経営におけるアートとサイエンスのバランスとは? 「世界のエリートはなぜ『美意識』を鍛えるのか」を読んで

みなさま、新年あけましておめでとうございます。

本年も、どうぞよろしくお願いいたします。

 

2018年、今年はより、アートの必要性が叫ばれる年になると思います。もう、ビジネスの世界では始まっていますね!

 

さてそんな年初にご紹介したいのは、山口周さんのご著書

「世界のエリートはなぜ『美意識』を鍛えるのかー経営における『アート』と『サイエンス』」です。

 

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山口さんは、大学で哲学、大学院で美術史を学ばれた後、広告代理店、コンサルティングファームを経験されています。つまり本のサブタイトルにもなっている、アート側から考える世界、サイエンス側から考える世界の両方を経験されているということです。

 

だからこそ、この本ではなぜアートがビジネスに必要なのかがとてもロジカルに説明されています。また、アートとサイエンスのどちらか、ではなく、ここにクラフトを加えた3つのバランスが、これからの経営には大切だと述べられています。

 

その背景として、山口さんは、今の日本の経営において、論理的で理性的であること(サイエンス)が直感的で感性的(アート)であることよりも高く評価されていることを挙げています。論理的思考(サイエンス)は経験的思考(クラフト)をカバーし、問題解決に貢献しているのに、そこになぜアートが必要なのでしょうか?

 

山口さんはその理由として、どの企業もサイエンスを重視するあまり、出てくる解が似通ってきて、差別化ができず、結果スピードとコストの競争となり、疲弊してしまうこと、世界全体がVUCAという、先が読みづらい時代になり、論理的思考による正解は役に立たなくなっていることなどを挙げています。

 

「論理的な推論については最善の努力をしつつも、どこかでそれを断ち切り、個人の直感に基づいた意思決定を適宜行っていかなければ、組織の運営は『分析麻痺』という状況に陥る」

という一文が、的確にそれを指摘していますね。

 

この状況を打破できるのは「超論理的」な意思決定と、「真・善・美」の要素を持ったビジョンで、そのどちらも、論理に直感や感性が加わることで実現することができ、そのためには美意識、感性を磨く必要がある、というご意見に、なるほど、と思いました。

 

本書には、ではどうやって経営にアートを持ち込むかという方法論についても、実際の企業や組織を例に挙げて解説されています。アーティスティックな人が経営のどのポジションにいるとうまくいくか、という事例が多いのですが、サイエンスやクラフトほど明確に言語化できず、ファクトを示しづらいものであるからこその組織構成があるようです。

 

また、感性の鍛え方についてもいくつか紹介されています。

 

この本は、ビジネスにアートが必要なのか?と懐疑的に思っている方にも、アートは必要だ!と確信している方にも、ぜひ読んでいただきたいです。おそらく前者の、論理的思考が得意な方にとっては、アートの果たす役割をロジカルに理解していただけると思いますし、後者の、おそらく感性、直感が優れている方にとっては、その思いが言語化されていると感じられると思います。そして、アートとサイエンスは相反するものではなく、うまく組み合わせることによって相互作用が起こり、他とは一線を画す、独自性を持ったものが生まれてくるのだと思います。

 

アートの重要性が言われ始めてから、マーケット、生活者優位ではなく、企業や提供する側がまず納得できるものをつくり、それから世に出すほうが良い、という主張をあちこちで見ることができます。生活者を無視するわけではなく、生活者に課題を求めすぎず、自分達の感性、直感を信じて、まず自分からこれ、どう?と示した後、その反応をもとに試行錯誤をくり返す、という流れです。VUCAな世の中、まず自分はどうか、という意思表示が大切になってくるのかもしれませんね。

 

そして、差別化が大切な時代、本書で紹介されている方法はもちろん、感性と直感を磨くためのインプットも、色々あったほうが面白いのではないだろうかと思います。

 

そのあたりをみなさんとも考えていければと思っています。

今年も大体週1ペースで更新していきますので、どうぞよろしくお願いいたします。