「STEM to STEAM」をけん引する John Maeda 氏とRISDについて

こんにちは。清水葉子です。

いよいよ夏休みも終盤ですが、みなさまはどのような夏を過ごされましたか?

私は先述しましたように暑さにまけていたのですが、それ以外で言いますと、アートに関する資料を読みあさっておりました。しかし英語の文章を読むのはなかなかスムーズに行かず、体力とともに英語力のアップを誓った夏でした。

 

さて、その中で、知れば知るほど魅力的な人物と組織について書きたいと思います。ジョン・マエダ氏と、RISD(ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン)についてです。

 

“Art and design are poised to transform world economies in the 21st century just as science and technology did in the 20th century. (サイエンスとテクノロジーが20世紀の世界経済を変えたように、アートとデザインは、21世紀の世界経済を変える)”

 

グラフィックデザイナーであり、ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン(Rhode Island School of Design=RISD:アメリカ合衆国の私立美術大学)の前学長を務め、STEM教育に芸術のAを加えたSTEAM教育の提唱者である、ジョン・マエダ氏の言葉です。

 

日系アメリカ人としてアメリカ合衆国で育ったマエダ氏は、マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology=MIT)工学部でコンピュータを学び、その後、筑波大学大学院で芸術を学びます。アメリカに戻りMITメディアラボの教授となり、その後RISDの学長に就任、2008年~2013年まで学長を務めた後、シリコンバレーベンチャーキャピタリストとして、スタートアップを支援し、現在は、WordPress.comの親会社Automattic(オートマティック)に所属という経歴をお持ちです。

 

サイエンス・テクノロジーとアート・デザインの両方の世界を経験された彼が発する「アートとデザインは、21世紀の世界経済を変える」という言葉には、とても説得力があると感じます。

 

STEMとは、アメリカ国立科学財団(National Science Foundation=NSF)がこれからの社会で身に着けておくべき力として、1990年代に発表したもので、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)

の頭文字を取ったものです。2013年には国家戦略となり、K-12(幼稚園から高校までの12年間)のカリキュラムもそれにそったものになっているようですね。

 

一方STEAMは、STEMに芸術(Art)を加えたもので、ジョン・マエダ氏がRISD学長に就任した2008年に発表され、前述のNSFなども巻き込んでK-12プランがつくられたり、政府に提言がなされていますが、未だ国家戦略とはなっておらず、STEAMに賛同した学校や企業、個人が様々な形で実践をしているという状況です。

 

中でもマエダ氏が強く主張をしているのは、アートやデザインは見た目を美しくするだけではなく、もっと経済やビジネスの中心にあり、なくてはならないものだということです。実際に、RISDからはAirbnbの創設者など多くの起業家が育っています。こちらのジョン・マエダ氏のプレゼンテーションにおいて、後半にリーダーシップとは何かを解説する部分があるのですが、このように全体の構造をとらえなおし、独自のフレームをつくりだすのにも、アートやデザインの力が使われているのだと感じます。

 

www.ted.com

 

先日翻訳本が出されたばかりの

ロードアイランド・スクール・オブ・デザインに学ぶ クリティカル・メイキングの授業―アート思考+デザイン思考が導く、批判的ものづくり」では、RISDの教育方法について詳細に紹介がされています。

 

www.amazon.co.jp

 

その中で私が感じたのは、RISDでは創造的問題解決の力をつけることを大切にしていて、そこにはわかりやすいプロセスがあるというよりは、多くの機会(失敗を含む)があるということです。大量のインプットをしながら、この方向性で良いのか、このコンセプトで良いのか、この手法で良いのか、この素材で良いのか、自分に問い続け、プロトタイプを繰り返す孤独なプロセスを得て、何かを生み出し、あらたな問いと向き合う。そうすることで、イノベーティブな力は育っていくのだと感じます。

 

