表現するプロセスで愛着を持つ。自分ごとになる。

コンピュータと手を行き来する体験

昨年から今年にかけて、高校生を対象としたものづくりの授業に関わらせていただきました。全6回、それぞれ約2時間半の連続授業です。

私たちの生活の色々なシーンに使われ始めているIoT(Internet of Things モノがインターネットに直接つながる仕組み)をテーマに、まず仕組みを考え(MESH™という、プログラミングの知識がなくても使えるIoTブロックを使いました)、それを段ボールなど身近な材料で試作してみることを行いました。次に、それを実際に、より使いやすいデザインにすることを考えました(課題を変えたグループもありました)。3DCADを使って形をつくり、それを3Dプリンタで出力しました。課題は、学校生活や家事など、比較的身近なものをテーマに選んで、グループで話し合いと制作を進めてもらいました。生徒達は、コンピュータ上で考えたものを自分の手でつくり、またそれをCADでデータにした後、3Dプリンタを通して物体として手に入れる、という、コンピュータとその外側を行ったり来たりする体験をすることになりました。

 

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振り返ってみると、この体験は頭の中のイメージを取り出す行為にも少し似ていますね。授業の前半、段ボールで試作した時も生徒達はすごく楽しそうでしたし、後半、3Dプリンタで出力されたものを前に、生徒達の顔がぱっと輝いていたのは、なんというか、理屈じゃなく、実体にする喜びってあるんだなあと感じた瞬間でした。

 

愛着を持つ。自分ごとになる。

そして1年間授業に関わらせていただき、一番うれしかったのは、生徒たちがだんだん、自分達がつくったものに愛着を感じてきているな、ということがわかったことです。自分が関わっているものに愛着を持つと、ここをもっとこうしたい、という気持ちが内側からわいてきます。はたから見ていて、もう充分素晴らしい作品だと伝えても、この部分に納得がいかないから、と時間ぎりぎりまで作り直している姿や、振り返りで、ここがどうしてもうまくいかなかった、と書いてあるのを見て、授業に関係なくこのプロセスが自分ごとになったんだなぁ、と思いました(このねばりに最後までお付き合いいただいた担当の先生に感謝しています)。

 

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自分の手で何か表現してみることには、これまで書いてきたように、考えを整理したり、色々な角度から考え直したり、アイディアを他の人に伝えたり、また他の人からフィードバックをもらったり、という効果に加え、そのプロセスを通して、取り組んでいるテーマがぐっと自分に引き寄せられ、愛着を持って仕上げていけるようになる効果があるように思います。教育現場においてこの体験を実現するには、やはりアート、表現活動が一番適しているのではないかな、と思うんです。(その表現における個性、という部分については、また次の機会に書かせていただければと思います。)

 

↓田園調布学園さんでの授業については、MESH公式ブログに掲載していただきましたこちらをご覧下さい。

https://blog.meshprj.com/entry/case_200414_1?fbclid=IwAR3jGJxXyM2TNrwwIffqXjppy9KCqdzGbUu94pc9kWjl0PvSP4k8VCyl9wo

 

 

#STEAM #アート教育