デザイナー+エンジニアが目標を共有したら?(BaPA卒業制作展) その1
みなさまこんにちは。清水です。
先日、京都五条のMTRL京都で行われた、
BapA3期生京都チームの卒業制作展と、プレゼンテーションを見学させていただきました。
BaPAとは、PARTY(- PARTY)と、バスキュール(Bascule Inc.)が始められた、デザイナーとエンジニアのための学校です。
「もしデザイナーとエンジニアが一つの目標を共有し、アイデアから実装までの全てのプロセスを、対等な関係で作りきることができたら、全く新しい領域の体験を生み出せるはず。」というコンセプトのもと、33歳以下の学生、社会人を対象として始められました。期によって多少機会は違いますが、3~5か月間で課題テーマに基づいた作品を作り上げます。数名ずつのチームに分かれて作業を進めるのですが、BaPAのコンセプトのもと、1チームには必ずエンジニアとデザイナーがメンバーとして入ります。
↓BaPAのホームページはこちら
今までは東京のみでの開催でしたが、第3期は京都でも開講され、今回見せていただいたのは、京都の4チームの作品でした。
今回のテーマは「日本を歩く」です。
私は第1期の発表も渋谷で見せていただいたのですが、また違った面白さがありました。
まず、「KIMONO-U」
アルファベットで自分の名前を入れると、オリジナル着物をデザインしてくれるシステムです。
私もトライしてみました。
名前を打ち込むと
自動的に漢字があてはめられます。
名前が紋のような模様に置きかえられ、苗字に色が割り当てられます。
苗字の文字数により、模様が変わります。2文字だと市松、3文字だとストライプだそうです。
できた!「夜」と「湖」の模様が入っているの、わかりますか?50音+濁音分、紋のデザインがあり、どれもとてもかわいいのです。衿の部分に文字も入っていますね。
京都に旅行する前にあらかじめ注文しておき、これを着て京都の町を歩いてもらうことを想定しているそうです。
↓つづきます。
学校の壁を、自分たちで塗る-株式会社NENGOのワークショップ その2
みなさまこんにちは。
先日ブログに書きました、株式会社NENGOさんが川崎市の宮崎小学校で行われたペイントのワークショップ、その続きをご紹介します。
このワークショップでは、5、6年生が小学校の配膳ホール(給食を運ぶための場所)を塗ります。4グループに分かれて4階分のホールを、それぞれ違う色で塗っていくというものです。
まず、5年生、6年生を対象に、NENGOの方による授業が行われ、その後、自分たちで色を決めていきます。
授業の内容についてはこちらをごらんください。
学校の壁を、自分たちで塗る-株式会社NENGOのワークショップ その1 - Arts in Schools
こんなにたくさんの色の中から、何が選ばれたかというと、
以下の4色だったそうです!それぞれのキーワードやコンセプトとともにごらんください。
1階:HAPPYピンク キーワード=一歩
・おもに1年生が使う・学校生活の第一歩
2階:宮小スマイル キーワード=笑顔
・職員室がある ・学内外の人が行きかう
3階:ぐんぐんグリーン キーワード=成長
・おもに3年生が使う ・心も体も急に大きくなる
4階:フューチャースカイ キーワード=未来
・おもに6年生が使う ・未来への大きな夢がある
色の名前もいいですね。そして、階が上がるごとに生徒の成長が見えるようで、良い!
生徒達は2日間に分かれて塗っていきます。
これは1階のHAPPYピンクですね。はけの使い方を教えてもらっています。
2階の「宮小スマイル」文字を書いても上にペンキを重ねれば大丈夫!