先の書籍の中でファンデーション・スタディーズの准教授レスリー・ハースト氏が「私が何を望んでいるのかがわからない、と学生たちはよく言うが、彼らの解決策が私の要求に基づいていなければならないとでも思っているのだろうか(中略)自分で考えれば、この時点で答えより問いのほうが多くなり、私には思いもよらない場所に、彼ら自身がたどり着くだろう」と述べているのですが、こういう、自身と向き合う孤独な(本当は見守られている)時間は贅沢で、大切だなと、自身の経験を振り返っても、思います。こういう贅沢な時間、中高で取れないかなあ。。。

 

現在ジョン・マエダ氏は、1年に1度、「Design In Tech Report」を発表されていて、デザイン会社がTech系の企業やコンサルティング会社に買収されている(つまり必要とされている)ことを紹介したり、デザイナーが社会でどのように活躍しているか、どのような力が必要かなどを紹介しています。教育の世界から、卒業生達の仕事をつくりだす場所に、その立ち位置を変えられているようにも見受けられます。

 

www.slideshare.net

 

STEAM教育の広がり、アーティスト、デザイナーの立ち位置の変化、どちらの動きもとても興味深いので、引き続きウォッチして、あらためてご紹介していきますね。

サイエンスとアートの教育者が、STEAM教育についてともに考える場が、日本にもできるといいですね!

 

↓RISDホームページ

www.risd.edu

 

↓STEM to STEAMのページ

STEM to STEAM

データを視覚化する効果―地域経済分析システム「RESAS(リーサス)」について

突然ですが、みなさんは、データ、好きですか?

私は、大好きです。広報や入試関連の講座で登壇するときに、データ好きです!というと、ちょっと引かれてしまうことがあるのですが、ていねいに、十分な量が取られ、ぶれない、わかりやすい切り口で分析されたデータは、とても美しいです。

ただ、より多くの方にそのデータを理解していただくためには、それを視覚的にわかりやすく示す必要があります。数値も言語も最低限でぱっとわかる、それは、インフォグラフィックスとも言われますね。そこまではいかなくとも、きれいに整理されたグラフは、多くの人の理解を促します。

 

本日ご紹介するのは、見たいデータをわかりやすくグラフ化してくれる、

「地域経済分析システム RESAS」というサービスです。

 

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こちらは、経済産業省内閣官房が連携し、自治体による地方創生の取組を情報面から支援するために立ち上げられたシステムです。「地域経済分析システム(RESAS:リーサス)」 を提供しています。これまでe-Statや国立人口問題研究所、厚生労働省などがそれぞれ公表していたデータを集め、人口、産業、まちづくりなど、テーマごとに検索しやすくするとともに、そのデータの一部を、その場でグラフやマップにしてくれるというサービスです。オープンなホームページなので、誰でも見ることができます。

 

↓操作画面はこれです。該当データをまずマッピングしてくれて、その上でグラフとしても見ることができます。

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↓例えば、大阪府の人口増減率(2040年までの推計含む)はこのようなグラフであらわされます。

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↓こちらは、東京都の人口ピラミッド比較。左右の年代を個別に指定することができます(例えば左が1985年、右が2000年とすることも可能です)。

 

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↓こちらは、東京都の企業の業種別分類です。

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データによっては市区別に見られたり、他の自治体と組み合わせての表示が可能です。

 

地域創生のためにつくられたサービスなので、どうしてもその関連データが多いのですが、学校基本調査からの引用も一部あります。

 

↓こちらは、地元の大学への進学率をマッピングしたものです。

北海道、東京、愛知、福岡が地元進学率が高いのですね!

