「振り返ってみると、私たちはこの状況をポジティブに捉えることができたのではないかと思います」休校期間に見えてきた、生徒達の発表の場 サレジオ学院中学校・高等学校インタビュー 後編

 2020年3月~5月、新型肺炎COVID-19蔓延の影響で休校となった期間も新しい形での授業継続に加え、生徒さんたちの発表の場もさまざまな形で準備をされたサレジオ学院中学校・高等学校の先生方。前編については休校時の体制づくりについておうかがいしました。後編では生徒の発表の場について、より具体的な取り組みについてお話をうかがいました(取材:2020年7月)

 

中学2年生は、授業以外の課題にもユニークなものがありましたね

森田先生: 「俺の料理」という、それぞれがつくった料理の写真をシェアする企画と、学校紹介動画を作成する企画を行いました。これらは、生徒たちにオンラインで何をやってみたいか聞いたことがきっかけになっています。生徒たちからは、クイズ番組のようなことがやってみたい、などもあり、これも国語の授業で漢字クイズをするなどで実現したのですが、その中に「料理をつくって見せ合いたい」という意見があったので、中学2年生全員への課題として4月末に出してみました。我々教員としては、せっかく家にいるから、家の手伝いをしてもらいたいという思いもありました。提出してもらったのは、生徒が自分でつくった料理の写真とレシピです。出てくる料理は目玉焼きくらいかなと思っていたのですが、餃子、唐揚げなど、手のこんだ料理をつくってきて、課題を出した我々が驚きましたね。生徒達もお互い写真を見合って、刺激を受けたようです。

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中2の生徒たちが提出した「俺の料理」

森田先生:学校紹介動画を作成する課題は、我々が考えました。最初は自己紹介動画を作成してもらおうと思っていたのですが、学校紹介動画のほうが、学校の広報にもつながりますし。休校前までの授業で動画作成の技術などは教えていなかったので、生徒それぞれの環境で動画作成をすることが難しければ、スライド作成でも良いことにしました。出来上がった動画を見て、生徒たちが色々な工夫をしてくれて、驚きました。ぬいぐるみを語り手にしたかわいい動画をつくってくれる生徒もいました。完成した動画は、生徒が相互評価をする機会も設けました。

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中2生徒による学校紹介動画1(イメージ)

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中2生徒による学校紹介動画2(イメージ)

動画作成技術を、生徒さんたちが独学で学ばれたとはすごいですね

高木先生:高校2年生も、自己紹介動画で自分の好きなものなどを紹介し、共有しました。どの学年の生徒も、これまで授業や校内の活動で動画をつくるということはほとんどありませんでした。しかし、もともと彼らはYouTube世代なので、自分ですぐに動画を作れる生徒もいましたが、今回初めて取り組んだ生徒も含めて、全体的に動画編集のスキルがかなりアップしたと感じます。今後の授業にも動画作成を取り入れたいですね。

 

下田先生:今年は例年のように新入生を集めて部活を順番に紹介するという形での部活紹介ができなかったので、各部活、1分の動画を作って、中学1年生のオンライン上のクラスルームに置き、見てもらう形を取りました。教員の手はほとんど借りず、すごい動画をつくっている部活もありましたね。

 

部活、行事など、自宅学習期間中の工夫はされましたか

下田先生:生物部が「マリンチャレンジプログラム」という、日本財団・株式会社リバネス・一般社団法人 日本先端科学技術教育人材研究開発機構(JASTO)が主催する、海洋分野での課題に取り組むプログラムの大会にオンラインで参加し「JASTO賞」という賞をいただきました。この大会はもともと3月半ば、会場で開催される予定だったのですが、この状況下、4月上旬に延期になっていました。結局それも中止となり、4月19日にオンラインで開催することになったのです。なので、もともと発表の準備とリハーサルはできていたものを、リアルでなく、オンラインで発表したという形です。研究内容は、「キンチャクガニと共生するイソギンチャクについて」でした。実はこのプログラムはもともと、プロの研究者の方がアドバイザーとして協力していただける仕組みがあり、今回アドバイスに入っていただいていたのが、沖縄の研究者の方だったので、オンライン開催になる前から、生徒達はオンラインで外部の方とやり取りを行うという環境に触れていました。もちろん、オンラインでスムーズにやり取りができるまでには少し時間がかかったのですが、生徒達にとって良い訓練になったのではと思っています。今年も関東大会に招いていただけたので、引き続き同じテーマで参加する予定です。これはオンラインだからという訳ではないですが、今回のプログラム参加をきっかけに、今回参加したメンバー以外にも、研究をしたいという生徒が出て来たのは、とても良い影響だと思います。

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マリンチャレンジプログラムで「JASTO賞」を受賞した生物部

高木先生:部活ではありませんが、高校生の生徒がe-スポーツの大会として「クラッシュ・ロワイヤル」という、リアルタイム対戦型ゲームの高校生向けの大会に出場しました。また、パソコン甲子園という、例年会津大学で行われているプログラミング技術を競う大会が、今年はオンラインでの実施となり、本校の生徒も出場予定です。

 

下田先生:中学3年生の吹奏楽部所属の生徒は、アーティストGReeeeNの「星影のエール」を全国の吹奏楽部員と奏でる企画に応募し、オンライン上で合奏に参加しました。

 

染谷先生:運動部はなかなかオンラインではできない状態ですね。やはり活動場所が学校ではない場合、ケガなどのリスクも出てきますので、運動部は慎重に進めていかなければと思っています。8月からは4~5校会場に集まっての、小さな規模の大会は始まる予定です。

森田先生:剣道部は大会も全国的に開けておらず、素振りや、基本的な練習しかできないのですが、オンラインでできることとして、毎回練習の最後に顧問が話す「今日の練習のまとめ」の内容をGoogle Classroomでも残しておく形にし、帰宅後も振り返ることができるようにしています。また今後、毎回練習の最後にそれぞれがつける振り返りノートをオンライン上でできないかと考えています。いずれは練習動画を撮って、共有、研究をしたりと、生徒が自分達で運用できると良いと思っています。

 

 

今年の文化祭は学校で?それともオンラインで?

