キャリア支援の再デザインで、働き方の未来を変えていく! ―関西大学+TSUTAYAによるスタートアップカフェ大阪の挑戦。―その2

前回のブログでは、関西大学さんの梅田キャンパスでの取り組みについてご紹介しました。今回はその環境づくりにフォーカスをしていきます。

 

↓前回の内容はこちらです。

arts.hatenablog.jp

 

「計画された偶発性(Planned Happenstance)」が起こりやすい環境とは

梅田キャンパスで開催されるイベントには、多くの起業家が登壇されるという話を、前回ご紹介しました。起業家を身近に感じてもらうことで、自分ももしかしたらできるかもしれない、やってみたい、という想いを学生たちが持てるようになることを大切にされています。

 

また、こちらで開催されたハッカソンに何度か参加して、プロジェクトをチームで進める楽しさを発見した学生もいます。彼女はもともとそれほど積極的ではないほうだったそうですが、大学でハッカソンのことを知り、プランナーとして参加してみて、大人も参加するチームで、色々な議論をどう進めるかを学び、その結果優秀賞を取ることができました。そう行った経験を通して自己成長を感じることができ、次の段階として、ハッカソンを主催しようと、企画中なんだそうです。

 

彼女が経験したような、自分が予想もしなかった想定外の出会いがあり、その結果自分の得意なことや、やってみたいことを発見したり選択することを「計画された偶発性(Planned Happenstance)」と言うそうです。スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が提案したキャリア論に関する考え方で、おそれず偶発性を求めて動くことがキャリア発見のコツだそうで、さきほどの学生さんの動きはまさにこれだと言えますね。

 

偶発性が起こりやすい環境をつくるため、スタートアップカフェで意識されているのは、

色々な立場の人たちが混じった状態をつくること。つまり「産学連携2.0」の状況だそうです。これまでの大学には先生(学)と学生がいて、教える、教えられるの関係性が明確でした。企業と大学の連携があったとしても、研究室単位の限定的なものでした。これからは、産=企業、官=行政、学=大学、金=金融、言=メディアが連携して、できるだけオープンにかつ多層的に連携することで、教える→教えられるの1方向ではなく、双方向で、ともに何かをつくっていけるようになる、というのが、産学連携2.0のねらいです。

 

f:id:yShimizu:20170810043307j:plain

 

外部の人が入ってくる環境でこそ、新しい知見や予期せぬ出会いも得ることができる。起業の支援を受けに来る方も、別の側面では与える側になったりもする。そして梅田という、様々な人たちが集まる場所だからこそ、この環境をつくることができるそうです。

 

先日は梅田キャンパスのある北区をテーマに、北区の未来についてのフューチャーセッションが行われました。今後はますます多様な背景を持った方達がこの循環に参加されるようになるでしょう。

 

それもあり、他の起業支援機関と比べて、スタートアップカフェは相談のハードルを低くされているそうです。起業プランが明確でなくても、起業すると決めていなくても、なんとなく起業に興味がある、という段階からの相談もウェルカム!ということです(財前さんのファッションにはその雰囲気が表現されているそうです!)。スターバックスに来て、またはTSUTAYAに来て、スタートアップカフェを見つけ、立ち寄られる方もいらっしゃるそうで。コーディネーターのみなさんが優しく相談に乗ってくださるので、興味をお持ちの方はぜひ、行ってみてください。

 

f:id:yShimizu:20170810043427j:plain

今回取材をさせていただいて感じたのは、スタートアップカフェの目的の明確さと、それを実現するための方法の柔軟さが同居している面白さです。

 

自己のキャリアを考えるにあたり、起業という選択肢を加えること、産学連携2.0を形成することで、キャリアの偶発性を起きやすくすること、が、スタートアップカフェ大阪の目的です。それを実現するにあたり、最初から方針を決めすぎていると、広がりが生まれないと財前さんはおっしゃいます。財前さんの人脈もとても広いのですが、その範疇でのセッティングだけでなく、さらにその外側の弱いつながりをたどっていくことで、新しいネットワーク、新しい機会が生まれ、好循環をもたらすそうです。

 

この、グリップしておく部分と手放す部分のバランスが、スタートアップカフェ大阪を成功に導いていくのでしょう。今までなんとなく面白そう、良いな、と感じていたこの場所の、何が良いのかが理解でき、さらに良いなあと感じることができました。

 

学生の将来を真剣に考えられる大学って、本当に素晴らしいと思います。

財前英司さん、お忙しいところご対応をいただき、ありがとうございました!

