北欧の事例から日本の教育空間を見つめなおす―垣野 義典先生インタビュー その1

みなさんこんにちは。清水葉子です。

今日は、教育空間について、紹介したいと思います。

 

先日ブログ「子どもの主体性を伸ばす空間とは」にて紹介をさせていただいた、東京理科大学 理工学部 建築学科 准教授 垣野義典先生。フィンランドスウェーデンの教育環境について、そして、子どもの主体性、自主性を伸ばす教育空間について、もっと知りたい!と思いまして、あらためてインタビューをさせていただきました。私の痛恨のミスで、写真を撮り忘れてしまったため、先生のプロフィール写真を掲載させていただきます(笑顔も素敵な先生です!)。

 

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垣野先生は、大学、大学院からずっと学校建築を研究されています。その対象は、日本はもちろん、フィンランドスウェーデン、オランダ等多岐にわたり、特にフィンランドは、アアルト大学の客員研究員として、ご家族とともに3年間を過ごされています。娘さんも現地の公立保育園に通われたこともあり、研究者の視点だけでなく、保護者としても、フィンランドの教育を経験されました。

 

たくさんご紹介したいことはあるのですが、「学校という場の位置づけ」「主体性を育てる」「ICTの可能性」という3つのテーマでご紹介していきます。

 

学校は「もうひとつの家」という考え方

前回のセミナーでも、今回お話を伺った中でも、一番北欧の学校と日本の学校の捉え方が違う!と思ったのが、この部分です。保育園、小学校(場合によっては中学校も)は、「もうひとつの家」というとらえ方をされています。

 

フィンランド語で保育園は「日々の家=パイヴァコティ(Päiväkoti)」と呼びます(パイヴァ(Päivä)=日々、コティ(koti)=家)。共働き家庭が多いフィンランドでは、社会で子どもを育てるという意識が強く、保育園がもうひとつの家がわりとして機能しているそうです。

フィンランドの保育園の面白いところは、ホームエリアという考え方があって、例えば小部屋や大部屋がある中で20人くらいの子ども達がいて、そこを3人の大人が、面的に安全管理をするような構成になっています。日本だと、大きい部屋に見通しをよくして子どもを配置しますが、子どもの居心地の良さのほうが優先されています(垣野先生)」

小部屋に分かれていることで、家に感覚が近く、いつもみんなと同じ行動をしていなくても、許容されやすくなるそうです。例えば午睡の時間、寝れない子はこっそり部屋を出て先生と工作をしても良いそうで、日本の「眠くなくても目をつぶって寝ていなさい!」という環境とは、だいぶ違うと感じました。

 

日本では、親も含め、学校や幼稚園、保育園というのは、社会性を育てる場所、と考えていると思います。そして、「社会性=集団で周りに合わせて行動できる」ととらえられる傾向も強いのではないかと。でも社会性って本当にそうなのか。そして周りに合わせた行動ができれば、主体性が本当に育つのか?人生の早い段階でのこの違い、私は親としても、とても考えさせられました。

 

小学校に入ってからも「もうひとつの家」という概念は、続きます。フィンランドスウェーデンで空間の仕切り方は少し違うようですが、基本スタンスは同じです。

 

まずフィンランド。それぞれの教室内で授業が展開されることが多いそうですが、教室内にソファを置いたりマットを敷いたりして、同じ空間内でも場の雰囲気に違いがつけられています。フィンランドは2010年より「Finland on the move!」という、授業にもっと動きを取り入れようという運動がおこり、グループ学習、ペアワーク、個別学習などが多く取り入れられているそうなのですが、そういった活動の時にソファやマットを使うシーンもあるそうです。

↓下2枚 垣野先生撮影のフィンランドの小学校教室

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空間リテラシーの高さが、豊かな空間をつくる

また、教室の壁の掲示、装飾は、担任の先生に任されていて、同じ大きさの教室でも、教室によってそれぞれ雰囲気が変わるそうです。

フィンランドの教室は、運営が教師個人個人に任されているので、教師によって、または男性と女性の教師で差がみられます。女性の先生のほうが、綺麗にインテリアのように装飾される印象です。 男性は、より簡素にあまり作品も貼りません。かわりに、ギターや自分の得意な楽器なんかをディスプレイする先生もいます。壁が足りなければ、天井からつり下げたり、工夫をこらしています(垣野先生)」

 

他教室との違いがあると、より自分のホームエリアだと感じることができるのかもしれませんね。でも「自由に装飾していいよ」と言われて、先生方は困ることはないのでしょうか?

 

フィンランドでは、経済的に中流の家庭でも、結構な割合で自宅とは別に夏小屋を持っています。そしてそのほとんどは、セルフビルドなんです。自宅も自分達で改装するのが趣味のようになっていて、20年くらいかけて少しずつ改装し、完成したら売ってしまいます。そこが日本人の感覚と違って、完成してしまったらつまらないという感覚があるようです。子どもの頃からそういう環境に触れて育っているフィンランドの人たちは、日本人よりも空間リテラシーが高いように感じます(垣野先生)」

 

自分で空間を整えることが得意というか、比較的あたりまえととらえられているんですね!(次回につづきます)

 

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