3階の「ぐんぐんグリーン」ですね。シンナーのような臭いニオイがないので、子どもたちも安心して塗ることができます。
そして4階の「フューチャースカイ」。いい色~。
子どもたちのパワーはすごいですね。高いところは大人が手を貸しながらも、1時間ほどで大半を塗り終えてしまいました。
実際には、下地+1度塗り+2度塗りの3回で完成です。カラーに加え、ポーターズペイントは質感もあるので、より、雰囲気のある空間に仕上がっていました。
戦後、校舎の壁の色は白やクリーム色が多かったですが、近年カラーを使われることも増えてきましたね。今フジテレビで放送中のドラマ「嫌われる勇気」でも、椎名桔平さん演じる大文字教授の研究室の壁は深いグリーンで、それが教授のキャラクターに合っていたりします。
みなさんの過ごす空間には、どんな色がぴったりくると思いますか?新年度に向けて、新しいカラーに変えるのも、良いかもしれませんね。
株式会社NENGOさん、ポーターズペイントのホームページは以下です。
パーソナルファブリケーションは、ものづくりをどう変えるか その3
みなさまこんにちは。今年の初めから、パーソナル・ファブリケーションの可能性を探求する(心の)旅に出ている、清水です。
「Fab Life」に続き、読んでみたのがこちら。
「ワイアード」US版の元編集長で、自らも様々な形でものづくり、発明を行っている、クリス・アンダーソン氏による「MAKERS(メイカーズ)」です。
アンダーソン氏のおじいさまが発明家だったという話から本書は始まるのですが、おじいさまが発明家だった90年代半ばと現在では、発明家を取り巻く環境が大きく変わったということが、わかりやすく解説されています。
その大きな要因としては
・工作機械がデスクトップ化(家庭や、工場ではない作業場で製作可能なサイズと価格)したことで、デザイン、試作がしやすくなった。
・デザインや設計図をオンラインコミュニティで共有し、たくさんの人たちと協力しながらプロジェクトを進められる。
・デザインファイルを標準化し、それをオープンにすることで、それぞれが一から設計をする手間が省け、スピードが上がること。
が挙げられるようです(本文から少し要約させていただいています)
以前は個人が新しいアイディアを思いついたら、デザインし、工場に試作を依頼し、出来上がったら特許を取り、それを製品化してくれる企業を探して、ある程度売れるという見込みのもと、ある一定のロットをつくる(そのための材料費や機械、人件費を投入する)という、ハードルもリスクも高いプロセスを踏まなければなりませんでした。だから、リスクが取れて、環境もあり、開発に時間をかけられる大企業のほうが圧倒的に有利だったのですが、上記のような環境の変化により、個人(または個人のつながりによるコミュニティ)が大企業と肩を並べることが可能になったのです。
とここまで読み進めてきて、パーソナルファブリケーションが、どうしてイノベーションにつながるのか、ちょっとわかったような気がしています!
特に、オープンソースに続く、「オープンハードウェア(デザインや設計図をオープンにすること)」は、これからの時代を変える大きな動きなのではないでしょうか。変化の激しい複雑な時代、個人や企業でノウハウを抱え込むのではなく、お互いに提供しあうことで、進化を加速させる。
ライセンスなどに課題は残っているようですが、そこについてもすでに色々な解決案が出ていて、興味深いです。
これからの工場のあり方、新しい形のものづくりでどのように資金を調達し、運用していくべきかなど、こちらも多くの示唆に富んだアイディアが紹介されていますので、興味を持たれた方は、ぜひ読んでみてください。
パーソナルファブリケーションは、ものづくりをどう変えるか その2
前回のブログに続きパーソナルファブリケーションについてです。前回紹介したようなFab LabやFab Cafeについて、モノづくりの楽しさや、プロトタイプをつくることの大切さは理解していたつもりだったのですが、Fabとイノベーションがセットで語られるシーンでは、まだわかっていないもやもやとした感覚を持っていました。
そこで読んでみたのが、
「Fab Life-デジタルファブリケーションから生まれる「つくりかたの未来」」という本です。
日本で初めて鎌倉にファブラボを立ち上げた田中浩也さんが、世界のファブラボやMITの「(ほぼ)なんでもつくる方法」を紹介しながら、パーソナルファブリケーション、デジタルファブリケーションについて、わかりやすく解説してくださっています。読みながら多くの発見があったのですが、なかでもなるほど、と思ったことを挙げていきますね。
■ものづくりにおけるパーソナルファブリケーションの位置づけ