 

startupcafe-ku.osaka

キャリア支援の再デザインで、働き方の未来を変えていく! ―関西大学+TSUTAYAによるスタートアップカフェ大阪の挑戦。―その1

みなさまこんにちは!清水葉子です。

先週はちょっと夏の暑さに負けてしまい、更新があいてしまいました。

みなさまもお気をつけくださいね。

 

さて本日は、今梅田で注目のスタートアップ支援拠点、スタートアップカフェ大阪についてです。先日、コーディネーターの財前英司さんにインタビューをさせていただきましたので、ご紹介をしていきます。

 

startupcafe-ku.osaka

 

スタートアップカフェ大阪は2016年10月にオープンした、起業家、スタートアップの支援拠点です。コーディネーターによる無料アドバイス、日本政策金融公庫、行政書士、税理士、司法書士、弁護士などによる個別相談会、イベント、セミナーなどで、起業をしたい人たちを支援しています。関西大学と株式会社TSUTAYAの共同運営で、関西大学の学生や卒業生はもちろん、一般の方の起業も、広く支援されているのが特徴です。

 

関西大学梅田キャンパス。1,2階にTSUTAYAスターバックスがあり、スタートアップカフェは2階にあります。

f:id:yShimizu:20170810041553j:plain

 

f:id:yShimizu:20170810041828j:plain

f:id:yShimizu:20170810041927j:plain

 

オープンして10か月で、こちらで行われたセミナー、イベントはすでに150以上!魅力的な登壇者を招いたセミナー、イベントが毎日のように開催されていますし、フューチャーセッション、ハッカソンなどの参加型イベントも多く開催されています。私もこれまで何度か参加させていただきましたが、いつもリラックスできる雰囲気で、参加者にも魅力的な方が多いなぁと感じます。

 

関西大学のメインキャンパスは、吹田市千里山キャンパスです。にも関わらずなぜ梅田で、起業支援をスタートされたのでしょうか。またなぜ、その支援を広く一般に向けて提供されているのでしょうか。そしてコーディネーターの財前さんは、なぜいつもスーツでなく、オープンでフレンドリーなのでしょうか!そのあたりもうかがいました。

 

f:id:yShimizu:20170810042047j:plain

 

財前さんは関西大学の職員として、管理会計や財務戦略の業務に携わられていました。そのご経験の中で、大学出資の事業会社「関大パンセ」を発案、大学からの出資を受けて、立ち上げ時の2012年より経営に関わってこられました。今回、その手腕を買われ、梅田キャンパスの立ち上げに抜擢されたのです。

 

起業支援はキャリアの選択肢を広げる

まず、スタートアップカフェ立ち上げの目的についてうかがいました。

「スタートアップカフェ立ち上げの目的はいくつかありますが、やはり一番の目的は、学生のキャリアの選択肢を広げることです。在学中や、大学を卒業してすぐに起業することだけを期待しているのではなく、長い人生の中で、起業もひとつの選択肢である、ということを、大学生のみなさんにはわかって欲しいと思っています」

 

と財前さん。将来の進路を選択するにあたり、両親や親戚など、身近な人の職業を参照する傾向がまだまだあるそうで、加えて親の時代とは求められる仕事や役割が変わってきている中、その参照の仕方は限界がありそうです。

 

