教育とアートについての本 その1「エグゼクティブは美術館に集う」

最近、美術教育についての本をいくつか読んだので、面白かったものをご紹介します。

まずは、美術鑑賞についての本「エグゼクティブは美術館に集う」

http://amzn.to/2e1twBZ のご紹介です。

 

なぜニューヨークのビジネスマンは、朝早く美術館で美術鑑賞をするのか、という考察から、本書は始まります。

教養、心身のリラックスの他に、美術鑑賞により、脳や思考力、問題解決能力が育つのではないか。美術鑑賞とは、作品と自分の対話なのではないか、そして、美術作品というのは、自分を映す鏡なのではないか、という論が展開されていきます。

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美術館に飾られるような、有名で、語りつくされている作品を鑑賞する時は特に、大人は、その解釈に正解を求めてしまう部分があると思います。そして、予備知識が無いと作品を楽しめない気持ちになり、つい美術館から足が遠のいてしまう。

 

一方で、美術に正解なんて無い、という考え方もある。もっとパーソナルに、自分と作品の距離や見る角度を自分で決めながら、時には作品に入り込みながら、浮かんでくる考えには全部OKを出すことができれば、これまで以上に美術鑑賞は楽しめるし、より多くの人が色々な楽しみ方をすることができるのではないかなあ、と感じました。

 

この本を読んで、大学生の時、イタリアで巨大な石造の建造物を見たときの感覚を思い出しました。例えば、白と黒の大理石で繊細な模様がつくられた建物や、人間のスケールを完全に無視した巨大な教会は、それを見ている私に、お前は何者なんだと言っている気がしました。そして、スペインで見たガウディの作品には、わけもなくうきうきした気持ちにさせられました。

 

傍観者じゃなくて当事者になること、そして誰もが自分なりの立ち位置や感覚を持っているという状況があると、美術鑑賞って、もっと楽しくなるのかもしれません。

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「セカンドクリエイター」というとらえ方

キングコング西野亮廣さんの「魔法のコンパス」面白かったです。既存の仕組みを疑う視点がとても鋭いし、その上で思いついたことをとにかくやってみるのが良い!実践は理論を強くします。まさに。

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中でも面白かったのは「セカンドクリエイター」という存在のとらえ方。

クラウドファンディングサイトの西野さんの投稿に同じ説明があったので、以下に引用します。

https://wesym.com/ja/projects/nishino/articles/1142/

<以下引用>

今、エンターテイメントの周りには3種類の人がいます。
「クリエイター(表現者)」と「ファン(お客さん)」と、そして「お客さんなんだけど、表現に参加したい人」です。
僕はこの人達のことを『セカンドクリエイター』と呼んでいます。

実はセカンドクリエイターは昔から存在していて、たとえばラジオでいうところの『ハガキ職人』が、それにあたります。
今だと、たとえば、このクラウドファンディングに参加している、あなたのような方々。

そのセカンドクリエイターが、SNSYouTubeやニコ生やツイキャスの登場で活動(発信)しやすくなった時代が今で、純粋なお客さんは減り、セカンドクリエイターが増えた為、クリエイターに求められるのは「お客さん」と「セカンドクリエイター」両方に刺さるコンテンツだと僕は考えております。

<引用おわり>

 

確かにみんなが発表や表現の場を持てるようになってきた。「恋チュン」をみんなで踊ってみたり、ライブの感想をつぶやいたり。100%受け手の人のほうがもしかして少ないんじゃないかな。そうなると、次には「セカンド」としてできることの上限を設けるのではなく、セカンドの人もメインを凌駕するような爆発を期待したくなりますね!メインクリエイターの人たちには脅威かもしれないけど、セカンドクリエイターのリミッターを外せるような教育が、できたらいいですよねー!

文化祭にて、表現の動機について考える

文化祭シーズンです。今年は文化祭自体はあまり見学できていないのですが、準備シーンにはいくつか遭遇しています。先日、神戸女学院の生徒さんと話す機会があったのですが、1年前から段ボールなどの材料を集めてためている、とか、新学期始まってからは文化祭最優先だった、とか、灘の文化祭は(春なのですが)一度見た方がいい、クラブの発表しかないのにすごくもりある。鉄研がとくにすごい。サッカー部のお化け屋敷もすごい、などのお話をテンション高めにしてくれました。

 

こういう文化祭に対する熱を見ていると、この動機ってどこからでてくるんだろうな、と思います。何かの賞を目指しているわけでもないし、稼ぐことが目的でもない。体裁を整えなくちゃ、というわけでもない。

 

きっと、自分たちの何かを表現したい!伝えたい!お客さんを楽しませたい!ということなのでしょう。そして学校での色々な活動の中でも特に「自分たちのものだ!」という意識が、強いんでしょううね。ちゃんと自分事になっているからこそ、夜中までの作業も、徹夜も、ぜんぜん気にせず没頭できるんでしょう。

 

写真は、3年前のものになりますが、東京都江東区にある女子校、中村中学校の文化祭での展示です。なんとトイレットペーパーでのウェディングドレスをつくったそうです制作。大変だっただろうなー。でも、楽しかったんだろうな♪

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伝えたい思いを演劇で伝える。(大阪国際大和田中学校の教員劇)

先日、大阪府守口市にある、大阪国際大和田中学校の、先生方による劇を見学させていただきました。写真もお預かりしましたので、掲載します。毎年、中学校の文化祭で披露されているそうです(毎年違う内容で10年以上継続)。

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こちらの写真に写っているのは全員、中学校の先生方。生徒達になりきっていますよね!脚本も先生が書いたオリジナルです。タイトルは「友だち」。クラス内のある生徒の言動に怒った生徒が、ちょっといじわるのつもりで始めたことが、SNSを使うことで拡大してしまう、でも、あることがきっかけでクラスがまとまっていくというもの。いじめをテーマとした重めの内容なのですが、面白いシーンもたくさんあり、笑いながら真剣に考えていける内容でした。

例えば「あいつちょっとむかつくよね、みんなで無視しない?」みたいなセリフもあえておもしろめに言っちゃうんですが、生徒達は笑いながらも結構まじめにうけとめている風でした。

まじめに「いじめはいけません」と指導するよりも、こちらのほうが生徒にまっすぐ伝わっているなあ、というのが実感です。もちろんそのためには、先生方が生徒達の信頼を得ていることが大前提なのでしょうが、先生方の登場シーンに沸く生徒達の様子で、間違いなく先生方は愛されている!と感じることができました。

演劇という形で思いを伝える。生徒さん達の指導もある中ご準備がとっても大変だったと思いますが、とても良いなあ、と思いました。

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学校、教育とアートについて発信していきます

みなさまこんにちは。清水葉子と申します。こちらのブログでは、教育、学校とアートについて発信をしていきたいと思います。アートの定義は少し広めにして、美術だけでなく、色々な表現、デザイン、技術、創造的なもの、について紹介していきます。

仕事柄、学校を訪問させていただくことが多く、これは面白い!アートだなあ、と感じることがあるのでそれを紹介したい!ということ、

教育におけるアートの位置づけや効果についてもっと体系的に考えてみたい!ということ、

この2つがブログを始める動機です。性格的にあまり計画的にアップできないかもしれませんが、スタートしてからペースをつかんで決めていきたいと思います。

よろしくお願いいたします。