染谷先生:学校で、生徒のみの参加で行い、なおかつオンラインで見られるような形での準備を、高校2年生が中心となって進めています。例年よりも検討事項が増えて大変だとは思うのですが、アイディアを出し合って作り上げてもらいたいと思っています。

 

6月より、分散登校での授業を再開されましたが、休校期間前と変わったことはありますか?

高木先生:教員も生徒もオンラインでの学習に慣れ、中学2年生~高校2年生までが端末を持っているため(中1は9月から)、学校での授業の方法もずいぶん変わりました。紙の使用量が8割ほど減った先生もいました。

 

森田先生:授業中でも生徒間の距離を保つため、グループワークなどはやりづらい状況が続いています。そこで、最近は教室でも端末を使ったグループワークを行っています。その様子を見ていると、この3か月で、生徒のICTスキルも相当向上したと感じますね。先日ある授業で、生徒達自身で国語の問題をつくってみる、という課題を出し、6人で1つのスライドをつくってもらったのですが、生徒たちはいつのまにか色々な機能を覚えていて、こちらの予想を超えるスライドが完成し、課題を出したこちらが驚かされました。また、授業時間内で作業が終わらなかったグループは、帰宅後、オンラインで協働作業をして課題の仕上げをしたそうで、こちらが言わなくてもそれを自然にやっているという状況にも、驚かされました。

 

染谷先生:生徒達のスライド、ドキュメント作成能力は、かなり向上したと思います。数学の授業でも、生徒がタブレット上で解いた答案のいくつかをピックアップして全体共有し、添削、解説するような形で授業を進めています。今は教室で行っていますが、たとえまた第2波で休校になったとしても、オンラインで同じ形で授業を進められると思います。

 

森田先生:他にも、自分が読んだ本を他の生徒にお勧めする「読書ノート」のオンライン化、生徒の作品のウェブ上での共有と相互評価、オンラインでのディスカッションなど、学校や教室でもオンライン化したほうが共有しやすかったり、作業が進めやすかったりするものは、学校が再開してもそのまま残しています。

 

高木先生:振り返ってみると、私たちはこの状況をポジティブに捉えることができたのではないかと思います。休校になり、行事や研修旅行など、できなかったこともたくさんあるのですが、この状況下で何ができるかを考え、実行した、自分の学習スタイルを振り返った、動画編集技術を身につけたなど、教員も生徒も、この状況下だからこそできるようになったことがたくさんありました。一方で、学校が再開してうれしいという生徒がたくさんいます。言語化しきれない、リアルな場所でのコミュニケーションの価値を、生徒たちも感じているのでしょう。本校の理念は「共に生きる」です。だからこそ、学校というリアルな場でできることも大切にしながら、オンラインの場もうまく活用していきたいと思います。

 

取材をさせていただき感じたのは、先生方がこの状況をとてもポジティブにとらえ、あたらしい学びの場をつくられたという事です。色々とやり方を変えざるをえないのはどの分野でも同じだと思いますが、これを転機ととらえ、新しい事に取り組む姿勢は、私も見習いたいと思いました。先生方、お忙しい中取材をさせていただき、本当に本当にありがとうございました。

<インタビュー前編はこちら>

arts.hatenablog.jp

 

サレジオ学院中学校・高等学校のウェブサイトはこちら>

www.salesio-gakuin.ed.jp

 

こちらの記事は、2020年10月に発行された ”私学の「これから」を創造する学校マネジメント情報誌:FORWARD”に清水が書いた内容の転載となります。

「振り返ってみると、私たちはこの状況をポジティブに捉えることができたのではないかと思います」休校期間に見えてきた、生徒達の発表の場 サレジオ学院中学校・高等学校インタビュー 前編

 2020年は新型肺炎COVID-19蔓延に世界中が大きな影響を受けました。教育現場にも色々な影響がありましたが、中でも2月27日に政府より発表された全国小中高校臨時休校宣言により、多くの学校が、5月もしくは6月まで休校となりました。

 サレジオ学院中学校・高等学校横浜市都筑区:以下、サレジオ学院)でも、3月~5月の3か月間が休校となり、先生方も原則自宅待機となりました。3月上旬に予定されていた期末試験の問題用紙は課題として生徒の自宅に郵送され、春休みに予定されていた春期講習も、各教科の先生より課題が発信される形となりました。同校は以前より校内のICT化を進めていて、まだ配布が終了していない学年もありましたが、2020年3月中に生徒全員のGoogleアカウントが配布され、4月より、生徒全員がオンラインで学習ができる体制が整えられました。

「振り返ってみると、私たちはこの状況をポジティブに捉えることができたのではないか」という先生の言葉通り、新しい形での授業継続に加え、生徒さんたちの発表の場もさまざまな形で準備をされた先生方。具体的な取り組みについてお話をうかがいました(取材:2020年7月)