「社会全体の話で言うと、AIの発達を背景とした世の中の変化において、イノベーションを起こさなければならないということは各方面から主張されていて、それを解決する存在として起業家が求められている、という状況があります。現状では企業に就職する、公務員になる、いわゆる士業と言われる専門家になるなどの選択肢に比べて、起業はハードルが高いと感じる学生が多いため、起業をもっと身近に感じてほしいという願いから、梅田キャンパスは起業をテーマにしています」

 

↓Peatixさんと共催されたセミナーの様子。

f:id:yShimizu:20170810042410j:plain

 

こちらで開催されるイベントには、多くの起業家の方達が登壇されます。もちろん起業家として成功されているのですが、年齢が20代~30代前半と、大学生から見て近く感じられる年代だったり、起業と企業勤めの境界を明確にしすぎず、どちらもやりたいことを実現するための手段として柔軟に選択する姿勢をお持ちだったりします。財前さんは「おどろくほど普通の人」という表現を使われていましたが、そうやって起業家を身近に感じてもらうことで、自分ももしかしたらできるかもしれない、やってみたい、という想いを学生たちが持てるようになることが大切だといいます。

 

最近、働き方改革、という言葉がよく聞かれるようになりました。副業や、会社に所属しない働き方が増える中、キャリアも必ず多様化する、と財前さん。大学から大企業への就職率が大学の評価指標としてまだまだわかりやすく使われていますが、もっと先の時代の変化を見据えた戦略が、梅田キャンパスでの取り組みなのです。

 

(その2へ続きます)

 

arts.hatenablog.jp

アートとデータサイエンスの関連は?―滋賀大学データサイエンス学部の取材より

みなさまこんにちは。清水です。

先日、私学マネジメント協会 - 会員誌 「FORWARD」の取材同行で、滋賀大学にうかがいました。毎号弊社の川畑が、大学の先生にインタビューをさせていただくコーナーの取材です。

f:id:yShimizu:20170730000009j:plain

 

今回お話を伺ったのは、滋賀大学データサイエンス学部 学部長の、竹村 彰通先生です。

滋賀大学ではこの春(2017年4月)にデータサイエンス学部が新設され、日本で初めての学部として、注目されています。

 

www.ds.shiga-u.ac.jp

 

以前システム関係の友人から「データサイエンティストの求人がすごく多くて、求められている」と聞いたことがあり、どのくらい足りないんだろう?この時代に人気の求人ってすごいな、とぼんやりと思っていたのですが、竹村先生によると、日本ではやはり圧倒的に足りないそうです。端末やサーバの充実で、多くのデータが蓄積できるようになった(ビッグデータと呼ばれています)ものの、それを分析できる人(=データサイエンティスト)が足りないために、うまく活用できていない、というのが現状のようです。

 

インタビューの中で私が面白いなと思ったのは、データサイエンティストに必要な能力の一つに、デザイン力が挙げられたことでした。データを分析していくには、もちろん数学、特に統計の知識が必要なのですが、分析の切り口を発見したり、それを実際に活用できるようにするためには、一定のセンスが必要だということです。

 

竹村先生は、大学、大学院、その後もずっと統計がご専門なのですが、なんと高校と、大学の1年目はピアノがご専門だったということで(その後東京大学に入学されて統計を学ばれたそうです)、データサイエンスにデザイン力やセンスが必要というのは、すごく説得力があるお話だなあ、と感じました。

 

ピアノが上手な方って、バランス感覚や、俯瞰力がある方だと思います。単音ではなく、10本の指で音色を奏でるって、すごいことだと、ピアノがなかなか上達しなかった私は単純に感動しますし、たぶんそういう方達は音符も頭から「ド」「ミ」のように追うのではなく、楽譜をビジュアルで理解できるんじゃないでしょうか。音楽を聴いてピアノで再現できる力も、要素を自分の中で分解し、ロジカルに再配置しているのでしょうね。そう考えると、データ分析と音楽やデザインって、とても似ているように思えてきます。

 

