教育とアートについての本その4-本当はすごい”自分”に気づく 女子大生に超人気の美術の授業

アートセラピー」って言葉、聞いたことがありますか?

私はこれまであまり良く知らなかったのですが、こちらの本を読んで、その意味や効果が少しわかったような気がしています。

 

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東北芸術工科大学で美術のワークショップを中心とした講義を行われている有賀三夏さん。本書ではその具体的な内容とともに、アートは人にとって、どんな意味を持つのか、ということをわかりやすく解説してくださっています。

 

-美術の授業には単に「美しいものをつくる」というだけでなく、「制作を通じて自分自身と向き合う」という側面があります。それをカウンセリングに活かす手法を「アートセラピー」といいます(本文より)-

 

アートセラピーとは、うまい、下手に関わらず、何かを表現することに没頭すること、制作を通じて自分と向き合うこと、それによって、自分でも気が付いていなかった自分の考えや視点に気が付くことだと、有賀さんは解説しています。

 

私も、無心になって何かを作っている時、幸せな気持ちになります。そして上手にできたかはあまり関係なく、手を動かして何かをつくっていること自体が楽しい場合が多いな、と思います。そして、忙しい時に限って何かつくりたくなります。これは無意識に、心が求めていることなのかもしれませんね。

 

また、アートは、生きる力を養うものだと本書では述べられています。身近なもので何かを作り出すことができるようになることが、生きる力につながること、また、アートを通して「型にはまらない柔軟な考え方や、さまざまな可能性を探る思考が育てば、日常生活の中でつらいことがあっても、それを乗り換える力になる」と、有賀さんは述べています。

 

アートで自分を知り、柔軟さと生きる力を育てることができるとしたら!そうしたら、もしかすると、アートは教育の中心あるべきものなのかもしれませんね。

 

教育とアートについての本その3 「今日の芸術」-芸術をすべての人に

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アートは特定の人でなく、どんな人にも必要だ!と、最近強く思っています。

先日もそんな話をしていたところ、岡本太郎さんの主張と似ているということで、こちらの本を紹介していただきました。

失礼ながら目力の強いおじさまという印象しかなく、岡本太郎さんの文章は初めて読んだのですが、とても共感できるものでした。

 

この本では、全編にわたり、全ての人が芸術に関わるべき、つまり、創造活動をするべきだ。ということが述べられています。

 

人はだれでも「現在、瞬間瞬間の生きがい、自信を持たなければいけない、そのよろこびが芸術であり、表現されたものが芸術作品なのです。」

 

というように、うまいとか下手とか他人の真似ではなく、自分の内側からあふれるものを表現するように、といったことも、繰り返し述べられています。

 

でも芸術は教えられるものではないそうで。

「芸術には教えるとか、教わるとかいうようなことは何ひとつないのです。ただ私はこの本全体をつうじて、あなた自身の奥底にひそんでいて、自分で気がつかないでいる、芸術にたいする実力をひきだしてあげたい」それがこの本の目的だそうです。

 

そのために、これまでの芸術の解釈、新しいとはどういうことか、今の時代(当時ですから約40年前)について、色々な角度から解説がされ、後半には子どもが芸術に興味を持ち続けるにはやり方を教えるのではなく、環境を与えるのがよい、といったことが述べられていました。その切り口や視点がとても面白くて、現代にも通じる部分がたくさんありました。

 

全てのものを前提条件なく、時に批判的に、でも真正面から見て論じることができる太郎さんだからこそ、みんなにこの自由を感じてもらいたい、型にはまらずに表現してほしい。と思われたのでしょう。そこには人に対する温かいまなざしがありました。そして、やり方を教えるのではなく、環境を与え、自分でやってみたいという気持ちになるのを待つ、というのは、人の持つエネルギーを信じているということで、芸術だけでなく、全ての学びにつながるのではいか、と感じ、そういうスタンスが、いまだに新しさを感じさせるのかな、と思いました。

 

 

子どもたちが主役の学校建築(小嶋一浩先生のこと)

今日は、建築家の小嶋一浩さんのことを書きたいと思います。

私が大学に入った時、小嶋さんはその大学の先生でした。(なので、小嶋先生、といったほうが私にはしっくりきます。)

