空間を選び取る力が育つ、交流の場―甲南大学 iCommons その1

みなさまこんにちは!清水葉子です。

秋が深まり、紅葉の季節になってまいりましたね。

日本の四季の中で、秋という季節が最も大学に似合うなあ、と個人的に思っています。小学校や中高と比べて、何かちょっと大人な雰囲気が、大学にはあるからでしょうか?

 

さてそんな大学にぴったりな季節に、兵庫県東灘区、閑静な住宅地の中にある、甲南大学に伺いました。今年2017921日にオープンしたばかりの、KONAN INFINITY COMMONSを見学させていただくためです。管財部の小幡真史課長にご案内をいただきました(写真を撮り忘れてしまいました…ご多用のところ、本当にありがとうございました!)。

 

↓こちらがKONAN INFINITY COMMONSの入り口です。

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訪問させていただいた岡本キャンパスは、文学部、法学部、経済学部、経営学部、理工学部、知能情報学部からなる、甲南大学で一番大きなキャンパスで、文系と理系の学部が同じ場所にあり、理系学部は少し北のほうに校舎があります。KONAN INFINITY COMMONS は愛称をiCommonsというのですが、文系学部と理系学部をちょうどつなぐ位置に、建っていました。

 

甲南大学は、2019年に学園創立100周年を迎えます。それに向けて、様々なプロジェクトが行われています。まず、2014年に、「KONAN ワンワード・プロジェクト」という、甲南大学の魅力を一言でわかりやすく表現するという取り組みが行われました。学生、教職員から広く「ワンワード」を募集し、選ばれたいくつかのワードで投票が行われました。総数3,471票という盛り上がりの中選ばれたのが、「KONAN INFINITY」だったそうです。Infinityとは、無限大という意味で、「無限の可能性を追求し、開花させる」という意味が込められています。

 

↓ワンワードプロジェクトはこちら。

www.konan-u.ac.jp

 

このキーワードは、すでにホームページやキャンパス内で使用されていますが、施設名として使われたのは、今回が初めてだそうです。

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↑こちらが建物入り口の表示です。100周年の100という文字と、無限大を表す∞が、よくマッチしていますね!

 

この場所にはもともと、6棟の建物、学友会館(学食など)、学生会館、文化部室、小体育館、能楽練習場、共同練習場があったので、課外活動をする学生、食堂を利用する学生はある程度交流はしていたそうですが、学友会館、小体育館以外の場所は、課外活動に参加しない学生にとっては、あまり立ち寄るきっかけが無かったそうです。必要とされる機能はそのまま引き継ぎつつ、より多くの学生が集う交流の場とすることがiCommonsの目指すところだそうです。また、学生がよく利用する学生部、キャリアセンターをiCommonsに移設することで、全ての学年がこちらを利用し、縦のつながりもできるような工夫がされています。

 

iCommonsのコンセプトを表す3つのキーワードは、

「岡本キャンパスの結節点」「オープンとシェア」「アクセシビリティー」。

全体の交流とともに、理系学部と文系学部を地の利的につなぐこと、閉じた空間はできるだけ少なくし、活動場所をシェアできること、入り口を北と東の両方に設けたり、校舎と空中通路でつなぐなど、アクセスしやすい環境にされていることが、ポイントです。

 

「本学は学生数9000人の中規模な大学になりますので、キャンパスもそれほど広くはないのですが、iCommonsでは文系と理系の学生等いろいろな学生が出会い、融合し、新たな発見があったり、新しい出会いの中から新しいチャレンジをしていくことを目的としています(小幡課長)」

 

さて、どのような活動が内包されているのでしょうか!中に入ってみましょう。

 

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まず入り口を入ると、「アゴラ」という大階段が迎えてくれます。iCommons内の色々な場所から見渡せる、中心となる場所です。象徴的な空間というだけでなく、講演会や授業などに使いやすいつくりとなっています。

 

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見学させていただいた際もちょうど文学部の講義が行われていました。階段から振り返ったところに210インチの巨大モニターがあり、講演資料を投影しているのが御覧いただけると思います。

 

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階段部分には約150人が座れるということで、実際に使用されているシーンを拝見しますと、なんともちょうど良いサイズなんです。このような大空間は、大きすぎると使えるシーンが限定されますし、小さすぎてもなんだか使いにくい、オブジェのようになってしまいがちですが、ちょうど良い規模だからこそ、頻繁に利用されているんですね。