それだけでなく、ピアノにはニュアンスや情緒を音で表現し、聴き手を感動させることもできますよね。データサイエンスも、扱うものは数字でありながら、人間の行動をデータにし、それをまた人間の活動に生かしていく、という意味では、数字だけでなく、人の心の動きにも意識を向ける必要がありそうです。

 

データは、データ化されれば数字ですが、そのデータを生み出しているのは人です。何かに感動したり、衝動に突き動かされたり、1人の人間が色々な感情を持ったりすることを理解し、寄り添った上で、スパッと切り口を見つけて分析、構造化できるのが、データサイエンティストだとしたら、やはりそこにはロジックだけではない、アート、デザインの力が求められるのではないかな、というのが私の個人的な感想です。

 

そして、8月1日より、データサイエンスとは何かについて学べる入門講座がスタートします。

f:id:yShimizu:20170730005119j:plain

 

gaccoというオンライン講座内にあり、登録をすれば、無料で誰でも受講可能です。また、アドミッションオフィス入試の1つに、こちらの講座を受講し、課題についてわかりやすくまとめる、というものがあるので、データサイエンス学部を目指す生徒さん達にもお勧めです。

 

↓こちらからアクセスできます

誰でも受講できる統計学の無料オンライン講座の募集を開始。本教材は平成30年度データサイエンス学部AO入試Ⅱ型にも利用。君の未来にチャレンジ! - 最新情報|滋賀大学

 

統計学の復習、アンケートや蓄積データの分析視点として、大人の方もトライしてみてはいかがでしょうか?

そしてアートとの関係、発見された方は、ぜひ私、清水に教えてくださいね!

夏休みの学校がミュージアムに大変身!―オルセースクールミュージアム in 香里ヌヴェール学院

みなさまこんにちは!本格的な夏になってまいりましたが、いかがお過ごしですか?関西は本格的な夏です!暑いです!そして、今週末より夏休みがスタートした学校が多いのではないでしょうか?夏休みの校舎って、誰もいなくてがらんとしてしまいますよね。校舎もちょっと寂しそうで、誰かに使ってもらいたいと思っているかも?本日はそんな夏休みの校舎が、期間限定でミュージアムに変身している学校を、見学させていただきました。

 

見学させていただいたのは、大阪府寝屋川市にある、香里ヌヴェール学院中学校・高等学校です。この春、大阪聖母女学院から共学化し、校名も変更をされましたが、校舎は1932年に建てられた伝統的な校舎を使い続けられています。

 

チェコの建築家で、フランク・ロイド・ライトに師事していた、アントニン・レーモンドの設計のこちらの校舎は、現在は登録有形文化財にも指定されています。

 

f:id:yShimizu:20170722175709j:plain

f:id:yShimizu:20170722175901j:plain

こちらの校舎が、本日7/22-7/30まで、ミュージアムに変身しています!

飾られるのは、フランス国立オルセー美術館所蔵の絵画30点モネやルノワールゴッホなどの作品の、リマスターアートです。

↓詳しくはこちらを。

オルセー美術館公式認定"Precision Re-master Art"

 

原画をデジタル撮影し、1億画素におよぶデータで復原した、オルセー美術館公認のレプリカだそうです。

 

f:id:yShimizu:20170722180705j:plain

↑こちらはモネの「かささぎ」という作品なのですが、

f:id:yShimizu:20170722180919j:plain

近寄っても筆跡や絵の具の割れがくっきり見えます。

そしてこのように、自由に写真を撮ったり、間近で見たり、ライトで照らしても良いのが、リマスターアートの良いところです。こちらの会場では、模写もOKです。

 

子どもが自由に鑑賞でき、かつ、作家のメッセージを伝えられる、というのが、リマスターアートの目的だそうです。

 

本日オープニングセレモニーが行われ、早速多くの人が鑑賞に訪れていました。

 

f:id:yShimizu:20170722193640j:plain

f:id:yShimizu:20170722182337j:plain

 

 

f:id:yShimizu:20170722182941j:plain

 

開催期間中は11:00と15:00に、香里ヌヴェールの生徒さん達による作品解説が行われます。

 

子ども達にもわかりやすいような問いかけや、絵を描くコーナーもありますので、お子様連れでもたのしく鑑賞できると思います。私立中高の校舎って、普段はなかなか行けないと思いますので、この機会に訪問されてみてはいかがでしょうか?

