イメージを、さらして、とくして、前に進もう。

「とりあえず表現する人は、羞恥心が足りない?

前回のブログでは、それぞれが頭の中のイメージを表現するメリットとして、もったいないという書き方をしましたが、もう少し本人のメリットにフォーカスして考えてみたいと思います。

 

私は大体のことについてとりあえず話してみる、やってみることが多いです。熟考されていない状態でとりあえず表現すると、無視されたり批判されたりすることもあります。あー、もう少し考えてから表現すれば良かったかな、と思う事ももちろんありますし、色々言われることがわかっていても表現するのは、人よりも羞恥心が足りないからなのかな、と思う事もあります。でもまた次の機会があれば、とりあえず表現してみる。それは、自分自身がその行為によるメリットを感じているからにほかなりません。

 

知能観の違いが、行動にも影響を与える

このもやもやした思いをクリアにしてくれたのは、「成長的知能観」「固定的知能観」という定義です。2017年11月に、同志社女子大学現代社会学部 現代子ども学科の上田信行先生のゼミを見学させていただいた際、教えていただきました。これは、心理学者であるキャロル・ドゥエック氏の認知的動機づけ理論における定義で、上田先生によると、大人も子どもも、それぞれが持つ能力観により、大きく2つのグループに分けることができるそうです。1つは「成長的知能観」つまり知能は成長すると考えていて、努力次第で伸ばしていけると考えるグループ、もう1つは「固定的知能観」つまり知能は伸ばすことができないと考えているグループで、成長的知能観の持ち主はチャレンジが楽しいと思い、「固定的知能観」はチャレンジが怖いと思うそうです。

「固定的知能観の人は、今自分がどれだけ知的かということに価値を置きますから、能力が高かったら示したいし、そうでなければ隠したい。成長的知能観の人は、今の自分の能力より、これからどれだけ勉強して成長できるかどうかに関心があるので、失敗をおそれず、チャレンジする。なのでみんなが成長的知能観になって、チャレンジが楽しいと思いだしたら、学びの場は必然的にとても楽しい場になるんです(上田先生)」

同じ状況に向き合っても、前提となる知能観によって行動が変わるということに、とても納得できました。

 

この視点を持って周りを見渡してみると、見えてくることもありますし、先に挙げた羞恥心という話と、少し関係しているのではと感じることがあります。人に「あなたそんなことも知らないんですか」という言い方をする方は、大体において固定的知能観ではないかと個人的には感じます。その言葉の裏には、知らない=恥ずかしいという無意識のつながりがあり、他人も同じことを感じるだろうと思っての発言なのでしょう。でも成長的知能観の人はそれをあまり恥ずかしいと思っていないから、響かない。逆もまたあって、成長的知能観の人が「どうしてなんでも言って良い場なのに、発言しないんだ」と言っても意見が出ないときは、固定的知能観の人が、それで発言した結果間違っていたら恥ずかしいと思っている可能性があります。前提からすれ違ったコミュニケーションですね。(私は心理学が専門ではないため、この解釈については個人的解釈としてお読みくださいね)

 

 

さらして、とくして、前に進もう。

頭の中のイメージを外に出す際に、もし、間違ったら恥ずかしい、と思ってしまったら、そう感じるのは、全員じゃない、と思いなおすと、出しやすいと思います。そして、誰かがそれに対して意見を出してくれた時、正解をもらうという姿勢じゃなくて、新しい視点をもらうという姿勢になれたら、すごく得した気持ちになれますよね。以前上田先生にインタビューさせていただいた時、上田先生がその場でSTM(さらして、とくして、前に進む)というシステムを考えて教えてくださったのですが、アイディアを表現すると得するというのは、こういう事じゃないかなと思います。「表現者:こんなのどうかな? 受け手:いいね!」みたいな形で、アイディアの受け手も、一緒に面白がり、新しい視点を追加する姿勢で対峙できたらいいですね(自分のアイディアをなかなか出さない人は、他人の意見にも正しいことを言わないと、と気負う傾向にあるので)。

 

成長的知能観、固定的知能観については、上田信行先生と中原淳先生のご著書「プレイフルラーニング」をぜひお読みください。

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https://www.sanseido-publ.co.jp/publ/gen/gen6edu/play_learn/

 

また、STM誕生の瞬間については、こちらのインタビューをぜひお読みください。

http://arts.hatenablog.jp/entry/2017/12/09/075059

 

#STEAM  #アート教育