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↓またこちらは、大阪府流入進学者(大阪の大学に進学した人の出身地)、流出進学者(大阪からどの大学に進学したか)の県別内訳です。

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私は仕事柄、色々なデータ元からの数値を編集し、グラフ化するということは数多くやってきましたが、このように、色々な参照元からデータを集め、見やすいグラフにしてくれるサービスがあることで、より多くの人がデータを利用しやすくなると感じました。

そして、データを視覚化する効果というのはやはり絶大だと感じました。

 

学校、教育関係のデータがもっと増えることを個人的には願いますが、

現在のデータからも色々と参考になりますので、ぜひ一度ご覧になってみてください。

使い方を動画や小テストで学べるという親切な機能もついています。

 

resas.go.jp

 

ぜひご参照くださいね。

キャリア支援の再デザインで、働き方の未来を変えていく! ―関西大学+TSUTAYAによるスタートアップカフェ大阪の挑戦。―その2

前回のブログでは、関西大学さんの梅田キャンパスでの取り組みについてご紹介しました。今回はその環境づくりにフォーカスをしていきます。

 

↓前回の内容はこちらです。

arts.hatenablog.jp

 

「計画された偶発性(Planned Happenstance)」が起こりやすい環境とは

梅田キャンパスで開催されるイベントには、多くの起業家が登壇されるという話を、前回ご紹介しました。起業家を身近に感じてもらうことで、自分ももしかしたらできるかもしれない、やってみたい、という想いを学生たちが持てるようになることを大切にされています。

 

また、こちらで開催されたハッカソンに何度か参加して、プロジェクトをチームで進める楽しさを発見した学生もいます。彼女はもともとそれほど積極的ではないほうだったそうですが、大学でハッカソンのことを知り、プランナーとして参加してみて、大人も参加するチームで、色々な議論をどう進めるかを学び、その結果優秀賞を取ることができました。そう行った経験を通して自己成長を感じることができ、次の段階として、ハッカソンを主催しようと、企画中なんだそうです。

 

彼女が経験したような、自分が予想もしなかった想定外の出会いがあり、その結果自分の得意なことや、やってみたいことを発見したり選択することを「計画された偶発性(Planned Happenstance)」と言うそうです。スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が提案したキャリア論に関する考え方で、おそれず偶発性を求めて動くことがキャリア発見のコツだそうで、さきほどの学生さんの動きはまさにこれだと言えますね。

 

偶発性が起こりやすい環境をつくるため、スタートアップカフェで意識されているのは、

色々な立場の人たちが混じった状態をつくること。つまり「産学連携2.0」の状況だそうです。これまでの大学には先生(学)と学生がいて、教える、教えられるの関係性が明確でした。企業と大学の連携があったとしても、研究室単位の限定的なものでした。これからは、産=企業、官=行政、学=大学、金=金融、言=メディアが連携して、できるだけオープンにかつ多層的に連携することで、教える→教えられるの1方向ではなく、双方向で、ともに何かをつくっていけるようになる、というのが、産学連携2.0のねらいです。

 

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外部の人が入ってくる環境でこそ、新しい知見や予期せぬ出会いも得ることができる。起業の支援を受けに来る方も、別の側面では与える側になったりもする。そして梅田という、様々な人たちが集まる場所だからこそ、この環境をつくることができるそうです。

 

先日は梅田キャンパスのある北区をテーマに、北区の未来についてのフューチャーセッションが行われました。今後はますます多様な背景を持った方達がこの循環に参加されるようになるでしょう。

 

それもあり、他の起業支援機関と比べて、スタートアップカフェは相談のハードルを低くされているそうです。起業プランが明確でなくても、起業すると決めていなくても、なんとなく起業に興味がある、という段階からの相談もウェルカム!ということです(財前さんのファッションにはその雰囲気が表現されているそうです!)。スターバックスに来て、またはTSUTAYAに来て、スタートアップカフェを見つけ、立ち寄られる方もいらっしゃるそうで。コーディネーターのみなさんが優しく相談に乗ってくださるので、興味をお持ちの方はぜひ、行ってみてください。

 

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今回取材をさせていただいて感じたのは、スタートアップカフェの目的の明確さと、それを実現するための方法の柔軟さが同居している面白さです。

 

自己のキャリアを考えるにあたり、起業という選択肢を加えること、産学連携2.0を形成することで、キャリアの偶発性を起きやすくすること、が、スタートアップカフェ大阪の目的です。それを実現するにあたり、最初から方針を決めすぎていると、広がりが生まれないと財前さんはおっしゃいます。財前さんの人脈もとても広いのですが、その範疇でのセッティングだけでなく、さらにその外側の弱いつながりをたどっていくことで、新しいネットワーク、新しい機会が生まれ、好循環をもたらすそうです。