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休校期間中のオンライン学習の状況を教えていただけますか

森田先生:オンライン学習を開始したのは、4月からです。3月中は、どのように新年度の授業を進めるか、教員が学年ごとに話し合いました。端末の配布が終わっていない学年ではリアルタイムのオンライン授業をするのは難しいという結論になり、基本的には


・各授業担当の教員が作成、配信した授業動画を視聴
・教員が出した課題をGoogle formを使って解答
・問題集など、紙の課題に取り組み、その写真を撮って提出
・教員からデータで配布された課題を、各自プリントアウトして解いて、その写真を提出


の4つのパターンで進めました。教材、動画配信は、Google Classroom(オンラインで、クラス単位で生徒や学習内容を運営・管理するためにGoogleが提供しているツール)を使って行いました。

 

高木先生:休校期間中は教員も在宅勤務だったので、授業の準備は学年単位のコンパクトな形で話し合い、進めました。それぞれの学年の生徒の様子は、その学年の教員がよくわかっていますから。オンラインでの授業やGoogle Classroomを使うことに慣れていない教員もいたので、Google Classroomの基本的な使い方と、それを使った授業の実践例の動画を作り、YouTubeで配信し、先生方に自宅で見てもらえるようにしました。教員全員が集まれない状況下で、この動画を視聴してもらうことが、教員研修の代わりになったと思います。この動画を一般公開したところ、チャンネル登録者数は約2700人となりました(2020年7月末現在)。他の自治体の教育委員会から研修で使わせてほしいと連絡をいただいたりもしています。

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高木先生のYoutubeチャンネル

オンライン上で授業や学習を進める上で、工夫されたことはありますか

森田先生:休校前も毎日、1日の学習時間や生活の様子を記録する「生活記録」を紙で行っていたのですが、休校期間中はオンラインで行い(担任から生徒達に質問を発信、生徒がそれに返信。全学年で実施)、特に学習時間等を詳しく聞くようにしていました。ただ、毎日同じことを聞いていると生徒達も飽きるので、担任からオリジナルの質問を投げかけて、反応を見ていました。例えば「コロナで自宅学習になったから、できるようになったこと」「自宅学習になって、あらためて感じた学校の良さ、学校でしかできないことは」などを聞いたところ、自宅学習で良かったととして「動画配信は、一度視聴してわからない部分は繰り返し見られるので基礎力がついた」という回答や「自分で学習を進めなければならないので、自主的に学習する力がついた」という回答がありました。逆に学校に行けないとつらく感じる部分として「みんなで運動や部活ができない」という回答や「先生の授業中の雑談、余談が無駄な話に見えるようで実は学習にも大切だったと気が付いた」という回答がありました。、動画配信だと通常の授業よりも時間を短くし、教員も必要なことを手短に話す傾向にあるのですが、雑談が無いことで、集中力を持続させるのが難しかった生徒もいたようです。また「クラスのみんなの意見が知りたい」という意見もありました。

 

「クラスのみんなの意見が知りたいという」生徒さんの要望には、どのように対応されましたか

森田先生:学校での環境になるべく近づけるように、生徒が提出した課題を、生徒どうしができるだけ見られるようにしていました。生徒が提出したスライドは、ウェブ上のフォルダでオープンにし、コメントをつけることもできます。コメントをつけることを課題としたこともありました。

 

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Google Classroom上で生徒どうしがコメントをつけている様子

染谷先生:高校2年生でも動画と課題を配信し、生徒の提出物を見て生徒たちの理解度を把握するという形で進めていましたが、確認のためのテストをしてみると、生徒同士対話したほうが理解が深まるのではないかと感じる部分が出てきました。高校2年生は全員が端末を持っていたので、ライブの授業を4回行い、問題演習を会話、チャット機能を使って解く、ということを試しました。クラス全員で対話をする形で進めたので、理解が早い生徒が話しすぎる、ということもありましたが、逆にそれが刺激になったという生徒もいました。

 

高木先生:高校2年生は、教員不在でもGoogle Meetを生徒が自由に使って良い形にしていたので、集合時間を決めて集まり、お互いに質問しながら勉強をするなど、オンライン自習室として活用する生徒もいました。また、高校3年生は、毎回の動画配信の後に質問のフォームを設けて記入できるようにしていました。私の方でその質問を集めてQ&Aをつくり、全ての生徒にシェアすることで、生徒が他の生徒の状況を知ることができる、という仕組みです。倫理の授業で通常はディスカッションをする場面では、Google スライドを使って、1つのファイルを共有し、意見を書き込んで議論する方法で進めました。

 

下田先生:中学3年生はオンラインの朝礼を行い、自宅でも生活リズムを崩さずに過ごせる工夫をしていました。

 

森田先生:中学2年生は昼休みの時間に、クラスごとのオンラインスペースにアクセスしてもらい、担任も入った状態で、生徒がお互いに話せる場をつくりました。ただ、新年度で新しいクラスで、接点も少ないので、会話はなかなか弾まなかったですね。また、秋の文化祭に向けて、クラス企画の準備を進めなければならなかったのですが、学校で学級会が開けないため、まずはオンラインで企画の希望をとり、意見が集まってきたところで、生徒どうし、Googleスライドを使って、みんなのアイディアについて追加でアイディアを出してもらい、企画を進めていきました。

 

