています。もちろん授業でクラス全体に向けてお話しされることもありますが、生徒さん一人ひとりの様子を観察し、必要な時に声をかけたりといった、個別の関わりのほうが多く見られました。ナビゲータの方々の中には、教員免許をお持ちの方もいらっしゃいますが、採用において、教員免許は必須条件ではなく、むしろ、「何か1つのことを深く探究した経験があること」のほうが重視されるそうです。これは私の見解ですが、おそらく、探究の経験がある人は、正解を見つけることが探究のすべてではなく、そのプロセス自体から多くのことを学べるため、生徒さん達に正解を急かさず、見守ることができるからなのではないかな、と感じました。正解が1つではない場合も、多くありますし。

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家庭の延長のような、リラックスできる環境

自分で考えて動くシーンが多いLGSですが、大人から何かを強制されるようなシーンや、緊張感のある場面はいっさいなく、生徒さん達は、自由に発言をしながら過ごしているように見えました。奥村さんによると、注意されるシーンももちろんあるそうなのですが、今回は見ることができませんでした。また、各部屋には必ず、少人数で過ごせそうな場所が準備されていて、その時々の気持ちや状況に合わせて場所を選べるようにされているのかな、と感じました。LGSにはチャイムがありません。生徒達は自分達で時計を見て、場所を移動したり、作業の切り替えをするのですが、せかせかした雰囲気があまりないのは、2時間続きの授業が多いからなのかもしれません。全体として、家庭の延長のような、誰もがリラックスして、全員に居場所がある、といった印象を持ちました。

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「自ら学ぶ力」と「探究心」は、実践の積み重ねで育つ

見学させていただいて感じたのは、LGSが目標として掲げている2つの力「自ら学ぶ力」と「探究心」を育てるための環境が、LGSには十分に整っている、ということです。カリキュラムの半分以上に自分で考えて決める機会があり、個人またはグループで進行中のプロジェクトに、生徒1人ひとりがいくつも関わっていて、本当に興味のあることを探究し、発表する機会もある。「自ら学ぶ力と探究心を育てるのであれば、それが実践できる場を多く用意すれば、生徒達は色々なことを経験しながら成長していく」これが、LGSのとてもシンプルで、でも強い、学びの環境なんだと思います。

 

もうひとつ、炭谷さん、奥村さんのお話しから強く感じたのは、生徒全員が、自ら学び、探究できるようになることを、ナビゲータのみなさんが信じている、ということです。自立的な学習、探究姿勢は、特別なものではなく、それぞれが目指し、できるようになることなんだと、実際の様子を見せていただいて感じました。

 

これも私見ですが、時に大人が成果物やプロセスの質をジャッジしすぎることで、安心して自己表現できなくなってしまうことって、教育の現場で起こったりすると感じます。

LGSでは、ナビゲータの方達の、生徒一人ひとりへの愛ある見守りが、それぞれが安心して自己表現することを促し、結果的に自立を促すのではないか、と感じました。

 

LGSに6年間通うと、その後どこに行っても自分で考えて動けるようになる」というのはおそらく、「自ら探究できる力を身に着けると、どんな環境でも生きていけるようになる」と言い換えることができ、中学、高校のみでなく、その先の人生でも通用する力なんだと思います。

 

見学する前には、認可外のスクールだからできることにばかり目が行ってしまっていましたが、実際に見せていただくとそうではなく、シンプルで強い目標と実践のための徹底した環境設定が、ラーンネット・グローバルスクールの良さなのだと感じることができました。

炭谷さん、奥村さん、リアルな場を見せていただいたナビゲータのみなさま、生徒さん達、ありがとうございました!

 

↓ラーンネット・グローバルスクールのページはこちら

www.l-net.com

 

↓前回の記事はこちら

arts.hatenablog.jp

 

「自ら学ぶ力」と「探究心」を育むラーンネット・グローバルスクール。その環境とカリキュラムとは? その1

みなさまこんにちは!清水葉子です。先日、高校の新しい学習指導要領案が公開されました。小学校、中学校、高等学校については2020年から随時実践されていきますが、どの学校種においても生徒の自主性や自ら学ぶ力が重視され、総合学習においては「探究」がより重視されるようになります。では探究とはいったいどんなことをして、どんな力がつくのでしょうか?

