IoTスタートアップの面白さと可能性ー小笠原治さんの講演より
先日、ITis KANSAIさんの46回目の講演会に参加させていただきました。
ITis KANSAIさんは、関西のIT業界を盛り上げるためにつくられた組織で、来月で5周年を迎えます。今回の講師は、小笠原 治さん。さくらインターネット株式会社の共同創業者で、DMM.make、ABBALabなど、様々な形でスタートアップ支援をされている方です。
福岡市の創業特区指定、スタートアップの支援にも関わり、現在も、福岡、東京のスタートアップ複数社に投資をされています。
小笠原さんが投資をされる先は、PC、インターネットの中だけで完結するもの、アプリやゲームの開発オンリーではなく、IoTのスタートアップが多いそうです。そしてその中でも広義のIoT、モノとコトをつなぐことで、生活が変わっていくものに、投資をされるそうです。
IoTとは、PCやスマートフォン以外のモノをネットワークにつなぎ、データの取得や命令をして、これまでに無かった動き、サービスを生み出すことです。その流れにはなんらかの物体が介在することになります。
DMM.makeにはモノづくりの環境が整っているため、まさにIoTのスタートアップに適している、と言えるでしょう。年間8000人が利用し、VRや犬の心拍数で犬の健康状態を知るサービス、物理的鍵を無くすスマートキーなど、2年半で70社のスタートアップが生まれたそうです。DMM.makeの目的はスタートアップを立ち上げる際に障壁となる「お金」「仲間」「設備」を提供し、支援するとともに、出来ない言い訳を取り払い、背中を押す役割も果たされているそうです。
何か製品やサービスを生み出し、量産体制に入る時、資金調達をするスタートアップが多いのですが、5億円以上の資金調達ができるのは、女性が多いそうです。小笠原さんは、目的型といってやりたいことがはっきりしているタイプの人が多いからではないか、と分析されていました。
また、イノベーションを起こす際には、ノリや空気感も重要だそうです。つまり調子に乗って世界を目指すとか、言っちゃったほうが良いそうです。東京と地方を比較すると、その空気感に違いがあり、東京はうかれているので、例えば世界を目指すと言いやすい雰囲気があるそうです。福岡市にもその雰囲気はあるそうです。もちろんシリコンバレーにも。私もイノベーション、IoT関連のセミナーに参加させていただくと、そういう場は実際に起業された方々、また、起業をしよう、という方々のチャレンジングな雰囲気が満ちていて、根拠も具体策もなくても、「何かにチャレンジしてみたい」「やってみれば何かできるんじゃないか」という気持ちに自然となってしまうことがあります。こういう空気は積極的に読みにいったほうがいいのかもしれませんね。
ただ一方、東京やシリコンバレーにはロールモデルがありすぎるそうです。本当に新しいことを始めるには、ロールモデルがいないほうがやりやすいこともあるそうで。そのバランスは、なかなか難しいですね。
生活を変えていくIoTとはどのようなものなのか。ある運輸会社の例を教えていただきました。
ある運輸会社から、事故が起きてからの検知ではなく、事故を起こしやすい状況の検知をして、ドライバーの安全性を高めたいという依頼があったそうです。そこで考えられたのは、センサーを使った心拍数の感知とその分析。眠気や興奮は、心拍数の測定である程度読み取れるそうです。センサーをトラックに取り付け、ドライバーの心拍数を測定。そのデータを収集し、傾向を分析することで、それぞれのドライバーが眠くなりやすい状況を把握し、休憩などを計画できるそうです。デバイスによる情報収集が、仕事環境の改善につなげられているんですね。
ABBALabの定義するIoTについても教えていただきました。
Internet(インターネット)、Device(装置、機器)、Things(モノ、事)に分け、
それをInput、Logic、Outputという視点で解説をしていただきました。
特にThingsの部分で、どんなデータを取り(Input)、どんなフィードバックをするのか(Output)という行為の間には、それをすることによる価値や対価が(Logic)があり、その部分をきちんと考えるのがIoTをやっていくうえで大切なことだそうです。
先の宅配ドライバーの件で言えば、「ドライバーの心拍数を分析することで、事故が未然防げる」の部分がLogicになりますね。
小笠原さんのご著書「メイカーズ進化論」でもおっしゃっているように、IoTはモノのインターネット化だけではなく、「モノとコトのインターネット」で、まさに「モノ」が「モノゴト化していく、サービス化していく」のだなあ。と実感しました。
また、さくらインターネットで昨年より提供されている、sakura.ioは
通信モジュールをデバイス(もの)に組み込むことにより、デバイスを比較的簡単にネットワークにつなぐことができ、その目的であるデータ取得などがしやすくなります。
IoTの開発者が、デバイスをインターネットにつなぐ技術に労力を取られず、Logic、価値や対価の部分に時間を使えるように、ということですが、これはDMM.makeのセッティングと同じく、スタートアップの背中を押すものになっていますね。
小笠原さんは、「誰かが思いつきそうなところにリンゴを落とすのが僕の仕事」とおっしゃっていましたが、小笠原さんこそ、イノベーションが起こる場という、大きな環境を発明されているんだと思います。
講演後、中高生へのメッセージとして「起業して失敗することにリスクはありますか」と質問させていただきました。「企業で言われた通りに動くほうがリスクがあると私は感じます。それに失敗ってそんなにこわいものではないと思いますよ。高校生にもスタートアップのチャレンジはできるし、学校の中でたくさんの失敗が積めると良いですね」というお話しをいただき、なるほどなあ、と思いました。
IoTの開発に関していえば、今はまだやりつくされていない状況で、新しいサービスが生まれる可能性があるとても面白い時代なのだと思います。
中高生のうちから調子に乗ってやってみるというのは、最終的にどんな進路を選ぶにしろ、楽しいチャレンジではないでしょうか!