オープンであることの可能性-育英西中学校・高等学校のEducational-i:Link
オープンイノベーションという言葉が示すように、近年、ビジネスでも、行政でも、組織の枠を超えた動きが多く見られるようになりました。この動きはやはり、多くの人が「オープンにすること」のメリットがあると感じているからではないでしょうか。
本日は、奈良県奈良市にある育英西中学校・高等学校の事例をご紹介します。
育英西中学校・高等学校は、奈良市西部の丘陵地に立つ、自然環境に恵まれた、落ち着いた雰囲気の女子校です。創立以来「次世代を担う女性を育成する」ことが目標として掲げられ、これからの時代に必要な力を育てることにも力を入れられている学校です。
2017年1月30日に、教育関係者を学校に招いての公開授業が行われました。奈良県内の中学、高校や塾を中心に案内を出し、約60名が外部より参加。2時間にわたり中高合わせて11のアクティブラーニング型授業が公開された後、「論理的思考を高める」「情報発信力を高める」「学力向上につなげる」3つの観点での分科会が行われました。
<分科会の様子>
授業を外部に公開するという動きは、ここ1、2年で公立、私立ともに増えてきていますが、育英西の特筆すべき点は11という、公開された授業数の多さと、これからご紹介します公開授業の前後の動きです。
まず、公開授業申し込み後、申込者にメールで、Facebookグループ「Educational-i:Link」への案内が届きました。承認制の非公開グループで、管理者の先生に承認をしていだくものです。登録すると、各授業の学習指導案を見ることができました。このように事前に授業の詳細が配布されると、落ち着いて見ることができ、授業の観点や質問などを準備しやすくなりました。
当日の授業終了後、校長先生から参加者全員にメールをいただきました。また、返信された感想は、送信者の許可を得て「Educational-i:Link」で共有されました。
<Face Bookページのトップ画像>
こちらのグループはそれで終わりではなく、その後も「シナジータイム」(生徒の思考力を育てる授業)の様子や、先生方の授業の実践例、アクティブラーニングに関する情報などが定期的に投稿され、育英西の先生方と校外のメンバーの交流の場となっています。
中でも興味深かったのは、外部講師を招いたMicrosoft Officeを活用した校内勉強会への参加の呼びかけがあったことです。
<実際の呼びかけ>
こちらは、一定人数以上集めたい、校内で集まるかどうか、という状況で、そうだEducational-i:Linkでも呼びかけてみよう、という流れだったそうです。実際は校内だけで人数は集まったのですが、実際に校外からも参加される方がいらっしゃったそうです。
このお話をうかがい、学校の境界について変化が起きていると感じました。それはインターネットという環境も影響はしていると思いますが、先生方の意識の変化のほうが大きいかもしれません。
育英西中学校・高等学校では、数年前から、教科や学年を超えた勉強会が校内で定期的に行われています。「他の校務でも忙しい中の参加だったが、これがあるから学校の方向性が確認できたり、情報が共有でき、良かった」と、教務部長の山元先生。先生方が校内でお互いの授業を見るのも自然になってきているそうです。このような内部でのオープンな動きが外部にも広がってきたのが、現在の形なのかもしれません。
内外でオープンにすることのメリットは、多くあるといいます。まず内部では学校の方向性を確認できること、ICTの導入など新しい取り組みも相談しながら進められることなど。また、外部にオープンにすることで、今まで気が付かなかった部分を見てもらえること。時には生徒さんにもそれをフィードバックしながら、学校運営に役立てられているそうです。
校長の北谷成人先生も、私学がお互いに情報をオープンにすることで、高めあっていくのが良い、と考えられています。加えて、先生方一人ひとりが外部との交流を持つことも奨励されています。その理由として「学校の中で何か新しいことを始める時、必ずしも全員が同調するわけではありません。その時に、学校の枠を超えて、共感できる先生がいらっしゃれば、励みになり、続けられるのではないか」ということを挙げられていました。この動きは、先生方一人ひとりのことも考えられた、環境設定なんだということをあらめて実感しました。
「Educational-i:Link」も含めたこれからの展開がとても楽しみです。