 

そのヒントを求めて、開校以来「探究」をその教育の中心に置かれている、ラーンネット・グローバルスクールを取材させていただきました。2回に分けて、掲載させていただきます。

 

ラーンネット・グローバルスクールは、神戸市東灘区および灘区にある、3才から就学前までを対象としたバンビーナ、小中学生を対象としたフルスクール、3才から受講できるアフタースクールからなります。1996年に代表の炭谷俊樹さんを中心としたメンバーにより設立されました(フルスクール開校は1998年)。今回見学をさせていただいたのは、小中学生対象のフルスクールで、瀬戸内海国立公園六甲山地区内にある「六甲山のびのびロッジ」で主に活動が行われています。活動時間は月曜日~金曜日(小学校1、2年生は火曜日~金曜日)の8:30-15:30。阪急岡本駅近くの、岡本わくわくハウスに集合し、スクールバスで山道を登り、30分ほどかけて通学します。

※以下ラーンネット・グローバルスクールをLGSと表記させていただきます。

 

関西圏以外にお住まいの方は、六甲山のイメージがわかりづらいと思いますので、まずはホールからの景色をお見せします。

 

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この絶景!いかがでしょうか。ちなみに見学させていただいた28日は、神戸市街は全く雪が積もっていない状態でした。

 

↓のびのびロッジを南側から見たところ。私が写真を撮るために立っている場所も、生徒達の遊び場です。

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大自然に囲まれた環境で、生徒達は1日を過ごします。

 

こちらのロッジには、小学校1年生~中学校3年生まで約50名が在籍し、小学生は2学年ごと、中学生は全学年1クラスの、計4クラスに分かれています。1学年は約7名なので1クラスは2学年分の14名前後、中学生のクラスはもう少し少ない人数です。文部科学省認可の学校ではないため、インターナショナルスクールなどと同様、生徒達は公立校に籍を置き、LGSに通学しています。

 

こちらの教育の中心にあるのは、子ども達が「自ら学ぶ力」と「探究心」を育むこと。どのようなカリキュラムと環境設定でそれを実現されているのか、授業を見学させていただくとともに、代表の炭谷俊樹さん、広報の奥村尚子さんにお話をうかがいました。

 

基礎学習でも個別に学びを進める時間が多い

LGSのカリキュラムでは、日本語、算数、数学、英語、アート、音楽、体育からなる「ベーシック学習」が、基礎学力のためのベースとなっています。クラス全体でナビゲータの話を聞くシーンもありましたが、ほとんどは、プリントなどを自分のペースで進め、時折ナビゲータの指示を仰ぐような形で進められていました。「マイ・スタディー」の時間では、自分に合ったテキストを、それぞれが自分のペースで進めていました。学習の進捗については、週1回程度、生徒とナビゲータの相談日があり、そこで進捗状況を確認したり、その後の進め方などを相談する、という形が取られているそうです。

 

LGSでは正解を求めて競うシーンがほとんどないため、それぞれの生徒が周囲を気にしすぎず、自身の学習に集中できているように見えました。ペーパーテストも行われないので、それぞれが自分に合った進度で学習を進めることができます。

 

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●パンフレットより、高学年の時間割例

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自分達で考え、決めることがとても多い

LGSでは、自分で、もしくは仲間と考え、生徒が決めることが本当に多いと感じました。週に2時間ある「プロジェクト」の時間は、個人もしくはグループで、テーマを決め、調べ、まとめ、発表までを行います。「とことん」の時間は、自分の興味のあることにとことん取り組む時間です。今の季節はそりに夢中な子もいましたし、自分がスクールで使う椅子をつくった、という子もいました(工作室には材料、道具が充実しています)。また、プログラミングアプリ「スクラッチ」に熱中していると教えてくれた子もいました。