 

↓香里ヌヴェール学院のホームページはこちらです。

香里ヌヴェール学院

未来のテレプレゼンスロボットを考える―常翔啓光学園中学校の特別授業

みなさまこんにちは!先日、常翔啓光学園中学校の中学1年生の特別授業を見学させていただきました。

会場は、今年の春、梅田に完成したばかりの、大阪工業大学の梅田キャンパスです。

f:id:yShimizu:20170715223319j:plain

 

こちらには、大阪工業大学のロボティクス&デザイン工学部が入り、ロボット研究、開発を中心とした設備や研究室が並びます。

 

www.oit.ac.jp

 

授業が行われた空間も、ワンフロアほぼ間仕切り無しの広い空間で、アクティビティの大きさによって間仕切りなどで空間を区切れるようになっていました。他のフロアにも様々な工夫があり「新しいものを生み出すには、創造性のある空間が必要」という意図があるそうです。

 

f:id:yShimizu:20170715223557j:plain

 

今回の特別授業ももちろんロボットをテーマとしたもので、

課題は「未来のテレプレゼンスロボットを考える」です。

 

講師は大阪工業大学ロボティクス&デザイン工学部システムデザイン工学科 学科長の松井謙二先生。ゲスト講師として、テレプレゼンスロボットを実際につくられている合同会社 iPresenceの代表、クリス・クリストファーズさんが参加されました。

 

まずは本日の課題である「テレプレゼンスロボット」について、クリスさんから解説がありました。テレプレゼンスロボットとは「そこに居ずに、そこに居ること」を可能にするロボットだそうです(写真は同社"Double"の実演です)

f:id:yShimizu:20170715225409j:plain

 

Skypeのような動画通話機能に、遠隔操作で画面を移動したり、向きを変える機能を追加することで、遠隔地の人がまるでそこにいるかのようにふるまうことができるそうです。(詳しくは、iPresenceさんのホームページをご覧ください)

http://ipresence.jp/double/

 

また、クリスさんからは「新しいものを世に出す=未来をつくる」ということだというお話がありました。Future(未来)=Past(過去)+Time(時間)だが、

Wanted Future(欲しい未来)=Existing Technology(現在のテクノロジー)+Missing Technology(足りないテクノロジー)という言い方もでき、技術が望む未来をつくりだすことができる、という生徒さん達へのメッセージでした。

 

 

続いていよいよ、未来のテレプレゼンスロボットをグループで考えていきます。

f:id:yShimizu:20170715224207j:plain

アイディアを描きやすくするために、自身の1日の流れを思い出し、時系列でタイムラインに落とし込んでいきます。

毎日の生活も、あらためて思い出してみると、苦戦するようで、学校で使用している生活記録冊子を参照しているグループもありました。

 

f:id:yShimizu:20170715224459j:plain

 

次に、一日の生活の中で、特に学校で過ごす時間から、自分が大切にしている時間を選び出し、代理人のロボットにお願いしたいこと(自分がその場にいなくても、自分の代わりにぜひやってほしいこと)を書き出していきます。最初は「黒板を取ってほしい」「実験がしたい」などテレプレゼンスを前提に考えていた生徒さん達ですが、次第に、学校生活での困りごとを解決する方向での要望があふれ出してきます。例えば「先生が言っていることをまとめてほしい」「代わりに勉強してほしい」「代わりに部活の筋トレをしてほしい」「忘れ物を届けてほしい」など、代行度が高くなっていくのが、見ていて面白かったです。

 

f:id:yShimizu:20170715224628j:plain

 