まず、ひとくちにモノづくりといっても、色々なあり方があって、職人による1点ものの「民芸や工芸」、工場で型をつくって量産する「工業、製造業」などもものづくりに含まれるのですが、パーソナルファブリケーション、デジタルファブリケーションは、ちょうどその中間に位置するそうです。まず、1点からつくれるのですが、物体化するためのデジタルデータが存在するので、1点もののように、2度と同じものが作れないわけではない。でも工場で型を作って生産するように大量につくらなくてもよく、欲しい量だけつくれるという、作り方の位置づけに、なるほど、と思いました。
■デザイン思考との違い
もちろん、パーソナルファブリケーションは、プロトタイプの製作に適しています。考えたことを形にしてみて、修正するというサイクルが回しやすい。だからデザイン思考のプロセスに取り入れやすいと思います。ただ、パーソナルファブリケーションの根底にある考え方は以下の2点において大きく違うのかな、と感じました。
・まず1つめは機械を使って創るのはプロトタイプだけでなく、創った物そのものが実用物である場合も多いということ。形だけでなく素材選択も重要な位置づけであるということ。
・2つめに「何をつくるか」がフィールドワークやマーケティングからだけではなく、ツールや素材から「どうつくるか」を考え始めることも多いということ。発想する力とともに形にする力がとても重視されるということ。
■組みあわせ、使いこなすことで見えてくる新しいこと
1種類ではなく、いくつかの種類の機械、素材を使いこなしてものづくりをしたり、既製品に手を加えたり、様々な技術を持つ人が協力することによってこそ、新しい可能性が広がるということが、実例とともに理解できました。以前は無かった新しい部品、機械を既存の技術と組み合わせてみる。プログラミングや通信もその中に含めると、モノの再定義も可能になる。
■使い手のマインド、スタイルの可能性
一企業や個人で抱え込むのではなく、情報、ソースをオープンにし、それをどんどん進化させていくことの可能性と面白さ。そういう世界でのライセンスの再定義、機械を作る人と使う人という関係性を超え、ものづくりの機械自体が変化していくという可能性。
なんというか、モノの可能性を感じてもっと考えたくなりました。
興味のある方はぜひ、読んでみてください。
パーソナルファブリケーションは、ものづくりをどう変えるか その1
Fab Lab(ファブラボ)とか、Fab Cafe(ファブカフェ)という言葉を聞かれたことがありますか?
私はFab Labはまだ行ったことが無いのですが、渋谷と京都のFab Cafeに行ったことがあります。お茶をしに行っただけなので、私自身はFabの本質にはせまれていませんが。。。
こちらが、京都の五条にあるFab Cafe、 MTRL KYOTO(マテリアル京都)です。
こちらはコワーキングスペースも併設しています。デスクワークができるスペースと、ものづくりができるスペースがあります。
そしてこのエリアが、ファブカフェならではのエリア。
レーザーカッターや3Dプリンターなどのマシンを借り、この場で作業ができます。
(写真が不鮮明ですみません。。。)マシンエリアには色々な工具が置かれています。
「Fab」という言葉は「Fabrication(製作する)」と「Fabulous(愉快な、素晴らしい)」から作られた言葉だそうです。
高性能な機械がコンパクトになり、操作もしやすくなると、ちょっとした製作を工場などに頼まなくても自分ですることができるようになります。これを、パーソナルファブリケーションと呼ぶそうです。
それぞれのマシンがもっと安価になれば、ミシンのように各家庭に1台、なんてことになるのかもしれませんが、こうやって共有で使うことにより得られる効果もあるようです。
Fab LabやFab Cafeのような場、パーソナルファブリケーションは、これからのものづくりをどう変えるのか!ちょっと前置きが長くなってしまったので、次のブログで、書籍紹介のカタチで書きたいと思います。
建物細部へのこだわりと、それが与える空間の質-佐川美術館
みなさま 本年もよろしくお願い申し上げます。
1998年、佐川急便株式会社が創業40周年記念事業の一環として建設した美術館です。
その美しさから多くの賞を受賞しています。2007年には樂吉左衛門館が増設され、空間に深みを与えています。
コンクリートの躯体と金属の屋根なのに、なんとも言えず落ち着く雰囲気と和のたたずまい。それは、細部へのこだわりにありました。冬の夕方なので写真が暗めですみません。。。
例えば、この空間、床はもちろん木なのですが、壁は?