(続きます)

 

iCommonsのページはこちらです。

ch.konan-u.ac.jp

 

arts.hatenablog.jp

 

モチベーションの世代差の面白さ―「モチベーション革命―稼ぐために働きたくない世代の解体新書」を読んで

みなさまこんにちは。清水葉子です。先のブログで紹介した110driveさんのインタビューで、これからはモチベーションがキーになるというお話、何か一つのことに没頭することが、イノベーティブな力を伸ばす、というお話がありました。これは以前にご紹介しましたRISDの教育でも、一つのテーマとなっていました。

 

では、一つのことに没頭する時のモチベーションの源泉は何なのか?と考えているときに、こちらの本に出会いました。

「モチベーション革命―稼ぐために働きたくない世代の解体新書」

尾原和啓著 Amazon CAPTCHA

 

著者の尾原和啓さんは、現在40代。20代、30代前半の日本の若い人たちを、反応がにぶく、未来に渇望していないと思い、失望していたそうですが、ある時、40代、50代の人たちとはモチベーションのもとが違うということに気が付いたそうです。

尾原さんはそれを大きく「乾いた世代(40代以上)」「乾けない世代(30代以下)」に分け、解説しています。詳しくは本書を読んでいただきたいのですが、ざっくりと解説すると、乾いた世代は何かを達成し、その結果モノや行為としての快楽を得ることを目標に頑張れるのに対し、乾けない世代は、今自分がやっていること自体に幸せを感じられるかどうかが、そのポイントになるというのです。本書では「意味合い」「良好な人間関係」「没頭」というキーワードでそれが表現されています。

 

私も40代なので、乾いた世代なのかもしれませんが、このように言語化していただくと、何か実感としてその両方が見えてくる気がしました。

 

これは私の解釈ですが、乾けない世代が乾いた世代よりも物質的に多くを持っているかというと、そうでもない気がします。経済成長が右肩上がりではない今の日本で、頑張れば何か良いことがある、という頑張り方は、だんだん難しくなってきています。成功体験がある乾いた世代は、まだそれでも頑張れるのかもしれませんが、乾けない世代は、そこを目的とはしづらいのだろうと思います。その代り、今にフォーカスをして、周りの仲間と、何かに没頭することを大切にするのかもしれませんね。

 

尾原さんは、この乾けない世代のあり方が、これからやってくるAI時代に求められるとも指摘します。それぞれが理由なく好き、偏愛するものに没頭し、追及することで、それぞれの得意分野を持った集団ができ、彼らがコラボレーションすることで、クリエイティブな、強い組織ができ、理由なきこだわりが、AIにはない価値を出せるきっかけになるというのです。

 

私は「没頭」というと、個人的な作業を連想してしまいますが、たぶんこれからは、「仲間と没頭」できる人が力を発揮するのだと思います。特に若くてかつクリエイティブな人たちは、こだわりがあるのに、人とうまく協力できるところがすごいなあ、といつも思います。乾いた世代の人は、人とうまく棲み分けるのが苦手で、つい一つの物差しで優劣をつけてしまう人が多いのではないでしょうか。立場や役割の違いを上下関係と認識するのも、乾いた世代の特徴と言えると思います。このあたりは、個人的にも、本当に若い世代に学ぶことが多いと感じますし、もっと知りたいなあと思うところです。そしてそこをきちんと理解することが、教育現場で没入学習ができる環境をつくるための鍵なのではないか、と、あらためて考えることができました。

没入学習が、イノベーションを起こせるジェネラリストを育てる 1→10drive 梅田 亮さん、森岡 東洋志さんインタビュー その2

こんにちは。清水葉子です。先日、「イノベーションのためのアート・デザイン教育とその可能性―STEMからSTEAMへ」というタイトルで、私学マネジメント協会が発行している雑誌に記事を書きました。 その過程でどうしても、1→10drive(株式会社 ワン・トゥー・テンドライブ)さんにお話しをお聞きしたい!と思いまして、代表取締役CEOの梅田 亮さん、同社執行役員CTOの森岡東洋志さんにお話をうかがいました。

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イノベーティブかつ専門性を持ったジェネラリストを育てるキーワードは「没入」と「モチベーション」だと、前回のブログに書きましたが、具体的にどのようなことなのかを、続けてうかがいました。

