セルフマネジメント力は、これからの教育の場にも必要な力―「管理ゼロで成果はあがるー『見直す・なくす・やめる』で組織を変えよう」を読んで

昨年末のブログにも書かせていただきましたが、教育の領域では、これからますます学習者主体の環境と学びの個別化が進んでいきます。学習進度を周りに合わせなくてよいのは学習者にとって大きなメリットですが、それは同時に、自分で学びを進めていく難しさに直面することでもあります。

 

先日コアネット発行の情報誌「FORWARD」の取材同行で、株式会社ソニックガーデンの代表取締役社長、倉貫義人さんにお話を伺う事ができました。会社の運営、人材育成のお話がメインでしたが、現在の教育課題に通じるヒントもたくさんいただきましたので、ご紹介したいと思います。

 

倉貫さんには2年前に関西で行われた「リモートワークジャーニー」という講演会+ワークショップで初めてお話を伺いました。ソニックガーデンは、全員がリモートワークという会社組織であること、クライアントとの打ち合わせや採用面接もリモートで行うという事実と、リモートワークの肯定的なとらえ方に衝撃を受けたことを今もはっきりと覚えています。その後、リモートワークだけでなく「納品のない受託開発」という新しい仕事の進め方を採用されていること、上司がいなくて、決裁や有給休暇の申請も必要ない組織であることを知りました。

 

そして今回お話を伺い、そういった一見自由に見える組織や働き方を可能にする「セルフマネジメント」とはいったいどういうもので、どのようにその力をつけるのかを教えていただき、さらに衝撃を受けました。

 

セルフマネジメント力(りょく)とは、自分で自分を管理する力です。これがあると、自分が担当する仕事に時間やリソースなど、何がどのくらい必要かを把握することができ、それに基づき自分で仕事を進めることができます。そのため、上司の指示や管理がいらなくなり、リモートでも問題なく仕事ができるようになるのです。ソニックガーデンのような環境は、セルフマネジメント力がある人にとっては、とても自由でやりがいがある一方、まだセルフマネジメント力がついていない人にとっては決して楽ではない環境なんです。私はここがとても面白いところだと感じます。

 

そしてソニックガーデンには、セルフマネジメント力をつけるための段階的なサポートがあります。会社として、ここまでできたらどのくらいのレベルにいる、ということをあらかじめ設定しているのですが、そのレベルには役職のように人数枠がなく、全員が一番上のレベルになることが奨励されています。また、定期的な仕事の振り返りで、自分のレベルについて確認していくのですが、それも上司の一方的な評価ではなく、先輩のサポートを受けながら、自分自身で仕事のやり方を振り返り「よかったこと」「悪かったこと」「次にやってみること」の3つの視点で、次のアクションにつなげる形で振り返りを終わるといったやり方をとられています。

 

このやり方が一般的な会社組織と大きく違うのは、社員のみなさん一人ひとりが、自分の成長に目を向けて、自分で改善を重ねていけるところだと思います。上司など他者からの評価が育成の軸になる場合、連続的に自己成長をすることが難しくなることもありますよね。

 

私はこの部分が特に、これからの学校現場に求められることと重なると感じました。

これからの教育の場で、学習者一人ひとりが、自分で学びを進めていけるようになるには、先生からの評価だけでなく、自身での振り返り、改善が欠かせないのではないでしょうか。そしてそれができるようになる未来は決して辛いものではなく、自分で決められることが多い、楽しい未来なんだな、ということが、今回お話を伺い、強く感じたところです。

 

倉貫さん、お忙しいところ色々と教えていただき、本当にありがとうございました。

 

セルフマネジメント力のもっと具体的なお話はもちろん、チームでどう成果を出すか、あたりまえと思われてきた制度を無くすとどんな効果があるかなど、1月に出版されたばかりの倉貫さんのご著書「管理ゼロで成果はあがるー『見直す・なくす・やめる』」に詳しく書かれています。ぜひお読みくださいね。

 

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