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(つづきます)

 

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Khan Lab School(カーン・ラボ・スクール)の設計者が語る、新しい学びに適した教育空間とは

みなさまこんにちは!清水葉子です。

 

2017年にカーンアカデミーの主催者 サル・カーン氏が中心となり開校した

Khan Lab School(カーン・ラボ・スクール)。

khanlabschool.org


・年齢ではなく、 5-15歳の生徒たちが6段階のlevel of independence (自立レベル)に分けられる
・生徒達が自分達で目標を決め、先生と相談しながら目標達成のためのカリキュラムをつくる
・次の段階に進むには、自分が次のレベルに進めることを示すプレゼンテーションを行い、審査される

という特徴を持ち、「自分が成長するためのプログラムのオーナーは自分」という、サル・カーン氏らしいコンセプトがとても魅力的で、いつか行ってみたい学校の1つです。そのカリキュラムとともに、校舎も話題になっています。

 

この校舎を設計した建築家は、Danish Kurani(ダニッシュ・クラーニ)氏。KLSだけでなく、多くの教育空間に関わられているようです。

kurani.us

 

そのクラーニ氏が、2016年10月にTED×Georgia Techで行ったプレゼンテーションが、彼の設計プロセスやスタンスをうかがえるものとなっているので、ご紹介します。

日本語字幕がなかったので、私のつたない超訳もつけておきますね。

www.youtube.com

■Danish Kurani(ダニッシュ・クラーニ)氏が、201610月にTED×Georgia Techで行ったプレゼンテーション

 

高校生の時、私は「物理をバスケットボールで説明する」という学校のプロジェクトに取り組んでいた。友人が家に来て、家の前の道でボールをバスケットのゴールに何度も入れ、1つ1つの動きを丁寧に記録していたところ、母親が窓越しにそれをいぶかしげに見ていたが、ついに外に出てきて、何をしているのか聞いてきた。母に詳細を説明したところ、(それが学校のプロジェクトだと知った)母はとても驚いた。なぜなら母が学生だった時代、学校では知識を教えられ、それを覚えるだけだったからだ。

 

私は母親の時代よりも少しインタラクティブなシステムの中にいられてとてもラッキーだったと思う。テストはあったが、知識を問うだけのものではなかった。そしてそれは、教育がこの数十年の間に大きく変わっているという証拠である。そして今の子ども達の時代、変化のスピードは、これまでになかったほど、速くなっている。

 

教育が進化し、変化しているのは素晴らしいことだが、校舎はその進歩に追いついていない。なぜこんなことが起こるのか。

 

この疑問にせまるため、校舎は通常どうやってデザインされるのかを説明したい。例えばある学校が新しい建物が必要になったとする。(担当者が)建築家を選び「私達は500人の生徒のための校舎が必要なので、25の教室と、普通の体育館、図書館、カフェテリアを作ってください」という要望を話す。建築家はオフィスに戻り、それに見合うデザインを考える。学校によって多少の違いは出るかもしれないが、結果的にはどの校舎も同じように面白みのない、感動のない、(教室の写真を見せて)この写真のような仕上がりになってしまう。

 

この空間を使うことになる人々=先生と生徒は、校舎のデザインプロセスについて相談されることもなく、プロセスに参加することもない。彼らは完成した空間で活動するように言われるだけ。それは、学習環境が先生や生徒の実際の要望ややりたい事に合わせてつくられていないということ。

 

学校はそれぞれ、文化、ビジョン、教え方、学び方について、1つの軸を持つ傾向にある。しかしその物理的な環境=校舎だけは、全く別の方向に向いてしまうといったことが起きている。

 

もうひとつの問題は、学校の建物は100年もつように作られ、変えられないということ。それは、その固定された環境が、新しい教え方、学び方に合わせられず、学校の進化を止めてしまっている。私は建築家として、この問題を何年も考えてきて、今日はひとつの解をお見せしたい。

 