それらの要望をもとに、具体的にロボットを使った実現の方法を考えていきます。

紙に絵を描く形で表現し、発表となりました。

 

f:id:yShimizu:20170715224726j:plain

 

電子マネーでチップを払って色々やってくれる「ぱしりロボ」」「海で魚を捕ることができる」「おなかが冷蔵庫」「忘れ物や無くし物を画像解析で教えてくれる」「寂しい時に遊んでくれる」といった、様々な機能を持つロボットの案ができあがりました。それぞれがテレプレゼンスか、というと、少し離れてしまったものもありましたが、だからこそ、これからのテレプレゼンスの可能性を広げてくれるようなアイディアが多く出たように思いました。

 

f:id:yShimizu:20170715224738j:plain

最後、松井先生、クリスさんからの講評も「みなさんの発想が豊かなので、この夢を持ち続けて実現してほしい」「それぞれのアイディアに夢があるが、それを誰が早く実現するかが大切」など、生徒さん達の発想力に触れたものでした。

 

今回特別授業を見学させていただき、イノベーションはどこから起こるのかな、ということをあらためて考えさせられました。色々な制約から自由な中1の生徒さん達。この部分を大切にしながら、企画を詰めていく力がついてくると、本当に素晴らしいでしょうね。そしてこの特別授業に関わった、講師の先生、中学の先生など、全ての大人がその成長を見守り、楽しみにされている様子を感じることができました。

 

見学をさせていただき、ありがとうございました!

ハッカソンってなあに? AngelHack Osaka 2017レポート

ハッカソン」というイベントを、ご存じですか?現在全国で、多くのハッカソンが行われているため、この言葉を目にされた方もいらっしゃるかもしれません。「アイディアソン」もあるけれど、具体的にどう違うの?どういう人が参加できるの?

 

と、私も最近までよくわかっていなかったので、百聞は一見にしかずということで、先日大阪で開催されたハッカソン「AngelHack Osaka 2017」を、見学させていただきましたので、レポートします。

 

ハッカソンという言葉は、”hack(ハック)marathon(マラソン)の2語が足しあわされた造語です。Hackという単語は色々な意味を持ちますが、この場合は、プログラミングや開発をする、という意味で使われています。多くは、数時間や数日間、連続して(マラソンですから)チームで何かを開発し、アイディアだけではなく、モックアップ(試作品)を作ってそのすばらしさを競う、というものです。つくるものはアプリだけとは限りませんが、Webサービスやアプリ、IoTなどが多いようです。テーマは、ある場合も、フリーな場合もあります。似たものに「アイディアソン」がありますが、これはコードを書いたり、モックアップをつくらないものが大半のようです。

 

あらかじめ作ってくるのではなく、限られた時間内でつくる、チームで取り組む、というのも特徴で、広く開かれたハッカソンだと、その場で初めましての方たちとチームを組み、作業を進めることもあります。

 

今回見学させていただいたAngelHack Osakaは、まさにそのような形でした。

AngelHack Osakaは、AngelHack Global Hackathonの1つで、大阪で開催されるのは初めてですが、Angel Hack 自体は今年で10回目を迎えるそうです。世界61地区(2016年度)で開催され、優勝チームは12週間の起業実現のためのカリキュラム「HACKceleratorプログラム」に参加、その後、審査を経てサンフランシスコにてピッチを行い(Global Demo Day)、さらに今年はその世界大会で選ばれた3チームが、最終的にロンドンで投資家を前にプレゼンする、という、夢のあるハッカソンです。

 

大阪の主催者の一人、丸山恵実さんは、昨年シンガポールでAngelHackのプレイベントに参加され、大阪でも開催したいと有志を募り、様々な協力者を得て、開催となったそうです。

 

AngelHack Osaka 2017は、617日、18日の2日間、大阪イノベーションハブにて行われました。大阪イノベーションハブはセミナー、イベントや、起業支援で、大阪のイノベーターを力強く後押ししてくれる機関です。

www.innovation-osaka.jp

 

