同志社女子大学上田ゼミの、プレイフルな学びの環境ーその2

こんにちは!清水葉子です。先日、同志社女子大学にうかがい、現代社会学部 現代子ども学科の上田信行先生のゼミを見学させていただきました。今回は、ゼミ長の日高さんのインタビューをご紹介します。

 

上田ゼミには現在、3年生と4年生の学生さん達、あわせて27名が在籍され、その活動の中心は学びのワークショップです。全員が参加するものと有志参加のワークショップがあり、年間で合計約40も実施されるというから驚かされます。当然常にプロジェクトが同時進行することになり、取材をさせていただいた11月上旬には、10のプロジェクトが同時進行していました。当然メンバーが重複するのですが、どのように運営されているのでしょうか。ゼミ長の日高さんにそのあたりも含め、上田ゼミの活動について伺いました。

 

ゼミ長 日高愛理さんインタビュー

「たくさんのプロジェクトを丁寧に運営していくことで、自分も、チームも成長します」

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■年間でどのくらいのプロジェクトをされますか?また、対象はどなたが多いですか?

日高さん:希望者対象のものも含め、年間40くらいだと思います。対象は様々で、以前は近くの私立高校でのワークショップが多かったようですが、今は企業や社会人向け、大学の先生方、小学生対象など様々です。

 

■それだけ多いと、プロジェクトメンバーも重なると思うのですが、どのようにプロジェクトを進めているのですか?

日高さん:プロジェクトごとに統括を決めています。現在ゼミ全体でいうと10のプロジェクトが同時進行しているのですが、統括はそれぞれ別の人が担当するようにしています。ただ、プロジェクトメンバーは重なってしまうので、統括がそれぞれの作業、時間配分を見ながらメンバーの動きを管理しています。だいぶ動きが複雑になっていますので、エクセルで全員のプロジェクトをまとめ、日程ごとに誰がどのプロジェクトに関わっているのかを示すようにしました。これにより、だいぶ全体の動きが見えるようになってきました。

 

■プロジェクトは、どんな風に進められるのですか?

日高さん:まず、対象者と目的を明らかにします。その後日にちと場所を決めて、コンセプトを決めていきます。以前は事前準備をあまりせず、ミーティングの場でアイディアを出していたのですが、アイディアって、ミーティングの場で考えているよりも、テレビを見たり、本を読んでいるときに突然インスピレーションが沸いて思いついたりすることが多いので、前提を共有した後、個人で考えてきて、その後みんなでシェア、という順番にしてみたら、コンセプトがまとまりやすくなりましたね。通常ですとここで一度上田先生に方向性の確認をし、具体的な流れを決めていきます。上田ゼミのワークショップには、TKFT:つくって、K:かたって、F:ふりかえる)という、学びを深めるためのフレームがありますので、それにそって流れを決めていくことが多いです。

 

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<「カップス」ワークショップでの1幕>

 

■ワークショップ内の様々な役割は、どのように決められるのですか?

日高さん:2年間一緒に活動していると、それぞれのメンバーの得意分野がわかってきます。記録や編集が得意な人、カフェのような空間をデザインするのが得意な人、ファシリテーションが得意な人など、それぞれの得意分野が分かれているので、それぞれが得意な部分を担うことが多いです。

 

■それぞれの得意分野がわかってくるまでにどのくらいの時間がかかりましたか? 

日高さん:最初は全員で全部の役割を順番に体験していきました。いくつかのプロジェクトを回していく中で、誰が何に向いているかが、自分にも他のメンバーにもわかってきます。ただ好きで得意なことをしていても、別の役割をやってみたいという気持ちが出てくることもあるので、そういう時はその気持ちを尊重し、役割を変えて良いことになっています。

 

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<ディスプレイが得意なメンバーの作品>

 

■上田ゼミではリフレクションを大切にされていますね。リフレクションをやってみて、感じることはありますか?

日高さん:私はもともと、振り返りをあまりしない人間でした。だから、何度も同じような間違いを繰り返してしまうことがありました。そしてその活動内容も忘れやすくなってしまいました。リフレクションをすると、その活動の中にあった意味を考えることができ、それを考えることで記憶に残るということに気が付きました。上田先生はよく「体験を経験にするために振り返りをする」とおっしゃるのですが、ただ体験していることと、経験になることの間に、振り返りがあるんだと思います。

 

■どういう形で振り返りをすることが多いですか?

日高さん:プロジェクトが終わった後、いったん個々人で振り返りを行い、文章化した後、リフレクションミーティングを行います。リフレクションミーティングでは、ワークショップのタイムラインに沿って、順番に振り返ります。例えば一日のプロジェクトだと、最初にダンスを踊ったりするのですが、「あの時成功したのはなんでか」「あれで良かったか」その後カフェがあったら「あの時渋滞したのはなんでだったか」などについて意見を出していきます。また、ワークショップの最後に、参加者の方向けに意味付けをしたりするのですが、そこで「学んできたことが生かせているか」なども考えますね。グループでの振り返りは対話で行っていきます。

 

■ゼミ長として、取りまとめに苦労することはありますか?

日高さん:同じ学年内のメンバーをまとめるのは、会社のように上司、部下の関係性とは違うため、なかなか難しいところがあります。メンバーの温度差はあります。私もそこに悩んで、先日は全員と面談し、状況を確認しました。お互いに状況を確認し、統括としても無駄な時間などはできるだけ減らして、埋められるところは制度的にも対応するから、それ以外のところは自分で価値を見つけてやらないとだめだという話をしました。自分で価値を見つけられるかどうかは、これまでに参加したプロジェクトの数に比例するように感じています。上田ゼミには希望制のプロジェクトもあるのですが、それに積極的に参加する人は、どんどん成長実感を持って進んでいくように思います。

 

■成長実感は、どういう時に感じられるものだと思いますか?

日高さん:いくつもプロジェクトをこなしていると、前はできなかったことができるようになっていることを感じるので、それが成長実感なのかなあと思います。

 

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30名弱のメンバーで、年間40ものワークショップを企画、運営されるのは、本当に大変だと思います。それに一つずつ丁寧に取り組み、毎回リフレクションの時間をきっちりとることで、ゼミ生のみなさんは確実に成長し、またそれを自分でも実感できるんだなあ、と日高さんにインタビューをさせていただき、感じました。

 

上田先生によると、学びには3段階あるそうです。Learning1.0は学習指導(授業)により知識を獲得する学び、Learning2.0は表現活動やものづくりによる学び、Learning3.0は誰かに喜んでもらうために準備をし、パフォーマンスをすることによる学びだそうです。自分のために勉強するよりも、誰かに喜んでもらうためならば人は一生懸命になれるそうで、だから上田ゼミの活動にはLearning3.0が多く含まれている、ということでした。

 

その中で日高さんのように成長実感を感じられるかのポイントは「自分ごと」にできるかどうかにあるそうです。その活動に意味を見出せず、自分ごとになっていない場合はやる気が出ない。そういう時には上田先生は根性論ではなく「活動に自分なりの意味を持って関わって」と伝えるそうです。その意味は人によって違ってもよく、それがぴったりくると、自分のためにやっているという意識になり、だんだんと本気になるそうです。ゼミ内にたくさんのプロジェクトがあるということは、ゼミ生がそれぞれの意味を見出すためのたくさんのチャンスがあるということでもありますね。また、忙しい中でもそれぞれが自身の役割を楽しそうにこなしているのは、「自分にとっての意味」を見つけた学生さん達がたくさんいらっしゃるから、なのかもしれません。

 

日高さん、ワークショップの準備でお忙しい中、お話を聞かせていただき、ありがとうございました!

  

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