アートとサイエンスが影響しあって未来ができる(未来と芸術展より感じたこと)

みなさまこんにちは。清水葉子です。

2019年11月19日より、森美術館で開催されている、

「未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命――人は明日どう生きるのか」
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/index.html

に行ってきました。

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この展覧会では、都市、建築、ロボット、衣、食、生活、医療など様々な分野で、新しい技術の可能性について模索するアート作品が多数展示されていて、とても見ごたえのあるものでした。

私は大学で建築を学んでいたので、特に前半の都市の部分を面白く見ていたのですが、小単位のユニットを組み合わせて街や建物をつくる時に3Dプリンタが使われたり、自動運転の技術が取り入れられたりしているのが面白いと思いました。

 

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こういった未来都市のアイディア自体は、実は1960年代に、かなり近い形で描かれているのです。日本の当時の若手建築家達によるグループ「メタボリズム」は、1960年代にすでに、新陳代謝可能な建物や都市を描いていましたし、同じ時代にイギリスで活動していた建築家グループ「アーキグラム」も、空間ユニットを組み合わせた街や、ネットワーク化された「コンピュータ・シティ」を発表していました。まだコンピュータもあまり普及していない時代にそういう世界を描けること自体がすごいなあと思うのですが、半世紀経って、それに技術が追いついたんだと思うと、本当に感慨深いです。

建築だけでなく、他の分野もそうで、手塚治虫さんが描いた世界が今現実になろうとしていたり、SFの世界で描かれていたような遠距離でのモノの移動が技術により可能になりつつあったりと、人が過去に描いた世界が、技術により実現される日も近いんだなあ、と感じました。

(下の写真はお寿司をデータにして送ることで、遠隔地でお寿司の形と味を再現できる3Dプリンタです)

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さて、これらを見て私が感じたのは、やっぱりアートってすごいパワーを持っているし、アートとサイエンスの相乗効果ってすごいな、ということです。先日読んだ本「「なぜ?」から始める現代アート」にもあったのですが、サイエンスは、何か新しい物や説を世に出す時に「1万回同じ実験をして、1万回同じ結果」であることが求められるそうです。それに対してアートは、それを見る人に問いを投げかけたり、提案をすることができる。誤解をおそれずに言えば、それを受け取った人がどう感じるかに、数学的根拠はいらないのです。その分、アートは早く実験ができるし「できるかどうかはともかく、こういうのがあったら面白いんじゃない?」というある種の妄想もふくんだ提案ができるわけです。

今日の展示を見て、先人たちの自由なアート表現があったからこそ、サイエンスが追いついてきたのではないかなあ、と感じました。

同時にまたその技術を起点に新しいアート表現が出てきて、今叶えられない部分はまた新しい技術が追いついて、というように、アートとサイエンスは影響しあっていくのではないのでしょうか。

展覧会は3月29日までです。展示量が多いので、じっくり見たい方は、余裕を持って行かれるのがお勧めです。

 

森美術館 #未来と芸術展 #アートとサイエンス