 

「モチベーション=やる気」が差につながる時代が来ている

この10年間で、個人の発信力やコンピュータやテクノロジーを取り囲む環境が、大きく変わり、個人がどんどん力を発揮できるようになっているようです。「昔は影響力を持つものがテレビ、新聞のようなマスメディアしかなかったのが、今はSNSに自分の体験を書けば、100万人、1000万人の人が見てくれる可能性がある。これがあらゆることに影響を及ぼしていますね(梅田さん)」

 

「10年間の変化は色々ありますが、一番大きいのはPCのスペックが飛躍的に上がったことでしょうか。例えば1秒間に100回しか計算できなかったことが、1回で100万回計算できるようになると、できることの範囲が確実に増えていきます。もうひとつはインターネットですね。色そのスペックが上がったコンピュータが世界中で広がっているので、出来ることが単純に増えます(森岡さん)」

 

「物とか機材の値段が下がり、購入ルートが変わったというのも大きいです。昔は例えばちょっとしたモーターを買いたいとなった時に、工場に行くと、3000個のロットからしか販売できないと言われ、それじゃあ買えないから秋葉原の小さい店に行って探すか、など、小さいモータ―を買うのもすごく大変だったし、モーター1個の値段も高かったのですが、今でしたらネットで探せば値段も安くて1個から変える、という状況になっています。海外の製品も同様です。昔だったら超ノウハウとコネクションの世界で、大企業しか手に入れられなかったのが、中学生でも手に入れられる時代になってきたということです。個人でも興味さえあれば色々なことができる時代です。(梅田さん)」

 

だからこそ、個人が動くきっかけとなる興味、モチベーション、やる気がますます大事になるといいます。

「やる気があってちょっとにぎれば、以前に比べて個人のできることが増えているので、10倍20倍の知識が手に入ったり、10倍20倍のことができる分、やる気がない人との差はどんどん開く。これからはよりそれが顕著になるでしょうね(森岡さん)」

 

ちょっと怖い気もしますが、好きなことをやり続けるとそれがいつか自分の人生を切り開くようになるというのは、幸せなことでもあるのではないでしょうか。

 

プログラミングについてはどうでしょうか。「コンピュータというツールは、絵筆とか、他のグラフィックでできることは明らかに違います。コンピュータでできることを知ると、デザインのその考え方自体が変わってくるので、やはりコンピュータは使えたほうが良いと思います。ただ、プログラミングを学ぶというと、職業訓練みたいな感じがするので、プログラミングを使って自分のやりたい何かにアプローチするほうが良いのではないでしょうか。極端な話、やりたいことが実現できていれば、プログラミングの書き方は最初はぐちゃぐちゃで良いと思います。例えばグラフィックが好きなのであれば、グラフィックがプログラミングで簡単につくれる環境というのはたくさんあるので、そういうのをためしてみると、自分の好きなものの領域でプログラミングがどう寄与するのかを感じられると思うんですね。音楽だってゲームだってグラフィックだって、パソコンを使えばできることが増えるのは間違いないので、むしろやりたい分野でパソコンを使ってみる、ということが大切なのではないでしょうか(森岡さん)」

 

「プログラミングが嫌いになってしまうくらいなら、小中学生からプログラミングを学ばないほうが良いと思います。1→10では、社会人になってからプログラミングを勉強している人が多いですが、勉強のスタートは自分の感動から入っている人が多いです。例えばクラブに行ってVJがめっちゃかっこよかった。それがどんなふうにつくられているかを調べたら、プログラミングでやっていたことがわかったので、勉強してみようとか。メディア芸術祭に行って、そこでの展示がすごくかっこよかったからあれを真似してみようとか(森岡さん)」

 

「現状で満足できなくなったり、これをもっとこうすればよいのに、と思うことも、プログラミングをやってみようと思うきっかけになると思います。例えばインスタグラムを使っていて、その使い勝手っていまいちだよねと思うとか、こういう情報を調べたいのにインスタグラムの機能だとできないのをどうやったら解決できるかって考えるとか(森岡さん)」

 

お2人のお話からは、新しいものを生み出す際はどんな専門であってもデザインする力が必要とされること、現在、そしてこれからの時代は、発信も含め、個人ができることが増えてきたということ、その推進力となるモチベーションや興味が、全てのプロセスに関わってくるし、自分の好きに没頭することが、未来を切り開くのだなあ、と感じました。

 

梅田さん、森岡さん、お忙しいところインタビューにお答えいただき、ありがとうございました!