建築を学びたい!と大学に入ったものの、建築についてほぼ知らなかった私にとって、小嶋先生は初めて出会った建築家であり、建築とは何かについて教えてくださった方でした。先生の建築意匠の授業はとても面白かったです。そして、建築を、そこでのアクティビティ、人がどう動くか、を一番に考えてつくるという概念も、とても新鮮なものでした。それは、この部屋は何に使うか、という単純なものではなく、とにかく人が中心にいて、その動きを自然にし、人が楽しく過ごせるように建物をつくっていく、というものでした。ちょうどその頃千葉に打瀬小学校が完成し、私の、学校の建物はこういったものである、という概念をぶち壊されましたね。。。(写真はすべて、シーラカンス&アソシエイツのホームページからお借りしています)

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もう20年前ですが、今も全く色あせない。というか、アクティブラーニング、授業の在り方や教室内での家具配置が議論され始めた今。やっと時代が小嶋先生に追いついた、といえるでしょう。(10+1のインタビューもぜひごらんください)。

10+1 web site|学校建築の経験と展開|テンプラスワン・ウェブサイト

その後も多くの学校建築に関わられた小嶋先生。なるほど。先生が解くとこういう答えになるのか、と、いつも新鮮な気持ちで拝見していました。

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実は私が今教育に関わる仕事をしているのも、小嶋先生の影響があるのかもしれないなあ、とあらためて思っています。

色々なことを教えていただき、本当にありがとうございました。

ご冥福をお祈りいたします。

C+A - Coelacanth and Associates

シーラカンスアンドアソシエイツのホームページ。掲載写真はこちらからお借りしました。学校というカテゴリーから色々なプロジェクトを見ることができます)。

人生をデザインできる場所(KANDAI Me RISE<関西大学梅田キャンパス>)

本日、縁あって、今年10月にオープンしたばかりの関西大学梅田キャンパスを見学させていただく機会をいただきました。

http://www.kansai-u.ac.jp/umeda/index.html

 

梅田駅から北に5分ほど歩いたところにあり、1階にスタバとTSUTAYAが入っているおされな建物です。

 

学生向けの講義室、キャリアセンターが上階にありますが、カフェ、書店以外にも、大学の外に開かれたコンテンツが多くあります。

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こちらは3階にある、社会人向けのコワーキングスペースです。wifi、電源備えていて、大学関係者以外の人も、個人で月6,300円で契約し、利用することができます。色々なジャンルの書籍がおいてあり、自由に読むことも。つい本を読みふけってしまいそうですが。ミーティングルームもあります。

 

そして写真を取り忘れましたが!2階には、スタートアップカフェがあります。スタートアップカフェにはコーディネーターの方達がいらっしゃって、起業したい関大生の相談に乗るだけでなく、他の大学の学生や大人の起業相談にも、なんと無料で乗ってくれるそうです。福岡市も自治体でスタートアップカフェをされてますが、大学がここまでオープンに提供されるのは全国で初めて?支援してくださる企業との連携もあるようです。

大学を卒業して、企業に勤め、定年まで勤めあげるとか、ほぼ幻想になってきている今、たとえすぐに起業しなくても、その時が来たら起業できるとか、そういうつながりを持っておくって、本当に大事ですよね。私もいくつか自分で仕事を受けて確定申告した経験くらいはありますが、いざ起業となると、さっぱり。これからそういう知識はますます必要になってくるし、卒業生のよりどころにも、なりますね。

このほかにも社会人向けの講座などが開催されています。

学生も、大人も、自分の人生をデザイン、リ・デザインできる、素敵な場所だと思いました。

中高の美術の授業時数は、試行錯誤をするには少なすぎる!

週末、奈良芸術短期大学の学園祭を見学させていただきました。(奈良芸術短期大学)洋画、日本画、陶芸、染織などのコースがある芸術短大だけに、学生さん達の作品展示がとても面白かったです。もちろんいわゆる作品としてつくられたものも良かったのですが、習作というか、同じ対象のデッサンや、色々な画法が試された作品群もあり、それに心惹かれました。

 

美術やデザインって、一度描いたりつくって終わり、ではなく、やってみて、うまくいかない部分にもう一度トライしてみるとか、色々な技法を試してみて、作品にあった技法を見つけるという、試行錯誤のプロセスが、とても大切だと思います。建築でもエスキス図面、スタディ模型という表現がありますが、何度も何度もつくってみて、より良いものを探っていくというプロセスを踏みます。

芸術系の大学ではもちろんそういったことはできるのですが、却って中高の美術の授業では、どうでしょう?