ある日ニューヨークのオフィスにimaginarium Denver Public Schoolsというところから問い合わせの電話があった。彼らの依頼は、彼らが新たな教育方法の支援をしているコロンバイン小学校の空間設計をしてほしいというものだった。

 

それを聞いて私達はコロラドに赴き、コロンバイン小学校の校長先生と先生方に会った。最初の打ち合わせで彼らは、「私達は子ども達が自分達にとって快適な環境で学んでほしい。私達は彼らがそれぞれの学びをパーソナライズしてほしいし、この新しい学校のモデルに対し、わくわくするようになってほしいと思っている」というビジョンを語ってくれた。私達はすぐに、そのビジョンはコロンバイン小学校の築70年の校舎ではできないことだと理解した。

 

ここから先生たちとの協働が始まった。まず、私達は彼らに、我々がつくる家はどのようにデザインされるかを話した。例えば、家にあるキッチン、ベッドルームなどの各部屋は、調理する、眠るなどの行為をサポートするようにデザインされる、といったことだ。先生たちはその話を理解し、先生や生徒達がやりたいことを、空間がどのようにサポートできるのかについて、ブレインストーミングを始めた。

 

次のステップとして、1つの実際の部屋をつくってみることにした。その部屋のコンセプトは生徒達(の活動)を助け、勇気づけ、アイディアをシェアし、彼らがやりたいと思った色々なことができる部屋とした。先生たちとともに描いたフロアプランは、1つの空間に、レクチャースタイル、ギャラリー、大小のワークなど、さまざまな活動を内包できるようなものだった。

 

そこから私達は生徒に、学校でどんなふうに過ごしているか、どんな時に快適だと感じるか、何にインスパイアされるかなどの質問をした。そこで得られたインサイトを使って、先生たちと私達は協働して15の新しい、ユニークな活動と、学習ツールを考え出した。

 

(模型の写真を見せて)ここに全ての新しい活動とツールが含まれている。この空間が完成した時、私はそこに赴き、先生をトレーニングした。彼らが、新しい空間と学習ツールを使いこなすことができるかどうか、確認したかったからだ。

 

実は最初にお見せした一般的な教室の写真は、1年前のコロンバイン小学校の教室の写真で、再デザインの結果、こうなった(現在の教室の写真)。

 

コロンバイン小学校がこの空間を使い始めて、約1年になる。この空間は、教えること、学ぶことに大きなインパクトを与えた。先生たちによると、子ども達は以前よりも自信を持つようになり、リラックスして、そしてチャレンジできるようになったそうだ。また、以前よりもチームで協力的に活動するようになり、とてもシャイで静かだった子ども達も、みんなの前で発言するようになった。これが、学校デザインが持つポテンシャルだと私が考えるものだ。

 

コロンバイン小学校では、この解決が、彼らにとって正しかったと思う。この空間は、生徒達が自分の考えをシェアし、色々な方法で自分を表現する助けになっている。しかし、学校はそれぞれ違うニーズを持っている。ある人は、コンピュータサイエンスについて、子ども達のモチベーションを上げ、学習に熱中できるようになることを望んでいる。また他の人は、両親が学校を訪れ、より多くの時間を過ごせるようにしたいと思っている。また他の人は、学校において、お互いオープンで信頼しあう文化を持ちたいと思っている。

 

私達がどこで学ぶかは、私達がどう学ぶかのキーになると私は確信している。私達は学校の再デザインを始めなければならない。

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実際に使う先生や生徒が設計プロセスに関わるというスタイルに加え、コロンバイン小学校の事例が面白いのは、クラーニ氏と先生方が、話し合いの中で新しい学習スタイルやツールを一緒に考えているところだと思います。おそらくそこに関わられた、教育プログラムの支援者である、imaginarium Denver Public Schoolsの存在も大きかったのでは、と推測します。KLSではどんなコラボレーションがあったのかも、機会があれば、聞いてみたい!教育プログラムと校舎デザインのコラボレーション、もっといろいろなところで起こると、いいですね。

 

#Khan Lab School #Danish Kurani