こんな感じ。木のように見えるのですが、実はコンクリートなんです。通常は合板といって、板目が映らないような型枠を使ってコンクリートを打設するのですが、あえてそこに杉板を使い、木目を見せるようにしています。本館もそうなのですが、樂吉左衛門館ではさらにきれいに出ているので、ぜひご覧ください。
また、その詳細については、以下に論文がありますので、興味がある方はぜひ。
「杉木目を有するブラックコンクリート化粧打放し仕上げの施工 佐川美術館樂吉左衛門館建設工事」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/coj1975/45/11/45_36/_article/-char/ja/
空間から受ける「何か落ち着く」「何かホッとする」「なぜか懐かしい」という感覚は、実はこういった細部へのこだわりから生み出されています。素材、仕上げだけでなく、色合い、光、空調など。丁寧に仕げれば良いというだけでなく、時に素材むき出しの荒い仕上げが人の心を打つこともありますよね。
子どもたちが1日の大半を過ごす学校の建物も、色々な面で子どもに影響を与えます。健康で、快適に過ごせることが第一ですが、加えて、どんな気持ちになるのか、どんな刺激を与えられるかも大切なのではないでしょうか。ICT化が進む今だからこそ、今年はリアルな空間の質についてもよく考えていきたい、と思っています。
社会と美術の融合授業-学校をARTで満たそう(同志社中学校)
同志社中学校の社会科の授業には、話し合いや、表現の時間が多く設けられています。その中でも手を動かす要素が多く入っているのが、中学3年生の3学期に行う、社会と美術が融合した授業です。
「学校をARTで満たそう~We are ARTISTS」と名付けられたこちらの授業では、
文字でもなく、言葉でもなく、社会にアピールできるアート作品をつくります。
それまでの授業で、文字や言葉を使ってディスカッション、プレゼンテーションを重ねてきた生徒達が、今度はアートという表現方法に挑むのです。
「私たちは、絵の世界のように、無意識に働きかけられたり、色や形や音や街中にあふれるいろいろなものに影響されて自分の感覚が作られていきます。感性に訴える方が社会に働きかけるのに適した表現方法であると考え、美術の先生に持ちかけたら、快く協力してくれて、社会科+美術科の教科横断型授業として始まりました」と担当の社会科、井口和之先生。
社会科の時間では、コンセプトなどについて話し合います。そして作品づくりを美術科の時間で行います。できたアート作品は校内に展示するとともに、写真を撮ってネット上で公開します。短い英文で作品紹介を行い、その部分は英語科の先生にもサポートしてもらうそうです。
まずこちらの作品は、「ME(私)」という言葉は、視点を変えれば「WE(私たち)」になる、という表現です。
まず、こちらの作品は「Mother FAther」と上部に書かれていて、父親、母親に見守られている私、でも、角度を変えてみると、そこから前に飛び出そうとしている私、を表現しています。
そして、こちらの作品は、「HELP」人々の写真コラージュが、別の角度から見ると「SHUT」と読めるようになっています。
「私の目標は、直接社会と交流をして、社会にプラスの影響を与えていける発信力を持った中学生が増えることです。中学生も社会に貢献できる力は持っていて、直接社会とつながることができるツール、IT機器を使って発信もできるはずなのですが、現在の日本社会全体の中では、あまり期待されていません。中高を卒業してからではなく、私の授業をきっかけにして、自分も社会に働きかけられるんだという感覚を持ち、やってみてほしいですね。」と井口先生。
こちらの取り組みは、2015年KONICA MINOLTAのソーシャルデザインアワード特別賞を受賞しました。
伝えたいメッセージを表現する手法を多く持っていること、大人になってからではなく、今の自分でも社会に対してできることがあると考えること、どちらも、とても大切なことです。アートを使ってそれを伝える授業、素晴らしいと感じました。