<後編はこちら>

arts.hatenablog.jp

サレジオ学院中学校・高等学校のウェブサイトはこちら>

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こちらの記事は、2020年10月に発行された ”私学の「これから」を創造する学校マネジメント情報誌:FORWARD”に清水が書いた内容の転載となります。

 

「これって誰がデザインしているの?」という言葉への違和感

この半年、仕事において(時にプライベートも)かなりの時間を使ったのが、お弁当レシピサイト「N's KITCHEN」の立ち上げでした。

nskitchen.jp

個人的には料理はつくるけどそれほど得意ではなく、それについて探究する心もなかったのですが、プロジェクトメンバーに指名していただき、料理やレシピについて仕事を通して学ぶうちに、料理の楽しさに気が付きまして。今ではテレビを見ていても、買い物に行っても、本屋さんに行っても料理関係のコンテンツに反応せずにはいられないほどです。料理って楽しい、を伝えられるサイトになっていると思うので、ぜひご覧ください。

 

さて、本日の本題は、そこではなく「デザイン」という言葉についてです。

こちらのサイト、ありがたいことにたくさんの方に見ていただき、コメントをいただくのですが、直接ご紹介させていただいた時によく聞かれるのが

これって誰がデザインしているの?

という質問です。

 

このサイトの立ち上げには、複数人が関わっています。

この中の誰が、N's KITCHENをデザインしたのでしょうか。

時系列であげていきます。

(肩書をつけると説明がわかりにくくなるので、敬称略でいきます!)

 

A.お弁当レシピサイトをつくる、と決めた人

B.プロジェクトメンバーを編成した人

C.コンセプトや方向性を検討した人

D.サイトの方向性に合うレシピを考えた人

E.サイトのイメージに合った文章やコラムを考えた人

F.使いやすいサイトを検討、制作した人

G.サイトの色あいやロゴ、イラストを検討、制作した人

H.動画の構成を検討し、編集した人

I.全体の進行を管理した人

 

たぶん「これって誰がデザインしているの?」への回答として相手を納得させられるのは、FかGですが、私は本当は「全員です」と答えたいんです。

 

つまり、チームで新しいものを作る時、プロジェクトに関わる全員がそれぞれの専門をベースにデザインする力を持っていないと、チームは成り立たない。今回の立ち上げメンバーはコンセプトデザイン、プロジェクトデザイン、プロダクトデザイン、プロセスデザイン、ウェブデザインなど、全員がデザイン力を持っていたと思います。

 

新しいものをつくるということは、まだ現実に無いものをイメージし、それに形を与えていくことです。ざっくりとドローイングする力がもちろん求められるけど、それだけだと、詳細がわからないから、詳細を描き足す必要が出てくる。詳細を描き足したら、もう一回全体を見て、齟齬がないかを確認する、という作業を繰り返して繰り返して、現実化していく。そして、そのプロセスでイメージを共有するために何度も何度も話し合いを行いました。

 

デザイン=想像する+想像したものに形を与える

 

「想像したものに形を与える」部分は、一人ひとりの得意や経験、別の言葉で言うと専門性が生きてくるから、メンバー全員がデザイナーだからといって役割を入れ替わるのは難しい、ということだと思います。でも、自分の領域でこのデザインがしっかりできている人は、他の領域のこともわかるんですよね。

 

そんなことを考えながら出来上がったN's KITCHENですが、まだまだ次の段階を想像して動いていますのでどうぞお楽しみに。

 

 

悲しくなる日を楽しい時間に。生徒たちがリモートで実現した体育祭とは? -聖ヨゼフ学園インタビュー

今年は新型肺炎COVID-19蔓延の影響で、学校行事を中止や延期にされた学校は、多いのではないでしょうか。聖ヨゼフ学園中学・高等学校(横浜市鶴見区)でも、5月8日に予定されていた体育祭が中止となってしまいました。今年が最後の体育祭となる高校3年生の生徒さんたち、また、1月から準備を進めてきた実行委員の生徒さんたちは、とても悔しい思いをされたそうです。本来であれば体育祭が行われた5月8日は、とても悲しい日になるところでしたが、実行委員の4名の生徒さん達が中心となり実施した「リモート体育祭」で、大変な盛り上がりとなったそうです。本日は、その詳細と実現までの裏話をご紹介いたします。

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高校3年生 体育祭実行委員のみなさん

お話を伺ったのは、高校3年生の体育祭実行委員のみなさんです。

委員長のM.Oさんは中学1年から高校3年まで、ずっと体育祭の実行委員、他の3名の生徒さんたちも、実行委員は2年目もしくは3年目となるそうです。

 

例年の体育祭はどのように準備を進められるのですか

体育祭は毎年生徒が中心になって準備や運営を行っています。委員は、中学1年生から高校3年生まで各学年の数名ずつ選出されます。全学年の委員が決まるのは、その年度の4月ですが、高校3年生だけは前年度の1月より委員を決めて準備をし始め、競技やルールの変更点などをまとめます。新年度がスタートしてからは、高校2年生は高校3年生をサポートして、パンフレット制作などを行います。他の学年は役割分担をしながら、入退場の時に声をかけたり、競技の練習をサポート、グラウンドの整備、審判など他のチームと連携して準備を進めていきます。

 

今年はどのように準備を進めましたか

今年の体育祭については、この4名で1月から準備を始めました。新型肺炎蔓延の影響で、3月1日より休校となりましたが、その時点ではまだ体育祭はあると思っていたので、主にオンラインで、開催に向けた話し合いをしていました。プログラムや出場者など、かなり細かい部分まで決めていました。