 

↓1-10driveさんのホームページはこちらです。

www.1-10.com

 

↓前回の記事はこちら

arts.hatenablog.jp

没入学習が、イノベーションを起こせるジェネラリストを育てる 1→10drive 梅田 亮さん、森岡 東洋志さんインタビュー その1

 こんにちは。清水葉子です。先日、「イノベーションのためのアート・デザイン教育とその可能性―STEMからSTEAMへ」というタイトルで、私学マネジメント協会が発行している雑誌に記事を書きました。 その過程でどうしても、1→10drive(株式会社 ワン・トゥー・テンドライブ)さんにお話しをお聞きしたい!と思いまして、お忙しい中お時間をいただきました。色々な企業がある中で、1→10driveさんは、技術とデザインの関係性がとてもフラットで、かつ、その両面が優れたコンテンツを生み出されている、と感じているからです。

代表取締役CEOの梅田 亮さん(写真左)、同社執行役員CTOの森岡東洋志さん(写真右)にお話をうかがいました。

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1→10driveは、映像、プロダクトなど、幅広い手法で人の気持ちを動かしたり、感動を与える仕組みをつくる会社です。キーとなるのは個人の「体験」。例えばかっこいい映像に驚いたり、触って反応があったり、これまで見たことが無い製品だったり。そういう心が動く瞬間を作りながら、ユーザーを増やしていく。1→10driveが手掛けるほとんどのプロジェクトがそのような「体験」をつくることを目的としています。そして、提供する体験はプロジェクトによってさまざまです。

 

人の気持ちが動くきっかけとして、ほんの10年前まではマスメディアが圧倒的に強かったのに、個人の発信力が高まった今、その地図は大きく変わっているといいます。

そこでキーになってくるのは個人の「体験」。例えばかっこいい映像に驚いたり、触って反応があったり、これまで見たことが無い製品だったり。そういう心が動く瞬間を作りながら、ユーザーを増やしていく。1→10driveが手掛けるほとんどのプロジェクトがそのような「体験」をつくることを目的としています。そして、提供する体験はプロジェクトによってさまざまです。

 

「業務を限定しないために、色々な分野のプロフェッショナルが集まっているのが、弊社の特徴です。CGのプロフェッショナルが数人、デザイナーが数人、プログラマーが数人、といったようなメンバー構成とすることで、柔軟なアウトプットが可能になるからです(森岡さん)」クライアントからの相談は、「何度も訪れてもらえるような展示を」のような、目的先行型のものもあるそうです。「そこから社内で相談し、目的を達成するために映像で説明したほうがよければ映像のチームをつくりますし、アプリケーションをつくったほうがよければ、エンジニアを使ってプログラムを書いてアプリケーションを作るし、Webサイトを作ったほうがよければWebサイトをつくります(森岡さん)」

 

たとえば2015年の冬季に京都水族館で行われた「雪とくらげ」というインスタレーションでは、「お客さんを呼ぶシーズン限定のコンテンツをつくりたい」「地元以外の人も来て欲しい」「飼育員も納得感があるものを」という相談を受けて、どういうコンテンツをつくれば解決できるのかを、社内の方達を中心に、チームをつくって検討していったそうです。「まず、映像的なビジュアルとしては、あまり水族館になじまない映像をつくってしまうと、生き物を見に水族館に来るお客さんと、プロジェクションマッピングを見に来るお客さんが乖離してしまう。そうすると、飼育員さんたちが、「これって別に水族館でやらなくてもいいよね」という感想を持ってしまいます。なので僕らは、水族館じゃないといけないプロジェクションマッピングにしたいと思い、くらげを中心とした映像を決めていきました。また、インタラクションをつけたのは、映像のプロジェクションマッピングだと、お客さんのリピート率が高くなく、長期間実施していると客足がにぶってしまいます。インタラクションをつけると、リピート性があがるし、子どもというターゲットも取り込めるというねらいもありました(森岡さん)」さらに、映像の表現詳細や、リピートをねらった映像の変更、京都らしさなども加えていったそうです。

www.youtube.com

 