 

この、グリップしておく部分と手放す部分のバランスが、スタートアップカフェ大阪を成功に導いていくのでしょう。今までなんとなく面白そう、良いな、と感じていたこの場所の、何が良いのかが理解でき、さらに良いなあと感じることができました。

 

学生の将来を真剣に考えられる大学って、本当に素晴らしいと思います。

財前英司さん、お忙しいところご対応をいただき、ありがとうございました!

 

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キャリア支援の再デザインで、働き方の未来を変えていく! ―関西大学+TSUTAYAによるスタートアップカフェ大阪の挑戦。―その1

みなさまこんにちは!清水葉子です。

先週はちょっと夏の暑さに負けてしまい、更新があいてしまいました。

みなさまもお気をつけくださいね。

 

さて本日は、今梅田で注目のスタートアップ支援拠点、スタートアップカフェ大阪についてです。先日、コーディネーターの財前英司さんにインタビューをさせていただきましたので、ご紹介をしていきます。

 

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スタートアップカフェ大阪は2016年10月にオープンした、起業家、スタートアップの支援拠点です。コーディネーターによる無料アドバイス、日本政策金融公庫、行政書士、税理士、司法書士、弁護士などによる個別相談会、イベント、セミナーなどで、起業をしたい人たちを支援しています。関西大学と株式会社TSUTAYAの共同運営で、関西大学の学生や卒業生はもちろん、一般の方の起業も、広く支援されているのが特徴です。

 

関西大学梅田キャンパス。1,2階にTSUTAYAスターバックスがあり、スタートアップカフェは2階にあります。

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オープンして10か月で、こちらで行われたセミナー、イベントはすでに150以上!魅力的な登壇者を招いたセミナー、イベントが毎日のように開催されていますし、フューチャーセッション、ハッカソンなどの参加型イベントも多く開催されています。私もこれまで何度か参加させていただきましたが、いつもリラックスできる雰囲気で、参加者にも魅力的な方が多いなぁと感じます。

 

関西大学のメインキャンパスは、吹田市千里山キャンパスです。にも関わらずなぜ梅田で、起業支援をスタートされたのでしょうか。またなぜ、その支援を広く一般に向けて提供されているのでしょうか。そしてコーディネーターの財前さんは、なぜいつもスーツでなく、オープンでフレンドリーなのでしょうか!そのあたりもうかがいました。

 

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財前さんは関西大学の職員として、管理会計や財務戦略の業務に携わられていました。そのご経験の中で、大学出資の事業会社「関大パンセ」を発案、大学からの出資を受けて、立ち上げ時の2012年より経営に関わってこられました。今回、その手腕を買われ、梅田キャンパスの立ち上げに抜擢されたのです。

 

起業支援はキャリアの選択肢を広げる

まず、スタートアップカフェ立ち上げの目的についてうかがいました。

「スタートアップカフェ立ち上げの目的はいくつかありますが、やはり一番の目的は、学生のキャリアの選択肢を広げることです。在学中や、大学を卒業してすぐに起業することだけを期待しているのではなく、長い人生の中で、起業もひとつの選択肢である、ということを、大学生のみなさんにはわかって欲しいと思っています」

 

と財前さん。将来の進路を選択するにあたり、両親や親戚など、身近な人の職業を参照する傾向がまだまだあるそうで、加えて親の時代とは求められる仕事や役割が変わってきている中、その参照の仕方は限界がありそうです。

 

「社会全体の話で言うと、AIの発達を背景とした世の中の変化において、イノベーションを起こさなければならないということは各方面から主張されていて、それを解決する存在として起業家が求められている、という状況があります。現状では企業に就職する、公務員になる、いわゆる士業と言われる専門家になるなどの選択肢に比べて、起業はハードルが高いと感じる学生が多いため、起業をもっと身近に感じてほしいという願いから、梅田キャンパスは起業をテーマにしています」