 

体育祭の中止が決まったのは、いつですか。また、その時どう感じましたか。

3月30日に学校から一斉配信されたメールの中に、「体育祭は中止です」という一文がありました。その後担当の先生からもメールが来て、やはり中止なんだなと。委員のみんなとラインで連絡を取りあいながら大泣きしました。せっかく準備をしたのに、という気持ちもありましたし、私たちの学年はこれまで一度も優勝をしておらず、今年は絶対に優勝したいと思っていたので、とても残念でした。

 

その後、オンラインでやることを決めたのはいつですか

実は決めたのは体育祭が開催される予定だった日の前日なんです(笑)。体育祭が開催予定だった5月8日の前日、5月7日のお昼くらいに、私から他の委員のみんなに「明日が体育祭をやるはずだった日だから、その時間に4人で電話ができるといいね」とスマホからメッセージを送ったんです。そしてそのあとしばらくスマホを見ない間に、メンバー間で盛り上がり、どうせなら学年全員でやろう!ということになっていました。もちろん私も賛成し、そこからオンラインで話し合いながら、急いで準備を進めていきました(M.Oさん)。

 

それはすごく急な話ですね!どんな風に準備を進められたのですか

オンライン体育祭は、LINEのビデオ通話機能を使って参加者をつなげて行うことにしました。SNSを使って学年の全員と連絡をとり、オンライン体育祭に参加したい人にはLINEグループに入ってもらうようにしました。時間は14:00-16:00、参加条件としては

・全員ジャージ上下で参加すること(体育祭の開会式もそうなので)

・学年カラーの緑のはちまきをつけること

を設けました。競技については、色々なものをやりますよ、というアナウンスをしました。

 体育祭で使う音楽も全部ダウンロードして、準備しました。ポスターはM.Oさんがつくりました(下写真)。前日のアナウンスだったにも関わらず、学年の半分以上がLINEグループに入ってくれました。

 

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リモート体育祭のポスター

そして、当日のプログラムを決めていきました。体育祭でやる予定だった開会式、13の競技、閉会式までを通しでやることにし、オンラインでの置き換えの方法を探っていきました。

競技はオンラインでできるものとできないものに分け、難しそうなものは、動画を見ることにしました。H.AさんとA.Tさんのご家族が撮ってくれていた過去の体育祭ビデオをみんなで見ることにしたのが、「一直戦場(つなひき)」「ケツアツ測定(おしりで風船を割る)」「お嫁にもらって(花嫁さんの仮装をみんなで完成させる)」でした。また、学年演技は、前日に体育の先生に連絡し、休校になる前に撮影した動画を送ってもらいました。その時、リモート体育祭のことはお知らせせず、明日みんなで動画を見たいので、ということだけ伝えました。

 

それ以外の競技はオンラインでどうやるかを相談しながら準備をしました。開会式、閉会式も一通りやることにしたので、A.Tさんが校長先生役になり、はじめのあいさつと閉会式での全体講評、手作りの賞状と優勝杯での表彰をしてくれることになりました。また、私たちは59期生なので、H.Aさんが5と9のバルーンを準備してくれました。

 

競技をオンラインでどう置き換えていったのか教えてください。

例えば「ちょっと拝借(借り物競争)」は、学年カラーである緑の物を画面で見せるようにしました。競争ではなく、全員で緑色の画面を作り上げる、というイメージです(写真)。もうひとつ、5か9が入っているものを見せるというものもやりました。

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借り物競争の写真

「移動教室は大変」は移動教室に必要なものをカバンに入れながら走ってゴールするという競技なのですが、自宅でそれは難しいので、ジャージの上衣をはやくたたむという内容に変更しました。

「2人でお食事」は、2人3脚のパン食い競争なのですが、それを「みんなでお食事」にして、ちょうど15時頃だったこともあり、みんなでおやつを食べることにしました。

ブラックホール(玉入れ)」は、全員一定距離からゴミ箱に紙などをまるめて捨てることにしました。

「うさぎラッシュ」は大繩で8の字飛びを何回飛べるか回数を競うものなのですが、競技の音楽を流して、その間全員で飛ぶことにしました。

 

もともとの競技名もユニークですが、オンラインの置き換えのアイディアも面白いです。

準備が本当に楽しかったです。実際にできるかは不安でしたが、体育祭が大好きな4人なので、やったらなんとかなる!と思って準備を進めました。

 

5月8日当日の様子を教えてください

当日は、14:00からスタートしました。まず、開会式で使う音楽に合わせて、全員スマホの前で行進をしました。LINEは分割画面が6名だけしかできないので、私たちはみんなが歩いている姿をスライディングしながら見ていました。その後プログラム通りに、開会式、各競技、閉会式と進めて、全員で競技をしたり、動画を見たりしました。例えば借り物競争では、全員が緑色を画面に映し、画面が緑色になった景色には感動しました。また、学年対抗のリレーでは、これまでリレー選手をやってきた子たちに、いつもどんな気持ちで走っているかをインタビューしたところ、第一走者のプレッシャーや、バトンミスなどについて話してくれました。実際の体育祭だと忙しくてゆっくり話も聞けないので、オンラインで今回初めてゆっくりと話がきけたのは、逆によかったと感じます。体育祭は学年対抗なので、学年内では競争ではなく、みんなで楽しむ、という雰囲気でできました。終了時間は16:00だったのですが、休校中で久しぶりに会えたということもあり、その後17:30頃までみんなで話していました。みんなの写真を合成して集合写真もつくりました。