このように最初の段階から、デザイナー、エンジニアが会議に入り、話し合いを進めていくことが1→10driveさんの基本方針のようですが、専門性の違うメンバーがコンセプトから話し合いを進める難しさはないのでしょうか。

「たしかに、デザイナーはグラフィック、モーションデザイナーはアニメーション、プログラマーはプログラムというように、自身の解決方法を持っていますが、全員の中心にあるのは(ユーザー側の)「体験」です。例えば触れると波紋が広がる映像があったとして、波紋が出るのが、5秒遅延していたら気持ち悪いよね、という体験の課題を、プログラマーだったら処理を早くすることで解決できるし、デザイナーだったら波紋の出方にためをつけてあげれば一続きのアニメーションに見えるかもしれないからグラフィックで調整できるかもしれない、というように自分達の得意分野の中で、ユーザーの体験をどう良くできるかを提案していきます。このように「体験」が中心にあるので話題がかみあわないということはあまりないですね。逆に言うと、エンジニア目線でどうこうという話はその場ではしなくて、それはすごく手前の段階ですませておくようにします。自分の制作者としての立場をいったん脇に置き、どうすれば全体が良くなるかを考える。そういう力を持った人が協業しやすいですね(森岡さん)」 

 

梅田さん、森岡さんによると、それぞれの専門性を持ちつつも、他の領域にもリーチして考えられるジェネラリストが、新しいものを生み出す環境では、重要な役割を果たすそうです。特に1→10driveでは、「体験」をデザインできることが重要で、デザイナーはもちろん、エンジニアにもその能力が求められることになります。

「これだけ情報があふれる世の中ですから、1つのことのプロフェッショナルは、すごく人口が限られるようになっていくんじゃないかと思います。第一人者がいればよく、1.5流のことが1つできる人は、たぶんジェネラリストも1.5流くらいにはなれるので、そういう人たちに1種類の1.5流の人は勝てないかもしれません。1.5×複数がないと、これから生きていくのは大変なのではないかなと(梅田さん)」とはいえ、1→10のみなさんは常に技術をみがいていらっしゃるのが、すごいところです。

 

「特に技術の分野は新しいものがどんどん出てくるので、日々新しいインプットが必要です。新しいプログラムやソフトは触ってみないとわからないし、前までできなかったけどできるようになったことを見つけようとしています(森岡さん)」

 

1→10のみなさんのような、イノベーティブかつ専門性を持ったジェネラリストはどう育つのか、というと、その鍵は「没入」と「モチベーション」にあるようです。

「中学生くらいの年齢の子に言うとしたら、何かひとつ、なんでもいいのでモチベ―ディブにやってみな、ということですね。部活動でも何でもよいので、やってみるのが良いと思います。漫画でもお絵かきでも、マンホールの蓋を写真に撮るでも、追及するのはなんでも良いと思います。親や周りからくだらないとか、そういうのはやめなさいと言われても、そういうことにとらわれないで、好きだという気持ちに素直になって、続けることが大事だと思います(梅田さん)」

 

好きなことを見つけ、没頭する中で知識や技術を身に付けて行く。そしてまた次の好きなことを見つけることで、その人の強みが増えていくそうです。

(続きます)

 

↓1-10driveさんのホームページはこちらです。

www.1-10.com

 

↓その2はこちらです。

arts.hatenablog.jp

デザインを社会とつなげる!―近畿大学文芸学部文化デザイン学科

みなさんこんにちは。清水葉子です。

先日、日本インダストリアルデザイナー協会のツアーに参加させていただき、近畿大学東大阪キャンパスを見学させていただきました(過去2回のブログをご参照ください)。

最後に、施設を案内してくださった、文芸学部文化デザイン学科の先生方に、文化デザイン学科について、お話をうかがうことができました。

 

お話をうかがったのは、

文芸学部 文化デザイン学科デザイン系の

岡本清文先生と柳橋肇先生です。

 

↓お話をうかがったゼミ室

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近畿大学文芸学部には、文学科(日本文学、英語英米文学)、芸術学科(舞台芸術、造形芸術)、文化・歴史学科があり、文化デザイン学科は20164月に開設された、新しい学科です。

 

www.kindai.ac.jp

 

文科系の学部の中にあるデザイン学科。どのような学科なのでしょうか。

 