 

↓Peatixさんと共催されたセミナーの様子。

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こちらで開催されるイベントには、多くの起業家の方達が登壇されます。もちろん起業家として成功されているのですが、年齢が20代~30代前半と、大学生から見て近く感じられる年代だったり、起業と企業勤めの境界を明確にしすぎず、どちらもやりたいことを実現するための手段として柔軟に選択する姿勢をお持ちだったりします。財前さんは「おどろくほど普通の人」という表現を使われていましたが、そうやって起業家を身近に感じてもらうことで、自分ももしかしたらできるかもしれない、やってみたい、という想いを学生たちが持てるようになることが大切だといいます。

 

最近、働き方改革、という言葉がよく聞かれるようになりました。副業や、会社に所属しない働き方が増える中、キャリアも必ず多様化する、と財前さん。大学から大企業への就職率が大学の評価指標としてまだまだわかりやすく使われていますが、もっと先の時代の変化を見据えた戦略が、梅田キャンパスでの取り組みなのです。

 

(その2へ続きます)

 

arts.hatenablog.jp

アートとデータサイエンスの関連は?―滋賀大学データサイエンス学部の取材より

みなさまこんにちは。清水です。

先日、私学マネジメント協会 - 会員誌 「FORWARD」の取材同行で、滋賀大学にうかがいました。毎号弊社の川畑が、大学の先生にインタビューをさせていただくコーナーの取材です。

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今回お話を伺ったのは、滋賀大学データサイエンス学部 学部長の、竹村 彰通先生です。

滋賀大学ではこの春(2017年4月)にデータサイエンス学部が新設され、日本で初めての学部として、注目されています。

 

www.ds.shiga-u.ac.jp

 

以前システム関係の友人から「データサイエンティストの求人がすごく多くて、求められている」と聞いたことがあり、どのくらい足りないんだろう?この時代に人気の求人ってすごいな、とぼんやりと思っていたのですが、竹村先生によると、日本ではやはり圧倒的に足りないそうです。端末やサーバの充実で、多くのデータが蓄積できるようになった(ビッグデータと呼ばれています)ものの、それを分析できる人(=データサイエンティスト)が足りないために、うまく活用できていない、というのが現状のようです。

 

インタビューの中で私が面白いなと思ったのは、データサイエンティストに必要な能力の一つに、デザイン力が挙げられたことでした。データを分析していくには、もちろん数学、特に統計の知識が必要なのですが、分析の切り口を発見したり、それを実際に活用できるようにするためには、一定のセンスが必要だということです。

 

竹村先生は、大学、大学院、その後もずっと統計がご専門なのですが、なんと高校と、大学の1年目はピアノがご専門だったということで(その後東京大学に入学されて統計を学ばれたそうです)、データサイエンスにデザイン力やセンスが必要というのは、すごく説得力があるお話だなあ、と感じました。

 

ピアノが上手な方って、バランス感覚や、俯瞰力がある方だと思います。単音ではなく、10本の指で音色を奏でるって、すごいことだと、ピアノがなかなか上達しなかった私は単純に感動しますし、たぶんそういう方達は音符も頭から「ド」「ミ」のように追うのではなく、楽譜をビジュアルで理解できるんじゃないでしょうか。音楽を聴いてピアノで再現できる力も、要素を自分の中で分解し、ロジカルに再配置しているのでしょうね。そう考えると、データ分析と音楽やデザインって、とても似ているように思えてきます。

 

それだけでなく、ピアノにはニュアンスや情緒を音で表現し、聴き手を感動させることもできますよね。データサイエンスも、扱うものは数字でありながら、人間の行動をデータにし、それをまた人間の活動に生かしていく、という意味では、数字だけでなく、人の心の動きにも意識を向ける必要がありそうです。

 

データは、データ化されれば数字ですが、そのデータを生み出しているのは人です。何かに感動したり、衝動に突き動かされたり、1人の人間が色々な感情を持ったりすることを理解し、寄り添った上で、スパッと切り口を見つけて分析、構造化できるのが、データサイエンティストだとしたら、やはりそこにはロジックだけではない、アート、デザインの力が求められるのではないかな、というのが私の個人的な感想です。