 

みなさんで楽しんだ様子が伝わってきます

参加した生徒達は、楽しかったと言ってくれました。次の日にあらためて「やってくれてありがとう」というメールをくれた生徒もいました。そういう反応を見て、やって良かったなと思いました。体育祭が中止になり、本来であれば体育祭をやっているはずの時間に一人でいると、「今頃体育祭やっていたんだな」と悲しくなりますが、リモートでもみんなの顔を見て一緒に色々な競技をしたり、話すことで楽しく過ごせました。体育祭が無くなってしまったその日が、楽しい日にできたのは、良かったです。ただこれはあくまでも、体育祭が中止になって寂しい気持ちを収めるためのもの。この状況が収まったらリアルな体育祭はいずれぜひやりたい。私たちはまだ今年度の開催をあきらめたわけではありません。

 

最後に、担任の宮下先生にもお話をうかがいました

 

先生方はリモート体育祭についてはご存知だったのでしょうか

私達は全く知らなかったんです。実施後、委員の4名は、体育祭担当の先生には報告したそうなんですが、私たちのところまでは伝わってきていませんでした。体育祭当日の5月8日は私も出勤していて、職員室では同僚の先生たちと体育祭の話になり、今頃生徒たちは落ち込んでいるよね。と生徒たちのことを気にかけていました。特に高校3年生の生徒たちは、学年演技もずいぶん早く仕上げていたので、並々ならぬ思い入れがあったと思うんです。だからすごく残念がっているだろうと思っていました。

その後始まった生徒とのオンライン面談で、リモート体育祭に参加した何名かの生徒から、オンライン体育祭が楽しかったという話を聞きました。それで、オンラインで写真を送ってもらったところ、すごくその写真が楽しそうだったので、良かったなと思いました。生徒達には、普段から行動力があると思っていましたが、正直ここまでと驚いたとともに、私たちが考えている以上に、生徒が学校行事を自分たちのものとして大切に、楽しみにしてくれているんだということがわかって、とても嬉しかったです(宮下先生)。

 

■  ■  ■  ■  ■  ■

 

インタビューをさせていただく前は、競技をオンラインでどうやったか、という部分に興味を持っていました。実際にインタビューをさせていただき、オンラインでの様々な工夫や、、オンラインならではのメリットもあることがわかりましたが、それ以上に、生徒さんたちの体育祭への熱い想いと、仲間を気遣う心、そして想いを形にできる実行力に感動しました。活動の形を変えるしかない状況下でも、想いがあればできることはたくさんある。そう思わせてもらえるインタビューとなりました。お忙しい中お時間をいただき、ありがとうございました。


#STEAM教育 #アート教育 #聖ヨゼフ学園 #リモート体育祭

 

これからの子ども達の発表の場はどうなる?

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この3か月、子どもたちの発表や表現の場はどうなったか

大人も子どもも、いつもどおりとはいかない3か月でした。できないことが増えた一方、オンラインでの新しい可能性も広がりました。学びや学びの場について、この3か月で何が足りて、何が足りなかったのか、もやもやと考えていたら「発表」や「表現」といったキーワードが浮かんできました。

 

学校に行けないと、学校という場で得られる発表や表現の場を得ることが難しくなります。これには、授業などで提示された課題に取り組むという、いわば公式なものと、友達どうし何かを見せ合うという、非公式のものがあるでしょう。

 

また、1つの学校という枠を少し広げた発表、表現の場としては、部活動の大会やコンクールがあります。人がリアルな場に集まらないと成立しないものは、今年は中止や延期になっていますね。

 

さらに、学校という枠とは直接関係ないコミュニティもありますね。習い事や友達、共通の興味、趣味のコミュニティに属している人もいるかもしれません。

 

ざっくりと表に整理してみました。

  学校 コミュニティ 社会
課題

提出物/グループワーク

部活動/大会/コンテスト 公募課題に応募/プロジェクト参加
自発 自由研究/探究/趣味、興味の共有

作品共有/知識共有

自主プロジェクト

/SNS発信など

まず<課題>カテゴリーについて

<課題/学校>は授業や学校の取り組みとして出される課題に取り組むものです。授業で問題を解くことや、テーマのもとに表現をする、グループで取り組む場合は、グループの成果を見合うケースと、グループ内で発言、表現しあうこともあるでしょう。

<課題/コミュニティ>は学校で一律に実施をするものではないが、学校の枠の延長、もしくは同年代で、同じカテゴリーの人たちで集まって課題のもとに取り組むものを指します。部活動とか試合、ある基準で評価される発表会やコンテストなど。学校外の活動も含みます。

<課題/社会>年代や属性を超えた世界で何かの課題に取り組んだり、プロジェクトに参加したりする。

「学校」「学校の延長」「社会」の順に、だんだん活動の範囲が広がるイメージです。

続いて、<自発>カテゴリーについて

<自発/学校>学校で、自発的に取り組むプロジェクトと、個人的に取り組んでいることを友達に共有する。

<自発/コミュニティ>学校という枠を超えたコミュニティで、自己プロジェクトや個人的に取り組んでいることを共有する。

<自発/コミュニティ>自己プロジェクトや個人的に取り組んでいることを広く一般に共有する。

自発的な表現やプロジェクトだと、課題を出す人や組織がないので、境界があいまいになりますが。

 

 もっと子ども達が安心して発信できる場を

リアルな場が設けられなくなり、一部インターネット上に設けられた時、少なくなりそうなのは、この中でどれかと考えると、<社会>の部分はもう場所が準備されていてほぼ問題なく置き換えられ、それ以外の<学校><コミュニティ>の部分が、少ないように感じませんか?

