デザインを社会とつなげる!―近畿大学文芸学部文化デザイン学科

みなさんこんにちは。清水葉子です。

先日、日本インダストリアルデザイナー協会のツアーに参加させていただき、近畿大学東大阪キャンパスを見学させていただきました(過去2回のブログをご参照ください)。

最後に、施設を案内してくださった、文芸学部文化デザイン学科の先生方に、文化デザイン学科について、お話をうかがうことができました。

 

お話をうかがったのは、

文芸学部 文化デザイン学科デザイン系の

岡本清文先生と柳橋肇先生です。

 

↓お話をうかがったゼミ室

f:id:yShimizu:20171022105009j:plain

 

近畿大学文芸学部には、文学科(日本文学、英語英米文学)、芸術学科(舞台芸術、造形芸術)、文化・歴史学科があり、文化デザイン学科は20164月に開設された、新しい学科です。

 

www.kindai.ac.jp

 

文科系の学部の中にあるデザイン学科。どのような学科なのでしょうか。

 

文化デザイン学科の立ち上げにあたっては、社会の幅広い分野で、デザインが必要とされているという認識が背景としてあったそうです。仕事の領域を超えてデザインが必要とされている状況の中で、日本のデザイン教育は技術を教える比重が高く、デザイン的な思考を育てたり、デザインについて幅広く学べる機会が少ないそうです。

 

「日本のデザイン教育は、ずっとデザイナーを育てようとしてきたと思うんです。ただ少し発想を変えると、デザインを発注する側、クライアントが洗練されて、センスがあると、とても良いものができるのです(岡本先生)」

 

「大学のあるここ東大阪にも中小企業はたくさんありますが、デザイン部を抱えているような企業はほとんどなく、最近は、自社でもオリジナル商品をつくりたいなど、デザインに対するニーズは出てきています。必然的に外部に発注する形になるのですが、デザイナーの選び方からわからない場合が多くみられます。そういった会社に、営業でも企画でも、ポジションはなんでも良いのですが、デザインを理解している人材がいると、社内の企画からデザイナー選択、プロセス管理までがスムーズにいくと思うのです。もちろん実際に手を動かす人も育てたいと思っていますが、ひとつの人材イメージとして、こういう形もあると思っています(柳橋先生)」

 

優れたデザインは、発注者があってこそ、生み出されるものですよね。より多くの人が良いデザインを享受するために、デザインをプロデュースする役割は、これからもっと必要とされそうです。

 

この学科での学びは、もう少し広い範囲でも応用できそうです。

「これからの時代、営業職であっても、クライアントとの会話の中で出てきたアイディアをわかりやすく形にできたほうが、仕事が進んでいきますよね。アイディアやプロセスをぱっと図解する力は、全ての仕事で発揮できると思います(岡本先生)」

 

では具体的に、どのような教育が行われているのでしょうか。

文化デザイン学科は、感性学系、デザイン系、プロデュース系の3つの系があるのですが、3年次前半までは系を横断する形で幅広く学んでいきます。

 

 

www.kindai.ac.jp

感性学系では、人の活動や行動に影響を与える感性について知識を深めるため、日本と西洋の文化史、感性文化、視覚文化、表象文化論、などをしっかりと学びます。

デザイン系ではデザイン史とデザイン論について、実習も含めて学びます。プロデュース系では、コミュニケーション、プロデュースについて学んだあと、接続する社会についても様々な角度から学んでいます。産学連携プロジェクトも同時進行で進んでいて、たとえば「ホスピタルアート」のプロジェクトでは、病院と連携し、美術展や演劇パフォーマンス、音楽会などを院内で開催することで、患者さん達を精神的にも癒す活動をされているそうです。

 

デザインの基礎を技術も含めしっかりと学び、デザインが社会とどうつながっていくのかを考えながら実践的なプロジェクトに関わることで、デザインの社会への応用やプロデューサー的感覚を身につけていけるのでしょうね。岡本先生は建築、柳橋先生はプロダクトデザインと、それぞれ実務のご経験があることも、デザインと社会の接続に大きな効果をもたらしていると、お話をうかがっていて、あらためて思いました。

 

卒業後の進路としても、デザインはもちろん、ビジネス、起業、コミュニケーション、マーケティング、マスコミ公務員など、幅広く想定されているそうです。 

ツアー参加者の中からも、企業の様々な場面でデザインの思考、能力が求められているという実感をともなった感想、意見が多く出されていました。

 

ツアーに参加させていただき、また、デザインについての色々なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。今は1年生と2年生の2学年が在籍する新しい文化デザイン学科。今後どのように学びが進められ、卒業生がどのように巣立っていくのか、楽しみですね。