文化デザイン学科の立ち上げにあたっては、社会の幅広い分野で、デザインが必要とされているという認識が背景としてあったそうです。仕事の領域を超えてデザインが必要とされている状況の中で、日本のデザイン教育は技術を教える比重が高く、デザイン的な思考を育てたり、デザインについて幅広く学べる機会が少ないそうです。

 

「日本のデザイン教育は、ずっとデザイナーを育てようとしてきたと思うんです。ただ少し発想を変えると、デザインを発注する側、クライアントが洗練されて、センスがあると、とても良いものができるのです(岡本先生)」

 

「大学のあるここ東大阪にも中小企業はたくさんありますが、デザイン部を抱えているような企業はほとんどなく、最近は、自社でもオリジナル商品をつくりたいなど、デザインに対するニーズは出てきています。必然的に外部に発注する形になるのですが、デザイナーの選び方からわからない場合が多くみられます。そういった会社に、営業でも企画でも、ポジションはなんでも良いのですが、デザインを理解している人材がいると、社内の企画からデザイナー選択、プロセス管理までがスムーズにいくと思うのです。もちろん実際に手を動かす人も育てたいと思っていますが、ひとつの人材イメージとして、こういう形もあると思っています(柳橋先生)」

 

優れたデザインは、発注者があってこそ、生み出されるものですよね。より多くの人が良いデザインを享受するために、デザインをプロデュースする役割は、これからもっと必要とされそうです。

 

この学科での学びは、もう少し広い範囲でも応用できそうです。

「これからの時代、営業職であっても、クライアントとの会話の中で出てきたアイディアをわかりやすく形にできたほうが、仕事が進んでいきますよね。アイディアやプロセスをぱっと図解する力は、全ての仕事で発揮できると思います(岡本先生)」

 

では具体的に、どのような教育が行われているのでしょうか。

文化デザイン学科は、感性学系、デザイン系、プロデュース系の3つの系があるのですが、3年次前半までは系を横断する形で幅広く学んでいきます。

 

 

www.kindai.ac.jp

感性学系では、人の活動や行動に影響を与える感性について知識を深めるため、日本と西洋の文化史、感性文化、視覚文化、表象文化論、などをしっかりと学びます。

デザイン系ではデザイン史とデザイン論について、実習も含めて学びます。プロデュース系では、コミュニケーション、プロデュースについて学んだあと、接続する社会についても様々な角度から学んでいます。産学連携プロジェクトも同時進行で進んでいて、たとえば「ホスピタルアート」のプロジェクトでは、病院と連携し、美術展や演劇パフォーマンス、音楽会などを院内で開催することで、患者さん達を精神的にも癒す活動をされているそうです。

 

デザインの基礎を技術も含めしっかりと学び、デザインが社会とどうつながっていくのかを考えながら実践的なプロジェクトに関わることで、デザインの社会への応用やプロデューサー的感覚を身につけていけるのでしょうね。岡本先生は建築、柳橋先生はプロダクトデザインと、それぞれ実務のご経験があることも、デザインと社会の接続に大きな効果をもたらしていると、お話をうかがっていて、あらためて思いました。

 

卒業後の進路としても、デザインはもちろん、ビジネス、起業、コミュニケーション、マーケティング、マスコミ公務員など、幅広く想定されているそうです。 

ツアー参加者の中からも、企業の様々な場面でデザインの思考、能力が求められているという実感をともなった感想、意見が多く出されていました。

 

ツアーに参加させていただき、また、デザインについての色々なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。今は1年生と2年生の2学年が在籍する新しい文化デザイン学科。今後どのように学びが進められ、卒業生がどのように巣立っていくのか、楽しみですね。

様々な「知」が同居する空間―近畿大学アカデミックシアター

こんにちは。清水葉子です。

先日、日本インダストリアルデザイナー協会のツアーに参加させていただき、近畿大学東大阪キャンパスを見学させていただきました。

 

本日は今年4月に完成したばかりのアカデミックシアターについて書きます。

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館内模型を使ってご説明しますと、

アカデミックシアターは5つの建物で構成されています。

1号館:インターナショナルフィールド ラーニングコモンズ、インターナショナルスタディーズエリア、インターナショナルラウンジ、インターナショナルセンターからなる留学生との交流、語学学習のためのエリアです。

2号館:実学ホール/オープンキャリアフィールド 実学ホール、オープン・キャリアフィールドからなるエリアで、就職支援、学生と卒業生、社会人との交流のためのエリアです。

3号館:ナレッジフィールド 自習室、グループ学習のためのエリアです。

4号館:アメニティフィールド カフェ、ラウンジを中心としたエリアです。

 

そして、5号館、小さな建物の集合のように見えるのが、今回ご紹介します、ビブリオシアターです。

 

いったい中はどうなっているのでしょうか?