 

例えば学校で、一緒に課題に取り組んだクラスメイトの作品を見て「へー、こういう視点があったのね」と発見をするとか、友達の趣味や興味の話を聞いたりとか、安心、安全な場で自己を表現する機会が、この3か月、減っていると私は感じます。中学生以上だとクラスメイトとのSNSグループでやりとりをしたり、オンラインで授業をされている学校で、生徒どうしのコミュニケーションを意識されているケースもあると思いますが、全体としてはその機会が減っているのではないでしょうか。

 

学校が再開したら、インプットだけでなく、子どもたちどうしの発表、表現の場も、徐々に復活していってもらいたいです。そして、オンラインでもそういう場がもっとできたら!SNSYoutubeで誰もが発信できる時代ですが、中高生でも突然そこに飛び込むのはハードルが高く、リスクもありますよね。大人が大半のメディアやコミュニティでもリテラシー高く、堂々と発表している子どもたちもいますし、それは素晴らしいことだと思いますが、全員そこでチャレンジ!というのは、乱暴なことに感じます。やはりまずは安心、安全な場所で、試行錯誤をしながら表現のトレーニングをしてもらいたい。という視点で、良いなと思う事例を3つ紹介します。

 

サレジオ学院の中学2年生の生徒さん達が、この期間中に取り組まれた「俺の料理」は、オンラインで<課題/学校>を実現されています。

 http://www.salesio-gakuin.ed.jp/blog/diario/15063.html

 

兵庫県芦屋市にある造形教室「アトリエ Laugh & Rough」では、インスタグラム上で「ラフラフ美術館」を開催されています。教室に通っている人だけでなく、広くアート作品の写真を募集し、掲載することで、お互いが作品を見られる場をつくられています。(<自発/コミュニティ>といえるでしょう)

https://www.instagram.com/atelier_laughrough/?fbclid=IwAR0aDvy1cOq0FdliIx9YNgVRMpREXhDBea-ADE0mLyV8iA8XzbViGH7aRd8

 

ものづくりに関わる人達が、その記録を残すことを目的としてつくられたFabble<自発/コミュニティ>も、大きな共通の興味の中で、自由な表現のシェアがされています。

https://fabble.cc/

 

思うように外出したり、集まれない状況科でも、個々人の創作活動は続いていると思います。それをシェアできる安心、安全な場所は、工夫次第でオンラインでも色々とできるのではないでしょうか。

 

 #アート教育 #STEAM教育

世界中の美術館にオンラインで行ける!Google Art & Cultureのあるきかた

外出自粛要請が続く中、美術館にも行けない日々が続きます。そんな中、知人より教えていただいたのが、

Google Art & Cultureという、オンライン美術館です。

https://artsandculture.google.com/

こちらのサイトでは、世界中の美術館から提供されたコレクションの画像を見ることができます。美術館により、オンラインで公開している点数は違いますが、その合計点数は3万点以上だそう。スマートフォン用のアプリもあるので、ほぼ毎日、色々な楽しみ方をさせてもらっています。

 

美術館に何を求めてる?

もちろん、オンライン美術館は、実際に訪問するのと全く同じではありません。オンライン美術館が楽しめるかどうかは、普段、何を美術館訪問の目的としているかどうかによるのではないでしょうか。

 

私は、だいたい以下の3点を目的として美術館に行っています。

・新しい作品に出合うこと

・作品の筆致や形、色合いを楽しむこと

・作家の人生や目線に思いをはせること

そして作品を見ることと同じくらい、解説などの文章を読み、作家の人生やその作品にまつわる物語を知ることを楽しみにしています。

 

オンラインだと、さすがに筆致や色合いを楽しむには限界がありますが、

新しい作品との出会いや作家の人生については、十分すぎるほど味わえると感じます。

 

非常に個人的なナビゲーションになりますが、そのあたりに興味がある方向けの、Google Art & Cultureのあるきかたを、ご紹介します。

 

1.美術館から見る

まず、コレクションのページにいきます。ここには日本国内も含む、世界中の美術館、博物館が並んでいるので(2020年5月11日時点、実に1045の美術館、博物館が並んでいました!)、行ってみたい美術館をクリックします。

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例えばMoMAからは129点が公開されています。

artsandculture.google.com

気に入った絵をクリックすると(例えば、アンリ・ルソーの「夢」)

作品が大きく見られ、作品情報、作家情報を見ることができます。

artsandculture.google.com

 

2.作家で検索

この人の絵をもっと見たい、と思ったら、作家名で検索をすることもできます。

アンリ・ルソーは、25点が見つかりました。

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作家によっては1000点以上見つかります。これを、人気順、時系列順などに並べ替えることもできます。最近私が見つけて驚いたのは、モネの描いた波です。モネの作品は見る機会が多かったのですが、これは見たことがなかったです。

artsandculture.google.com

 

3.キーワードで検索

作家や美術館名以外にも、色々なキーワードで作品を検索することができます。

例えば、モネのように、波を描いた画家は他にいるのか?「wave」というキーワードで検索してみると、クールベも、波が主役の絵、描いています。そしてもちろん、葛飾北斎も。モネやクールベ北斎が描いた波を見た影響を受けているのかな、この時代の作家を作品の年代順に並べたら他にもに何か見つかるかな…など、色々楽しませてもらえます。

artsandculture.google.com

 

