子ども達の表現力を伸ばす!ピカソプロジェクト-アートの特別授業 at 波除学園

みなさまこんにちは!清水葉子です。

先日、大阪市港区にある波除学園さんで、子ども達を対象に行われたアートの特別授業を見学させていただきました。授業運営をされたのは、合同会社エデュセンスさん。ピカソプロジェクトという、アートを通して子ども達の表現力を育てる活動をされています。

 

代表の奥村みずほさんです。

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授業は、年長クラスの、元気いっぱいの35名の子ども達を対象に行われました。

「今日はみんなにお絵かきをしてもらいます。おててはお膝じゃなくても、背中シャキーンじゃなくてもいいよ。好きなポーズをしてお話聞いていいよ。寝そべってみてもいいんだよ」というみずほ先生の投げかけに、歓喜の声を上げた子ども達。半分以上の子が寝そべり始めました!これは紙が配られた後の写真ですが、なんだかとてもリラックスした風景ですね!(この後、絵具を持ってくる段階になって、スペース的に厳しくなり、ほとんどの子は座って描いていました)

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そしてみずほ先生より3つのお約束

・わいわいしながら作業を進めてもいいけど、先生がお話しする時はさっと話をやめて耳を傾ける

・好きなポーズしても大丈夫だけど、お絵かきができるポーズですること

・他のお友達のじゃまにならないようにする

があり、その後、紙と絵具を自分で取に行き、好きな場所に移動しました。絵具は、白、赤、青、黄の4色です。

 

まず、色の実験をします。用紙の実験コーナーの枠に、赤と青を紙に乗せて、指で混ぜ合わせます。

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「みんな赤と青を混ぜたら紫になるって教えてくれたけど、自分のと周りの人のを見比べてみて!いろんな色ができてるね。え?それむらさき?っていう色もあったね。」と、みずほ先生

続いて、黄と青、黄と赤をまぜていきます。最初はこわごわ一色ずつまぜていた子ども達もコツをつかんできて、2本の指に一度につけて、いきなり混ぜ始める子もいました!

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「ちょっと見てみて!この色めっちゃきれい」「エメラルドグリーンみたい」という先生のコメントに、これも見て!見て!という子ども達。黄+赤では「柿みたい!」「僕のは太陽になった!」など口々に言い始めました。

 

最後は好きな色と白を混ぜ合わせます。水色ができた!ピンクになった!パフェみたいになった!とうれしそうな子ども達。

 

実験が終わったら、「おててスタンプ」をします。「赤と青だったら黄色と緑は黄緑とか、黄色と赤はオレンジとか教えてくれたけど、やってみたらいろんな色があることがわかったよね。だから、混ぜ方で色っていくつでもできます。白は薄くなる色。濃くなったなと思ったら、白をまぜてください。自分だけの素敵な色をつくって、おててスタンプしてみてください(みずほ先生)」

 

すごくうれしそうに、手に絵具をぬりはじめる子ども達。一色に染める子もいれば、グラデーションをつける子もいます。絵具のつけかたが薄くてイメージ通りの形ができない子は、なんでやろ?と考えてもう一度トライ!押したところにもう一度重ねる子、別のところに押してみる子と、リトライの仕方は様々です。

 

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手がいろんな色になるのがとにかく楽しくて、手の甲まできれいに染めている子もいました。トレイで混ぜ合わせる子、手の上で混ぜ合わせる子など、混ぜ方もさまざま。

ここでもみんなできあがると見て見て!血みたいになった!こんなきれいな色になった!などうれしそうに見せてくれました。

 

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授業の最初に「お絵かき嫌いな子いる?」というみずほ先生からの問いかけに、4分の1くらいの子が手を挙げていたのですが、描いている様子を見ると、みんな夢中で、嫌そうな子は特に見当たらないなあ、という感じでした。

 

「おててスタンプできたらどんどん遊んで描きたしていっていいよ」という先生の問いかけに、色々と手を加えていく子ども達。

アタマと足をたして、ダチョウ!という子もいました。全体を水玉模様にした子も。

もっと遊ぼう!というみずほ先生の声かけに、色や紙をおかわりしながら、どんどん展開していきました。子供たちのパワーやアイディアはすごいですね!

 

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絵の具の片付けが終わったあと、「ゴッホの絵本―うずまき ぐるぐる」という本の紹介がありました。

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ゴッホの絵には何が描いてあるか?どんなふうに描かれているか?という問いかけに答えながら、ゴッホの絵は全部短い線で描かれているんだということに気が付いた子ども達は「めっちゃ時間かかるやん!」とびっくりしていました。この後の授業で、ゴッホみたいに描いてみる機会があるそうです。

 

さいごにみずほ先生から「これからみんな小学生になって、自分のしたい事をするの、とってもむずかしくなんねん。でも、自分がこう描きたいって思うのをできるだけたくさん描いてほしいと思います。今日もみんなとっても上手にできたけど、もっともっと遊んでいいんだよ。もっとみんないろんなことができる。保育園にいる間にたくさん描いて、楽しい作品をたくさん残していってくださいね」というお話がありました。

 

エデュセンスさんの授業は、子ども達の成長段階に応じて働きかけ、子ども達それぞれの表現力を伸ばしていくことが特徴です。年長にあたる5歳、6歳の子どもたちは、「図式期」という、知的写実性に富み、見えたことよりも、自分の知っていることを心のままに描く時期にあるそうです。しだいに、パターン化された木や家を描いたり、得た知識をもとに概念化した絵をかけるようになってきますが、その過程で、今回のような体験を通して、固定観念をぐらぐらさせたり、もっともっと自由にかける体験をすることが、表現力を伸ばすことにつながるそうです。

 

固定概念をゆさぶってもっと自由に、という観点は、授業において、描くこと以外にも見られました。「はーい!」と元気よく返事をしている子ども達に「本当にわかってはーい!って言った人!」と再度問いかけをされたり、冒頭の、自分の好きな姿勢で話を聞いていいよ、という説明などにも、同じ意図を感じました。

 

たしかに年長になると、多くの子どもたちは、指示通りに行動できるようになります。そして、教えられた通り、あいさつなどの同じ動作を繰り返しているうちに、条件反射に近い形で、つまりマインドレスに、色々なことをこなすようになることもあります。そういった礼儀、生活習慣といったものは、悪いことばかりではないのですが、時々、なぜこれをやっているのか?もっと違うことはできないかな、と、考えてみることは大事だと思いました。いつもの教室での非日常体験で、子ども達もいつもとちょっと違うことを考えられたのではないかな、と感じました。楽しそうに描き、わたしの作品を見て!見て!と言ってきてくれる子ども達の楽しそうな様子が、とても印象に残っています。

 

見学させていただいた波除学園のみなさま、エデュセンスのみなさま、ありがとうございました!

 

ピカソプロジェクトのホームページは、こちらです。

ピカソプロジェクト | こどもの表現力を育てるアート教育の実践と研究