 

そして、8月1日より、データサイエンスとは何かについて学べる入門講座がスタートします。

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gaccoというオンライン講座内にあり、登録をすれば、無料で誰でも受講可能です。また、アドミッションオフィス入試の1つに、こちらの講座を受講し、課題についてわかりやすくまとめる、というものがあるので、データサイエンス学部を目指す生徒さん達にもお勧めです。

 

↓こちらからアクセスできます

誰でも受講できる統計学の無料オンライン講座の募集を開始。本教材は平成30年度データサイエンス学部AO入試Ⅱ型にも利用。君の未来にチャレンジ! - 最新情報|滋賀大学

 

統計学の復習、アンケートや蓄積データの分析視点として、大人の方もトライしてみてはいかがでしょうか?

そしてアートとの関係、発見された方は、ぜひ私、清水に教えてくださいね!

夏休みの学校がミュージアムに大変身!―オルセースクールミュージアム in 香里ヌヴェール学院

みなさまこんにちは!本格的な夏になってまいりましたが、いかがお過ごしですか?関西は本格的な夏です!暑いです!そして、今週末より夏休みがスタートした学校が多いのではないでしょうか?夏休みの校舎って、誰もいなくてがらんとしてしまいますよね。校舎もちょっと寂しそうで、誰かに使ってもらいたいと思っているかも?本日はそんな夏休みの校舎が、期間限定でミュージアムに変身している学校を、見学させていただきました。

 

見学させていただいたのは、大阪府寝屋川市にある、香里ヌヴェール学院中学校・高等学校です。この春、大阪聖母女学院から共学化し、校名も変更をされましたが、校舎は1932年に建てられた伝統的な校舎を使い続けられています。

 

チェコの建築家で、フランク・ロイド・ライトに師事していた、アントニン・レーモンドの設計のこちらの校舎は、現在は登録有形文化財にも指定されています。

 

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こちらの校舎が、本日7/22-7/30まで、ミュージアムに変身しています!

飾られるのは、フランス国立オルセー美術館所蔵の絵画30点モネやルノワールゴッホなどの作品の、リマスターアートです。

↓詳しくはこちらを。

オルセー美術館公式認定"Precision Re-master Art"

 

原画をデジタル撮影し、1億画素におよぶデータで復原した、オルセー美術館公認のレプリカだそうです。

 

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↑こちらはモネの「かささぎ」という作品なのですが、

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近寄っても筆跡や絵の具の割れがくっきり見えます。

そしてこのように、自由に写真を撮ったり、間近で見たり、ライトで照らしても良いのが、リマスターアートの良いところです。こちらの会場では、模写もOKです。

 

子どもが自由に鑑賞でき、かつ、作家のメッセージを伝えられる、というのが、リマスターアートの目的だそうです。

 

本日オープニングセレモニーが行われ、早速多くの人が鑑賞に訪れていました。

 

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開催期間中は11:00と15:00に、香里ヌヴェールの生徒さん達による作品解説が行われます。

 

子ども達にもわかりやすいような問いかけや、絵を描くコーナーもありますので、お子様連れでもたのしく鑑賞できると思います。私立中高の校舎って、普段はなかなか行けないと思いますので、この機会に訪問されてみてはいかがでしょうか?