詳細はこちらのページ↓とFacebookページに掲載されていますが、

AngelHack Global Hackathon Series: Osaka - AngelHack

 

写真掲載の許可をいただきましたので、その様子について少し紹介をさせていただきますね(以下写真は、AngelHack OsakaのFacebookからお借りしました)。

 

まず1日目。

午前中はアイディアソンとチームビルディングが行われます。

参加者がそれぞれのアイディアをシェアして、グループをつくります。

 

f:id:yShimizu:20170708225408j:plain

今回は15チームができたようです。

 

午後からは早速開発(コーディング)開始。ここから翌日13時まで、ノンストップで作業が行われます。1日目は21時にいったん閉会となりますが、そのまま会場に残って作業を進めることが可能です。今回は約3分の2の方が、残って作業を続けられたそうです。未成年の方は保護者の同意があれば可能だそうですよ。

f:id:yShimizu:20170708225539j:plain

 

続いて2日目。

朝から作業を続け、13時にコード提出、ランチ休憩となります。私は13時半すぎにうかがったのですが、徹夜でやり遂げたー!という雰囲気が会場に満ちていて、徹夜で模型や図面をつくっていた学生時代を思い出しました。

 

14時から、審査員の前でデモ形式のプレゼンを行います。時間は2分!審査員には株式会社フィラメントCEOの角勝さん、さくらインターネット株式会社 代表取締役社長の田中邦裕さんなど、錚々たるメンバーがずらりと並びます。

 

f:id:yShimizu:20170708225659j:plain

 

一つひとつは詳しく紹介できませんが、15チームのどのデモも、アイディアの面白さはもちろん、よくこの短時間でここまで仕上げられましたね!と感じるものばかりでした。

 

特別賞などの発表があった後、最後に最優秀賞が選ばれ、世界大会に向けて準備が始まるようです!

 

今回初めてハッカソンを見せていただき、とても面白いなあ、と思いました。コンペやコンテストだと、それぞれが別の場所で準備をし、発表、プレゼンの時に一同に会します。アイディアソンやオープンセッションだと、アイディア段階で一同に会し、プロトタイピングは別々の場で行われます。ハッカソンだと、アイディアからモックアップ完成まで、連続して同じ場所で行われます。つまり、同じ条件下、同じ時間のもと、同じ場所でライバル同士が作業を続けるという、なんとも緊張感のある、でも別の見方をすれば、みんなで一緒にがんばっている(まさにマラソン)とも言えるわけで。

 

そして会ったばかりの人たちと、チームでそれぞれの得意な部分や専門性を出し合って、何かを作り上げるって、難しいけど面白そうだなあ、と思いました。ハッカソンでは、もちろんコードを書ける人が必要なのですが、面白いアイディアを出せる人、それをプランに落とせる人もメンバーとして必要だそうです。AngelHack Osakaには、女性の参加者も多くいらっしゃいました。

 

こういった場から実際に起業をされる方もいらっしゃるそうです。素敵なアイディアをお持ちの方、ハッカソンにエントリーしてみてはいかがでしょうか!

シンギュラリティは怖くない! 「超AI時代の生存戦略」から見えたこと

みなさまこんにちは。清水葉子です。 

昨年9月末より当ブログを始めまして、約9か月、記事数が先日50を超えました!もともと、アートがもっと教育に必要だ、という直感的な思いからスタートしたものですが、9か月たって・・・まださまよっています(^_^:)(というか、どんどん新しい世界が広がって、面白がっている段階なので、まとめたくないんです)でも、アートというひとつの問いを立てたことで、このブログをきっかけにたくさんの方とお話しさせていただいたり、さまざまな情報を得られました。掲載許可をいただいた方々、情報をくださったみなさま、そしてつたないブログを読んでくださった方々、本当にありがとうございました。まだまだアートについての旅は続けていきますし、教育にアートを追加していけるよう、情報発信とは別の形でも一歩踏み出せたらと思っています。