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文科省ホームページの資料よりグラフ化。単位は時間。

中学校学習指導要領:文部科学省

中学の学習指導要領をグラフ化してみました。年間の時間数でわかりづらいかもしれませんが、ざっくり、国語、数学、外国語が週4時間、理科、社会、保健体育が週3時間、技術、家庭科が週2時間、音楽、美術が週1時間と見ていただけると思います(中1だけは1時間+αという感じです)。私学になると数学や英語が週5時間とか、6時間に増えたりしますが、美術や音楽はほぼこんな状況ですね。高校になると音楽、美術に書道も含めた中から1つ選んで週2コマ、という感じでしょうか。少なっ!

 

この少ない時間内で、同じ作品にリトライできるか、また、いくつか習作をつくって、良いものに近づけられるでしょうか?

 

私は、そういう学校、見たことないです。1年間でいくつかの作品をつくってみて、あとは教科書で美術史や作品を学んで、といったところではないでしょうか。そうなると、美術の時間は、ちょっと美術に触れてみる、体験してみる、という場にしかなれないですよね。数学や英語は宿題も再テストもあったりするので、それも含めると本当にすごい差です。

 

大人になって、なんとなくアートに近づきがたいと思う人が多いって、実はこのあたりの影響もあるのではないでしょうか。

 

他の教科とのコラボでそれを解消しているケースもありますが、日本全体で見ると、こんな状況です。試行錯誤する力を育てる機会を、もったいないなー、と思ってしまいます。

教育とアートについての本その2 「プレイフルラーニング」

先日、この本の著者の1人である上田信行先生の講演を聞く機会に恵まれました。

「教育にはアートが必要」「Love Challenge-とにかくやってみる、失敗しても変化を楽しむところに学びがある」「アートは問い、デザインは問題解決」などの言葉がとても印象に残っているのですが、なによりも、上田先生のキラキラしたまなざしと笑顔が印象的でした。

 

上田信行先生と、中原淳先生の対談形式で展開される本書は、上田先生の人生を中原先生がインタビューにより明らかにしていく、というプロセスをたどります。学びたい!と思ったら即行動でアメリカに行かれたり、理想の学校をもとめてご自身でミュージアムを建設されたりという、わくわくするような上田先生の人生をなぞりながら、「プレイフルラーニング」とはいったいどんなもので、どのような経緯でその概念が出来上がったのかがわかりやすくまとめられています。

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図書室での展示方法が、本好きの生徒を増やした!(麗澤瑞浪中学校・高等学校の自学センター)

みなさんの学校の図書室って、どのような場所でしたか?何冊くらいの本がありました?読みたい本はありましたか?

 

本日は、岐阜県にある、麗澤瑞浪中学校、高等学校の図書室「自学センター」をご紹介します。こちらには、3万冊の本があり、そのうち2万7千冊が開架書架にあります。そして毎月約130冊、新しい本が入るという、とてもうらやましい環境です。

でもそれだけでなく、その展示のセンスが素晴らしい。

司書の先生によると、色々なテーマでまとめて展示することで、ずっとある本でも手にとってもらいやすくなるそう。

 

まずは月のテーマ展示。見学させていただいた9月は「しくみのはなし」が開催されていました。いつも当たり前に使っているものや、動くことが当然と思っている自分の身体、自然、そして世の中の仕組みなど、驚きのしくみを知る本を集めているそうです。

これは月ごとに変わり、今月は「宙を見上げる 空から眺める」7月は「青に染まる」など、なんだか興味をそそられるタイトルばかり。

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そして、映画やドラマの原作本コーナー。「君の名は」「ボクの妻と結婚してください」など、現在まさに公開中の作品も!映画館で配布されているリーフレットを一緒に展示してわかりやすくされています。

 

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そしてそして、おもしろ本コーナー。

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漫画は置かない方針ということで、どんな面白本なのかというと、面白い生き物とか、面白い建物とか、雑学とか、魅力的なタイトルがずらり!

このほかにも部活本コーナー、小論文コーナー、乙女本コーナ(!)など、様々なコーナーがつくられています。

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こういった展示コーナーは、4年ほど前から行われているそうで、この展示にしてから、本を借りる生徒が大幅に増えたそうです。ちょっと見せていただいただけの大人の私だって色々読みたくなりましたよー。

 

司書の先生はプライベートの時間も使って本を読み、おすすめ本を探されているそうで。先生の、生徒たちに本を好きになってもらいたい!小説以外も読むようになってもらいたい!という想いが、よく伝わる、そして先生のセンスが光る図書室だなあ、と思いました。