 

↓香里ヌヴェール学院のホームページはこちらです。

香里ヌヴェール学院

未来のテレプレゼンスロボットを考える―常翔啓光学園中学校の特別授業

みなさまこんにちは!先日、常翔啓光学園中学校の中学1年生の特別授業を見学させていただきました。

会場は、今年の春、梅田に完成したばかりの、大阪工業大学の梅田キャンパスです。

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こちらには、大阪工業大学のロボティクス&デザイン工学部が入り、ロボット研究、開発を中心とした設備や研究室が並びます。

 

www.oit.ac.jp

 

授業が行われた空間も、ワンフロアほぼ間仕切り無しの広い空間で、アクティビティの大きさによって間仕切りなどで空間を区切れるようになっていました。他のフロアにも様々な工夫があり「新しいものを生み出すには、創造性のある空間が必要」という意図があるそうです。

 

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今回の特別授業ももちろんロボットをテーマとしたもので、

課題は「未来のテレプレゼンスロボットを考える」です。

 

講師は大阪工業大学ロボティクス&デザイン工学部システムデザイン工学科 学科長の松井謙二先生。ゲスト講師として、テレプレゼンスロボットを実際につくられている合同会社 iPresenceの代表、クリス・クリストファーズさんが参加されました。

 

まずは本日の課題である「テレプレゼンスロボット」について、クリスさんから解説がありました。テレプレゼンスロボットとは「そこに居ずに、そこに居ること」を可能にするロボットだそうです(写真は同社"Double"の実演です)

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Skypeのような動画通話機能に、遠隔操作で画面を移動したり、向きを変える機能を追加することで、遠隔地の人がまるでそこにいるかのようにふるまうことができるそうです。(詳しくは、iPresenceさんのホームページをご覧ください)

http://ipresence.jp/double/

 

また、クリスさんからは「新しいものを世に出す=未来をつくる」ということだというお話がありました。Future(未来)=Past(過去)+Time(時間)だが、

Wanted Future(欲しい未来)=Existing Technology(現在のテクノロジー)+Missing Technology(足りないテクノロジー)という言い方もでき、技術が望む未来をつくりだすことができる、という生徒さん達へのメッセージでした。

 

 

続いていよいよ、未来のテレプレゼンスロボットをグループで考えていきます。

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アイディアを描きやすくするために、自身の1日の流れを思い出し、時系列でタイムラインに落とし込んでいきます。

毎日の生活も、あらためて思い出してみると、苦戦するようで、学校で使用している生活記録冊子を参照しているグループもありました。

 

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次に、一日の生活の中で、特に学校で過ごす時間から、自分が大切にしている時間を選び出し、代理人のロボットにお願いしたいこと(自分がその場にいなくても、自分の代わりにぜひやってほしいこと)を書き出していきます。最初は「黒板を取ってほしい」「実験がしたい」などテレプレゼンスを前提に考えていた生徒さん達ですが、次第に、学校生活での困りごとを解決する方向での要望があふれ出してきます。例えば「先生が言っていることをまとめてほしい」「代わりに勉強してほしい」「代わりに部活の筋トレをしてほしい」「忘れ物を届けてほしい」など、代行度が高くなっていくのが、見ていて面白かったです。

 

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それらの要望をもとに、具体的にロボットを使った実現の方法を考えていきます。

紙に絵を描く形で表現し、発表となりました。

 

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電子マネーでチップを払って色々やってくれる「ぱしりロボ」」「海で魚を捕ることができる」「おなかが冷蔵庫」「忘れ物や無くし物を画像解析で教えてくれる」「寂しい時に遊んでくれる」といった、様々な機能を持つロボットの案ができあがりました。それぞれがテレプレゼンスか、というと、少し離れてしまったものもありましたが、だからこそ、これからのテレプレゼンスの可能性を広げてくれるようなアイディアが多く出たように思いました。

 

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最後、松井先生、クリスさんからの講評も「みなさんの発想が豊かなので、この夢を持ち続けて実現してほしい」「それぞれのアイディアに夢があるが、それを誰が早く実現するかが大切」など、生徒さん達の発想力に触れたものでした。

 

今回特別授業を見学させていただき、イノベーションはどこから起こるのかな、ということをあらためて考えさせられました。色々な制約から自由な中1の生徒さん達。この部分を大切にしながら、企画を詰めていく力がついてくると、本当に素晴らしいでしょうね。そしてこの特別授業に関わった、講師の先生、中学の先生など、全ての大人がその成長を見守り、楽しみにされている様子を感じることができました。

 

見学をさせていただき、ありがとうございました!