 

さて。本日は、これからの世の中にはアートがどのように必要になってくるのか?という視点で、メディアアーティストの落合陽一さんの書籍「超AI時代の生存戦略ー2040年代 シンギュラリティに備える34のリスト」をご紹介します。

 

f:id:yShimizu:20170628172625j:plain

 

落合陽一さんは、「現代の魔術師」とも呼ばれる、工学系の研究者です。ものを非接触で動かしたり、空中に立体映像をつくりだしたりという、魔法のような研究とともに、これからのAI時代はどのような世界になるのか、などの発信も積極的にされています。テレビや、様々なメディアにも登場されているので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。

 

私も少し前から色々なシーンで拝見していて、未来について、とてもポジティブなとらえ方をしている方だな、と感じていました。特に、コンピュータ対人ではなくて、お互いできないことを補い合って、どうやって共存していくかを考えたほうが、楽しくないだろうか、という論調が好きでした。

 

本書でも、やはりそのことに触れらています。落合さんが恐れているのは、

テクノフォビア(テクノロジー恐怖症)とそれをあおるメディアだそうです。

 

テクノフォビアとは、これまでは技術革新、ネットワークを喜んできた人たちが、AIの登場に「次は自分の番なのではないか」つまり、自分達の仕事が奪われるのではないか、と恐れている状態で、テクノロジーを恐れるあまり、思考停止に陥ることが危険な結果を招くということです。そうではなく、機械やコンピュータの得意なこと、人間の得意なことを見極めながら共存していくことが大切だと落合さんは指摘します。

 

ではどうすれば良いのか、というところからが面白く感じたのですが、機械やコンピュータと人はどう違うのかと考えることは、つまり人間とは何なのかをもう一度捉えなおすということのようです。

 

例えば人間だけの特性としては、モチベーションや非合理性に基づいた趣味性、何かを信じること、暇つぶし、睡眠すること、抽象化して特徴量の差をとらえる能力などがあるそうです。コンピュータには限りなく透明になろうとする圧力があるそうで、非合理な部分や一見無駄と思われることは、苦手なのでしょう。それは複雑というのとは少し違って、飛躍とか想定外の組み合わせ、なのでしょうね。

 

そして今の時代が連続していくのであれば、結局サービスを受けるのは人なので、そういう非合理なことを受け入れたり、共感できるのは同じ人間、ということになりそうです。その上で、人だから人の側に立つとか、どちらが優位だ、というのではなく、「人間相手に発注するときは、モチベーションと結果と抽象化がすごく重要だけど、機械に発注するときは、具体的な指示が大事になる」「人間を動かす(プログラミングする)ための言語というのは人間のほうがうまく話せる」という落合さんのフラットな見方が面白いなあと思いました。

 

これからは、趣味=自分がこれが好き!という気持ち、どこから湧いてくるかわからないけれどもとにかく沸き起こってくるモチベーションを、それぞれが大切にしていくことが必要なのではないでしょうか。中高生くらいまでの子どもって、何かに熱狂したり、うかされることってありますよね。大人はそれに「落ち着きなさい」「まず勉強しなさい」と言ってしまいがちですが、実はそれを(それも)追求するところに、これからの生き方のヒントがあるかもしれませんね。それにはアートが重要な役割を果たすかも?というのは私の主観ですが、そんなことを考えながら読みました。

 

現実から目を背けるのではなく、現実をしっかりと見据えて、変化を楽しみながら時代に適応できるようになれば、きっと明るい未来がやってきますね。そう思える本でした。 

 

AI時代だけでなく、これからの世の中を生き抜くハックスも多く紹介されているので、中高生にもお勧めの本です。

 

www.amazon.co.jp

 

コアネットの夏のイベントCorenet New Education Fes2017(通称コアフェス)でも、落合さんにご登壇いただくことになりました。直接話を聞いてみたい方は、ぜひご参加ください。

Corenet New Education Fes 2017