4.「トピック」から検索

トピック、というページからは、色や年代、技法などで作品を検索することができます。過去の企画展の紹介や、オンラインだけの企画もあります。特に色からの検索、お勧めです。

https://artsandculture.google.com/explore

 

オンラインと身体性について

Google Art & Cultureで遊んでいると、すごく不思議な感覚にとらわれます。例えば日本の美術館とアメリカの美術館が隣に並んでいて、もちろん私からは、日本国内の美術館が距離的に近いのですが、今はどちらも閉館中だから物理的に行けないのは同じで、でもオンラインだとどちらも同じように訪問できてしまう。この状況の中で、これまではすごく身体が置かれている場所に縛られていて、無意識に自分が行ける範囲から選択していたなあとあらためて思うのです。一方で、色々な国の美術館のコレクションを見ていると、同じような時代の作品があるにもかかわらず、その国らしさ、土地らしさが表れたコレクションだなあと感じます。自分が置かれている場所につながる、リアルな体験の場と、それがオンラインでつながる場、どっちもあるから面白いのかもしれませんんね。

 

今回ご紹介した以外にも色々な楽しみ方があると思います。ぜひ、お時間のある時に、楽しんでみてください。

 

#アート #アート教育

 

アートは今もこれからも全ての人に必要です

何でも手に入る世界から、そうでもない世界へ

ひとつ前の記事でご紹介しました、ものづくりの授業、MESH公式ブログに掲載していただきましたので、あらためてご報告をさせていただきます。田園調布学園の高校1年生を対象とした、選択制の授業でした。プログラムや、生徒さん達のプレゼン資料も一部見る事ができますので、よろしければご覧ください。

https://blog.meshprj.com/

 

こちらの授業では、前期と後期にそれぞれ1回ずつ、自分や家族の困りごとを探して、解決のためのデザインを行うのですが最初はアイディア出しに苦労する姿も見受けられました。ある生徒さんからは「もう世の中には便利なものがあふれているから自分達が考えられる新しいものなんてない」という声もあがりました。

 

たった半年前のことですが、遠い昔のように感じます。今はお金を出してもすぐには手に入らないものがいくつも思いつくような世の中になりました。一時的であることを願いますが、それでも毎日を生きていく私達にとっては、対処をしなければならないことも出てきています。

 

今までにないくらい、みんなのクリエイティブが発揮されている

このような状況下でも、面白い動きはたくさん出てきています。

中でもすごいなあと私が感じるのは、多くの人が、新しいことにトライしている状況です。オンライン会議、授業配信、それまで実施していなかった飲食店のテイクアウトスタート、習い事のオンライン化、マスクやシールド、防護服の手作り、素材提供、レシピ公開、ライバル企業どうしの連携、別業界の企業からの製品、生産ライン提供など、枚挙にいとまがありませんし、まだまだこれからも「そうきたか!」という新しい動きが出てくると思います。物理的移動や、物質的な制限がかかる中、それを補うまたは代替するために新しいアイディアが次々と生まれ、実行されている様子に感動する毎日です。

 

先日インタビューを掲載させていただいた、神奈川大学の道用大介先生は、3Dプリンタで打ち出せるシールドのデータを公開され、それを多くの方が活用されています。また、企業でも働き方に新しいルールがつくられたり、一人ひとりが安全に、快適に過ごせるように日々小さな工夫が重ねられています。メディアでもおうち時間の楽しみ方がたくさん紹介されていて、みなさんの豊富なアイディアと技術に驚かされます。

 

もちろん、必要にせまられて、ということも多いと思いますが、ここまでみなさんのクリエイティブがものすごいスピードで発揮されている状況って、なかなか無いなと思うんです。その理由については以下のようなことが挙げられるのではないでしょうか。

 

・正解が見えない状況下だからこそ「こうやってみない?」というアイディアを出しやすくなっている

・同じく正解が見えないからこそ「とにかくやってみよう」という同意が得られやすくなっている

・誰かが何かしてくれるまで待っていられないから、「つくる人」「受け取る人」という役割を超えなくてはいけない局面が多い。

 

つまり、普段は「自分はクリエイティブじゃない」と思っている方の大半は、クリエイティブだということです。そしてみなさんがこれまでにインプットしてきたことや試行錯誤してきたことが、今発揮されているんだと思います。仕事上の経験だけでなく、一つのものを様々な角度から見て考える経験や、何かを作ってみる経験も。これまでに蓄積してきたアートの力が発揮されているんです。

 

アートはこれからも全ての人に必要です

このような状況下で、アートや芸術の必要性について否定的に論じられるケースもあるのかもしれません。でも私はこれまでもこれからも、アートは全ての人に必要だと思っています。この先も全ての人がクリエイティブを発揮してより良い方向に向かうためには、アートというインプットは、やめてはいけないと思います。色々な形でのインプットをし、自ら手を動かしてアイディアを形にしてみて、納得いくまで作り直し、描きなおし、アイディアをさらして、得して前に進むのです!

難しいシチュエーションもあるとは思いますが、必要だという思いがある限り、それに代わる方法もたくさん見つかるはず。私もそのための新しい方法にトライしています。それはまたあらためてご紹介させていただきますね。

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#アート教育 #STEAM教育