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内部はこんな空間となっていて、約20棟のほぼ正方形の2層の建物を、回廊がつなぐ形となっています。写真は1階部分で、手前が回廊、奥が正方形の建物となります。

各棟には「ACT(アクト)」と呼ばれるガラス張りの部屋(1階、2階合わせて42室)と、書架があります。1階には書籍が中心となった3万冊、2階にはマンガが中心の4万冊です。

 

1回書架

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2階書架

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それぞれ分類のタイトルがおもしろく、手にとって読みたくなります。この計7万冊とは別に、図書館はあるそうですから、その蔵書量に驚きます!

 

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こちらもアクト(個室)の1つ。模型や図面が展示されていました。42室あるこれらの場所は、大学内の研究室やゼミ、場合によっては学生のグループが仕様を申請し、半期ごとに審査、許可がされるそうです。

 

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近大マグロUHA味覚糖の共同ラボもありました。

 

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館内には色々な場所があり、4号館にある2か所のカフェとも接続しています。

 

入り組んだ路地に色々な空間がある、町のような場所でした。

 

見学させていただき、ありがとうございました!

 

 

 ↓近畿大学 アカデミックシアターのホームページはこちらです。

act.kindai.ac.jp

遊びながら英語を学ぶ―近畿大学英語村 e-cube(イーキューブ)

みなさんこんにちは。清水葉子です。

先日、日本インダストリアルデザイナー協会のツアーに参加させていただき、近畿大学東大阪キャンパスを見学させていただきました。魅力的な施設や教育を順に紹介させていただきます。

 

近畿大学東大阪キャンパスの西門を入るとすぐ左手に、木とガラスでできた建物が目に入ります。こちらが200611月にオープンした英語村e-cube(イーキューブ)の建物です。

 

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英語村のコンセプトは「遊びながら英語を楽しく学ぶ」。英語嫌いだと英語はうまくならない、勉強に遊びを取り入れるのではなく、遊びを中心に置き、結果学びにつながることを大切にされているそうです

基本設計は、文芸学部文化デザイン学科教授の岡本清文先生。

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遊びながら英語を学ぶというコンセプトを形にするために、小部屋にわかれた建物ではなく、1つの大きな箱にコミュニティを詰め込む形とされたそうです。

 

18m×18m、高さ10mの建物内部は、柱が1本も無い大空間となっています。

柱の無い空間、かつ、構内の他の建物にはない雰囲気を作り出すために、岡本先生が採用されたのは、集成材のオールドライ工法。もともとは梁材として使う大断面集成材を、菱垣上に組み上げることによって、柱の無い空間を実現させました。

 

 

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内部から見ると、このように明るく、開放感のある雰囲気になっています。左手はアクティビティスペースとなっています。ちなみに、1歩こちらの空間に入ると、発して良いのは英語のみです。

 

専属スタッフによって、毎日何かしらのプログラムが実施されていて、学生達は予約なしで気軽に参加することができます。授業の間に立ち寄る学生も多いそうです。

 

 

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所属スタッフは20名超。国籍も様々です。

 

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さきほどの写真の右手に映っているのがカフェ。英語で注文します。

 

このように明るい大空間の中で、お茶をしている人もいれば本を読んでいる人もいる、アクティビティに参加している人もいる、という状況は、たしかにリラックスできて良いなあ、と感じました。

レッスンのように小部屋に入った瞬間ネイティブの先生とばっちり目が合う、という環境は、英語が苦手と思っていると、つい委縮してしまいますよね。ちょっとお茶を飲みに行こうかなー、という気持ちで英語村にやってくる、というのは、心理的なハードルを下げますね。普段は学生向けですが、長期休暇には一般に開放されることもあるようですので、お近くの方はぜひ行ってみてください。

 

↓英語村のページはこちらです。

近畿大学英語村E3[e-cube]